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保育園義務教育化22「専業主婦」は極めてリスキー。その理由は?【古市憲寿/保育園義務教育化・22】

2017.02.20

社会学者・古市憲寿さんの著書『保育園義務教育化』の内容をご紹介していく連載。

前回は第3章のまとめ、母性本能なんて言葉は最近までなかった、専業主婦も戦後に普及した生き方だった、といった内容をご紹介しました。

今回から、第6章に入ります。これからの時代に求められる女性の生き方を探ります。(第4、第5章については、書籍をご参照ください)


(書籍『保育園義務教育化』「6章」より)

第6章 女性が待望される時代

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「年収は本当に妥協しても400万円以上は欲しい」「結婚するなら正社員」「結婚したら専業主婦になりたい」。結婚相手に求めるものを聞くと、そんな答えをする若い未婚女性がいる。それは一時代前なら決して高望みなんかではなかっただろう。

しかし今や20代男性の平均年収は348万円、25%が非正規という時代だ。一部上場企業に正社員として勤める男性でさえも、給料が昔のように上がっていかないばかりか、急なリストラに遭う可能性もある。さらに、離婚率も3割を越える。

ということは、「結婚して専業主婦」というのは、女性にとって極めてリスキーな生き方ということになる。昭和だったら「安定」の象徴だったものが、現代では逆に「危険」な生き方になっているのだ。

実は今、産業構造の変化によって、「男性」よりも「女性」に得意な職業が増加している。

というか、昔ながらの無口の男性にとっては、本当に生きづらい時代になっているのだ。

これからはますます「女性の時代」になっていくだろう。

だが、それは女性が一人勝ちするわけではない。「男性が16時間働き、女性が専業主婦社会」よりも、「男性も女性も8時間ずつ働き、共に育児や家事をする社会」のほうが、はるかに人間的だと思わないだろうか。

男女が共に働き、家庭を持つ社会は、男女が共に生きやすい社会なのだ。この章では、「男のつらさ」と「女性」が社会をどう変えていくかを見ていこう。

「男」であることの有利さの減少

男性不遇の時代だ。

たとえば中高年男性。仕事だけに打ち込んでいると家族の気持ちは離れていく。だけど目の前にやるべき業務は山積み。しかも気を抜くとすぐに部下からお荷物扱い。

世間では「能力のない中高年男性が会社に守られすぎているのが日本の閉塞感の原因だ」なんて曜かれている。そこで「誰が日本の経済成長を牽引してきたんだ」なんて開き直ることもできずに、ついつい若者にこびを売ってしまう。「おじさんも大変なんだよ」とか言って。

若年男性も大変だ。正規雇用に就ける割合はどんどん減っている。うまく大企業に入れたとしても、いつ倒産するかわからない。自分一人さえ養う余裕もないにもかかわらず、女の子の専業主婦志向は復活しつつある。

社会学者の山田昌弘さんの調査によれば7割近くの女性が結婚相手に400万以上の年収を求めるが、400万以上の年収の独身男性はわずか25%。「俺についてこいよ」なんて今時の男の子は言いたくても言えない。

男性の大変さを最も象徴するのは、自殺率の高さだ。男性の自殺率は女性の2倍以上。2014年には、約1万7000人の男性が自ら命を絶った。特に「男は一家の大黒柱」という規範の残っている中年男性だと、経済問題での自殺が多い。

身の回りでも「男はもうダメだね」「優秀な社員は女性ばかりだ」といった話をよく聞かないだろうか。

その指摘はおそらく正しい。男はもうダメだ。何も女性が生物学的に男性よりも優越しているという話ではない。もちろん男が絶滅して女性だけの時代が来るという話でもない。

今、起こっているのは社会の「女性化」だ。日本全体が「女性化」しているがゆえに、「女性が優秀」であるように見えてしまうのである。

[次回につづく]
連載第1回目「女性が「お母さん」になった途端に、できなくなること」

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「保育園義務教育化」連載一覧

古市憲寿(ふるいち・のりとし)

1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。日本学術振興会「育志賞」受賞。著書『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。共著に『国家がよみがえるとき』(マガジンハウス)などがある。

この連載について
こちらの連載は、古市憲寿さんのご厚意により、書籍『保育園義務教育化』(小学館)の本文より、約8割ほどの内容を、順次Hanakoママウェブに公開していく、という企画です。毎週月曜日に更新します。古市さんの「この問題をできるだけ多くの人に、自分の問題として意識してもらいたい」という強い思いによって実現したものです。共感したかたはぜひ、家族や友人とシェアしてくださいね。
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