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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・6親子の映画はレンタルで、にこだわる理由【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.06.25

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの人気連載!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


映画漬けで暮らそう! ~母と息子の TSUTAYA 詣での巻

DVD

ある雑誌に映画評を書かせてもらって、10年以上になるだろうか?

月に1本ペースだけれど、どの映画を書くかも自分で決めるので、月に10本~15本は、試写室に出かけたり、DVDで観たり、私の生活の中に当たり前のように映画を観ることが組み込まれている。

そのせいか、息子もDVDを観るのが大好きだ。

4歳を過ぎたころから、1時間半なり2時間なりの間、ちゃんと投げ出さずに観ていられるようになったというのは、実に大きな進歩、成長。

そのおかげで週に1度、近所の「TSUTAYA」に行って、7泊8日を2本借りる、というのがここ数ヶ月で習慣化してきたことだ。

最初は買い与えたりもしていたが、それだと、早いうちに飽きて、あとは積まれていくだけ。

レンタルだと、どうも、そこに行って、選んで、お店の人に渡して、また返して、という行為も含めてエンターテインメントだと思っているふしがある。誰に似たのか、出かけるのが好き、人が好き、コミュニケーションが好き。ま、悪い事じゃないよね。

そして、借りてきた2本を、1週間で何度でも観る。たとえば今なら、『インサイドヘッド』と『カーズ』を3日前に借りてきたのだが、『インサイドヘッド』は、もう6回、『カーズ』も4回は観てる。

朝、起き抜けに1本、保育園から帰ってきて1本、寝る前にも1本、てな調子で…と書くとDVD漬けのように聞こえてしまうか? でも、車や電車のおもちゃで遊びながらの時もあるし、ポーズボタンを押して、別のことをして、また再開することもしょっちゅうだ。

1度借りたものを、2~3週間後に、また借りるというのも、よくやる。お気に入りの『ズートピア』と『モンスターズインク』は、もう何度、家と TSUTAYA を往復したことか。

とっくに買えるだけの金額を支払ってるに違いない、が上記のような理由でレンタル派。星の数ほどある映画を、生きてるうちになるべくたくさん観たい母などは、たいてい1回観て、原稿を書くものに関しては2回観たりするけど、観返すことはほとんどない。

「また、同じもの借りるんですか?」には呆れるほどで、DVDキッズコーナーで「ちょっとは冒険したら~」「新しいものに挑戦してみよう~」などとねちねち言い含めている母親がいたら、それは私です。

一方的に画面から流れているものよりも、読み聞かせや、CDなどを聞かせることで、想像の余白を残しておいた方が幼児の教育としてはよろしいですわよ、という専門家もいらっしゃるかもしれないが、映画は、総合芸術だから、映像も音楽も物語も、気負うことなくシャワーのようにそこに降りそそいでいれば、いつか何かの折に、ひょこっと顔を出し、彼の生きる知恵や楽しみにつながってくれればいいなぁ、というのが、母の思いであり、目論見だ。

息子よ、母の妄想はとまらない!

先日、家族で車で出かけた折に、ラジオから、夏と言えばこの曲!なマンゴ・ジェリーの「イン ザ サマータイム」が流れてきて、私はご陽気に鼻歌でご唱和していた。

すると息子が、「あれ? この曲、ボク知ってる」。近頃、知らないくせになんでも「知ってる」と言いたがりなお年頃だったので、軽くスルー。

しばらくたって、
「えーと、えーと、ミニオンズだよ!」
「ほんとぉ? この曲、出てきたっけ?」
「そうだよ。ミニオンが紫のお化けになっちゃうやつ(『怪盗グルーのミニオン危機一髪』ですね)で、ミニオンがハワイみたいなとこ行くシーンがあったでしょ?(覚えてない)。あそこで、ちょっとだけ流れるんだよ」

後日、再度借りた際に確認してみると、確かに!あるある。

すわっ、ひょっとして音楽の才能が……なんてレベルの話でもないし、そうなって欲しいということでもなくて。

若いころに聴いた音楽がラジオから流れてきて、そのころの景色や、思い出や、ニオイまでも蘇り、ジーンとしちゃうってことは、誰しも1度や2度は経験済みだろう。

息子が大人になって「イン ザ サマータイム」をふと耳にした時に、記憶がくすぐられ、何を思い返すのか、どんな感情が湧いてくるのか? と想像するだにムフムフしてしまう。

その引き出しがたくさんあるといいな。

つい最近『20センチュリー・ウーマン』という映画を観た。

マイク・ミルズ監督が自身の母を描いた「母と息子のラブストーリー」などと宣伝文句に書かれていると、気恥ずかしくてしょうがないが、子を持ってからというもの「母子モノ」には滅法弱い。泣かせるあざとさがなくても、私の涙腺は一体どうなっちゃったんだ? ってくらい泣けてくる。

今回もラスト近く、母が夢であった飛行機乗りになり、大空を翔るシーンで、『カサブランカ』でお馴染みの「アズ タイム ゴーズ バイ」が流れた途端にやられた。

不器用な母の人生の万感が、不意を衝いて、私に覆いかぶさったかのように、奥深いところで理解した。ような気がした。1979年のお話。

40歳で息子を出産(もう、それだけで、共感する)。すぐに夫と別れシングルマザーで子育て。息子は15歳になった。思春期真っ只中。55歳の母は、息子が理解できなくなってきた。

で、間借り人の女性写真家や、おませな幼馴染の女子に、息子の心の世話を頼む。他にも元ヒッピーの間借り人のおじさん?お兄さん?もいて、みな、ちょっと風変わりで、どこか繊細。そんな人たちに見守られ、もやっとしながらも、少年は成長していく。

写真家と息子が、レインコーツ(ポストパンクのガールズバンド)を聴いているところに母が入ってきて
「(この人たち)きれいに演奏できないの?」
「自分たちが下手だと知ってやってるの?」
と畳みかけるように疑問を呈した。写真家の答えは、「強い感情があれば、技術は必要ない」。

青いな。でも、それも一理。

いつかうちの息子も、そんな母さんには理解不能なカルチャーを、我が家に持ち帰ってくるんだろう。

眉をひそめたり、目くじらたてながら、こっそりと、息子のいない時に聴いたり観たりしてみよう。全く受け付けないと思われたカルチャーが、私の中へとはみ出してくるかもしれないし。

そんな日が楽しみだ。

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この渡り廊下を行くと、その向こうは、CDコーナー。ここを駆けていく後ろ姿は、いつも嬉しそう。

DVDのあとは、必ず、CDコーナーに立ち寄る。

お店一押しのブラジリアン・ミュージックを大人のヘッドホンで視聴しながら腰を振る。TSUTAYA が息子の遊び場。都会の真ん中で暮らすとはそうゆうことか?

大阪の片田舎で、ザリガニ釣ったり、野山を駆け巡っていた母の子供時代とは何もかもが違う。どんな大人になるのやら、こんなに興味深いことはない。

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ブラジリアンミュージック視聴中。ラテンで気持ちが大きくなってるのかな。
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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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