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Column あの人に聞きました

保育園義務教育化23「男らしい」は時代遅れ!? 男性はさらに女性化する【古市憲寿/保育園義務教育化・23】

2017.02.27

社会学者・古市憲寿さんの著書『保育園義務教育化』の内容をご紹介していく連載。

前回から第6章に入りました。かつて女性の憧れだった「専業主婦」がこれからの時代、どんどんリスキーになっていくという話。

今回も、時代はどんどん女性に有利になってきている、「男らしく」いたら生き残れない、という話です。


(書籍『保育園義務教育化』「6章」より)

「男性」の職業が減少し、「女性」の職業が増加した2000年代

日本社会が「女性化」していると言われてもピンと来ないかも知れない。順番に説明していこう(という風に論理的に文章を運ぼうとする感じが「男性的」で前時代的かも知れないんだけど)。

まず産業構造が「女性化」している。この十数年で建設業や製造業など「男性」が得意とされる職業が減少した。一方で介護職などのケア労働といった「女性」の方が就職に有利な職業が増加した。

この傾向は今後も続く。かつてのように無闇にダムや新幹線を建造するような公共事業が難しくなる中で建設業は規模の縮小を余儀なくされる。

また製造業は途上国との価格競争に敗れていく。一方で、前代未聞の高齢化が進む中で医療、福祉分野の雇用はどんどん創出されていくだろう。

さらに、販売業やサービス業など第三次産業の規模は今後も拡大していくだろう。これは、女性にとっては福音だ。

一般的に、コミュニケーション能力や交渉能力は女性のほうが高いからである。

ますます「無口で力強い男性」に適した仕事が減っていく一方で、「社交的な女性」向きの仕事が増えていくのがこれからの日本社会の姿である。

自己否定みたいなことを書いておけば、男性が幅を利かせているのは先がない業界ばっかりだ。

たとえば評論家や批評家と呼ばれる人がたくさんいる「論壇」という世界がある。雑誌でいえば『世界」『中央公論』『文藝春秋』『新潮45』などが当てはまるのだが、いまいちピンと来ない人も多いだろう。書店の地味なところに置いてある紙質の悪い雑誌だ。

書き手も読み手も高齢者の論壇界に、女性はほぼいない。特に若い女性の書き手なんてほぼ皆無に等しい。

研究者の世界も同じで、優秀な女性はみんな大学院に来ても修士課程を出たらとっとと会社に入ってしまう。女性比率を見れば、その業界の持続可能性がわかってしまう。

また社会のムードもどんどん「女性的」になっている。ここでいう「女性的」というのは、「もう経済成長だけに邁進なんてしなくていいから、毎日を大切に生きていこう」という発想のことだ。

特に、2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災がその傾向に拍車をかけた。脱原発運動やエコロジー運動も盛り上がっているが、それらの運動の主要な担い手はずっとフェミニストと呼ばれる人たちだった。

フェミニズムというのは、ただの女性優位の社会を目指す活動ではない。

『おひとり様の老後』で有名な社会学者の上野千鶴子さんが「今日のように明日も生きるための思想」と定義するように、フェミニズムは持続可能な社会を構想する思想だ。

もはやそれを「フェミニズム」と呼ぶ必要はないが、呼ぶ必要がないくらい「フェミニズム」的発想が社会に浸透したということでもある。

東日本大震災以降は、男性的な経済社会のど真ん中にいるはずの『週刊東洋経済』までが、経済成長に違和感を唱える別冊を発刊している。産業構造のみならず、価値観としても「女性」の時代が訪れつつあるようだ。

「男らしく」いたら適応できない社会

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男性的な価値観はもう時代遅れらしい。男たちは一体どうしたらいいのだろうか。

実はどうするも何も、若者たちは徐々に「女性化」する社会に適応しつつある。たとえば僕が若者のことを語る時にいつも例に出す生活満足度調査の数字を見ても、その傾向を確かめることができる。

数十年の変化を追ってみると、生活満足度は一貫して女性のほうが高い。たとえば1985年だと20代男性の満足度が59.6%なのに対して、女性では79.7%もあった。

理由の一つは、女性のほうが将来に対する期待がそもそも低かったことだろう。雇用機会均等法施行前夜、仕事によるキャリアアップが現実的ではなかった女性たちは、「まあこんなものだろう」と早くから自分の人生に折り合いを付けていた。

それが最近では、男性の生活満足度も上昇してきている。2014年の調査では20代男性が78.0%で、女性は80.1%。ほぼ男女差がなくなりつつある。

もはや男性であっても、「将来のために今は辛くても頑張る」という発想から距離を置き、 身の丈にあった現実を受け入れつつあることの証拠だと思う。

若い男の子たちが女性化するのは、当然といえば当然だ。

正社員になれるかわからない。給与が上がるかもわからない。そんな彼らが「男らしく」なるなんて無理に決まっているのだ。

一般職の募集に男性が集まるという事例も増えている。幹部にはなれないが、転勤もなく長時間労働も強いられない一般職が、男性にとっても魅力的なものになっているのだ。
「女子会」ならぬ「男子会」も人気だ。

僕の友達も、平日は普通に会社員をしながら、週末は友人たちとカフェを開いたりしている。『Hanako FOR MEN』や『Men’s Lee』といった男性向けライフスタイル誌の創刊に象徴されるように、仕事一筋の生き方が本格的に見直されている。

飲食のスタイルも変わった。かつては男の飲み物と言えば、コーラや缶コーヒーなど効率よくカフェインを摂取できるものが一般的だったが、今や「水筒男子」の時代。効率性など、昭和を支配していた男性的な価値観がことごとく時代遅れなものになりつつある。

[次回につづく]

連載第1回目「女性が「お母さん」になった途端に、できなくなること」

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「保育園義務教育化」連載一覧

古市憲寿(ふるいち・のりとし)

1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。日本学術振興会「育志賞」受賞。著書『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。共著に『国家がよみがえるとき』(マガジンハウス)などがある。

この連載について
こちらの連載は、古市憲寿さんのご厚意により、書籍『保育園義務教育化』(小学館)の本文より、約8割ほどの内容を、順次Hanakoママウェブに公開していく、という企画です。毎週月曜日に更新します。古市さんの「この問題をできるだけ多くの人に、自分の問題として意識してもらいたい」という強い思いによって実現したものです。共感したかたはぜひ、家族や友人とシェアしてくださいね。
古市さんのインタビューはこちらから