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Column あの人に聞きました

保育園義務教育化25保活なんて、もうなくなる。革新的なアイディア 【古市憲寿/保育園義務教育化・25】

2017.03.13

社会学者・古市憲寿さんの著書『保育園義務教育化』の内容をご紹介していく連載。

長きにわたった連載も、今回から最終章に入ります。本書で紹介してきた「保育園義務教育化」について、ここであらためてメリットを解説します。


(書籍『保育園義務教育化』「7章」より)

0歳からの義務教育

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この本では、日本の子育てをめぐる状況がいかに異常かを見てきた。

日本は今、少子化で子どもを増やすことと、労働力を確保することが急務なのだ。それなのに出産や育児費用は非常に高額。それどころか待機児童問題さえ一向に解決しない。働く環境はお世辞にも働く人に優しいとは言えない。

社会のあらゆる制度や環境が、全力で少子化を促進しているかのようだ。日本は実質的に「一人っ子政策」をしていたのだ。

そんな状況を解決するアイディアが「保育園義務教育化」だった。

「保育園義務教育化」はただ少子化解消に貢献するというよりも、社会全体の「レべル」を上げることにつながる。良質な乳幼児教育を受けた子どもは、大人になってから収入が高く、犯罪率が低くなることがわかっている。

同時に「保育園義務教育化」は、育児の孤立化を防ぐ。今の日本では、子育ての責任がとにかく「お母さん」にばかり背負わされている。

子どもが電車や飛行機の中で泣くことも、学校で勉強ができないことも、友だちと起こしたトラブルも、何かあると「お母さん」のせいにされる。

だけど、本当は育児はもっと社会全体で担ってもいいもののはずだ。しかも子育て支援に予算を割くことは経済成長にもつながる。いいことずくめなのだ。

最終章では、保育園を義務教育にすると、どんなメリット・デメリットがあるのか、そんなことが本当に実現可能なのかを見ていこう。

保育園義務教育化のメリット

「保育園義務教育化」というのは、文字通り0歳から小学校に入るまでの保育園・幼稚園を無料にした上で、義務教育にしてしまえばいいというアイディアだ。

もしかしたら「義務教育」という言葉に抵抗感を持つ人がいるかも知れない。だけどこの本は「義務教育」をもっと柔軟な概念で捉えている。

たとえば毎日朝から晩まで子どもを預ける人がいてもいいし、週に一度1時間だけ預ける専業主婦のお母さんがいてもいい。

孤独な育児はストレスがたまる。そして相談相手のいない育児はつらい。週に一度だけでも保育園に行く習慣があれば、保育士さんでもお母さん同士でも、育児のことを話せる相手が見つかる(もちろん、忙しい人や他に友人がいる人は、無理にそこでコミュニティを作る必要はない)。

さらに、現在は高い保育費に悩んでいる人が多い。厚生労働省の調査でも、6割以上の子育て世帯が「幼稚園や保育園にかかる経費」を負担に感じていることがわかっている。

一ヶ月の平均保育料は月2万5000円程度だが、中には月5万円以上をかけている人もいる。これにベビーシッターや病児保育のための費用が加われば、「働いて稼いだお金がすべて育児に消えていく」という人もいるだろう。

「これなら働かずに育児をしよう」と考える人が多くてもおかしくない。日本は労働力不足といいながら、女性が専業主婦になったほうがいいと思えるような制度をわざわざ構築してきたのだ。

[次回につづく]

連載第1回目「女性が「お母さん」になった途端に、できなくなること」

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「保育園義務教育化」連載一覧

古市憲寿(ふるいち・のりとし)

1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。日本学術振興会「育志賞」受賞。著書『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。共著に『国家がよみがえるとき』(マガジンハウス)などがある。

この連載について
こちらの連載は、古市憲寿さんのご厚意により、書籍『保育園義務教育化』(小学館)の本文より、約8割ほどの内容を、順次Hanakoママウェブに公開していく、という企画です。毎週月曜日に更新します。古市さんの「この問題をできるだけ多くの人に、自分の問題として意識してもらいたい」という強い思いによって実現したものです。共感したかたはぜひ、家族や友人とシェアしてくださいね。
古市さんのインタビューはこちらから