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子どもと行く映画自閉症の息子の心を救った、ディズニー映画の「ある魅力」

2017.04.07

3歳で言葉を失った自閉症の息子に起きた、奇跡の物語。
ドキュメンタリー映画『ぼくと魔法の言葉たち』監督インタビュー!

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自閉症により3歳で言葉を失い、自分の世界に閉じこもってしまった少年オーウェン。

ひとりぼっちの闇の中にいる、彼の心を救い出したのはディズニーのアニメーション映画でした。

映画『ぼくと魔法の言葉たち』は、自閉症の息子との日々を綴ったエッセイ「ディズニー・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと」を元に自閉症の息子を抱えた家族のドラマを描くドキュメンタリー。

この作品に感動したディズニー社が、自社製作でない映画に対し、異例の作品の使用許諾を出したことでも話題になっています。

今回、監督のロジャー・ロス・ウィリアムズさんに映画について、そして自閉症の子どもたちとの向き合い方について話を訊きました。

オーウェンにとって、ディズニー映画は生きるための道しるべ

——この物語の主人公となるオーウェンとはどのように出会ったのですか?

「もともと、オーウェンの父親であるロンと古くからの友人だったんです。彼から、オーウェンが大学で“ディズニー・クラブ”という、ディズニー映画を観て、それについてみんなでディズカッションするクラブをやっているんだ、という話を聞いたんです。それがいい映画の題材になるんじゃないかって」

——それで、実際に会いにいったんですか?

「2014年のバレンタイデーでした。大学でダンスパーティがあってオーウェンは恋人のエミリーとスローダンスをしていたんです。それが私にはとても衝撃的でした。正直に言うと、私はそれまであまり自閉症についての知識がなかったんです。だから、普通のティーンネイジャーのように、恋をして、幸せそうにしているオーウェンの姿に驚きました」

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——オーウェンは自閉症を発症する以前からディズニー映画を愛していました。そして、それは大人になった今も変わらないままです。

「オーウェンにとって、ディズニー映画は生きるための道しるべです。自閉症である彼は、他人の気持ちやその場の状況を読み取ることが苦手です。ディズニーの映画は表情豊かで、ドラマティック。彼らにとっては、人間の感情の起伏や、生きるための考え方を知るのにとてもいいお手本なんです」

——とくにオーウェンは、ディズニー映画の脇役を愛しています。さらに、自分の想像でディズニーの脇役たちを集めた物語「迷子の脇役たちの国」を作り上げます。彼はどうして、脇役たちを愛したのでしょうか。

「映画の中でもオーウェンは “自分も脇役だ”と語っています。また、子どものころ、彼はみんなの視線が自分を素通りしていくことをとても悲しく思っていたそうです。ディズニー映画の中では、脇役はヒーローが宿命を果たせるように手伝う小さな存在です。でも、オーウェンは、そんな彼らをひとりも見過ごすことをしない。それは、どんな社会でも見過ごしていい人間などいない、というオーウェンの経験から生まれたものだと思います。全員が重要で、誰もが必要不可欠で、それぞれがそれぞれの人生の物語を持っている。彼が持つ美しい哲学、世界の見方だと私は思いました」

大人の世界に引っ張るのではなく、子どもの世界に歩み寄る、ということ

——自閉症をはじめ、発達障害など自分の子どもが社会的に弱い立場に立たされた時、母親はどうしても悩み、苦しんでしまうものだと思います。そんな中で、どう子どもたちと向き合うべきだと思いますか。

「その答えは映画の中にありますね。オーウェンの母親であるコーネリアの姿がとても参考になると思います。彼女は素晴らしい母親です」

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——コーネリアは、幼いオーウェンに合う学校を遠くまで探しに行ったり、それもうまくいかないときは、ホームスクールつまり自宅学習でオーウェンに勉強を教えたり、彼の成長をずっと支えてきました。大学卒業後、ひとりで生きていくための準備にも、オーウェンとともに熱心に取り組んでいます。

「彼女は、常にオーウェンと向き合っています。もちろん、たくさんの失敗もしています。それでも、子どもを愛することをやめなかった。オーウェンが夢中になれることを一緒になって、みつけてあげたんです。ここで大事なのは、大人たちの世界に彼を引っ張ってつれていくのではないということ。子どもの世界に歩み寄ることが大事なんです。オーウェンの場合、それはディズニー映画でした。サスカインド家では、ディズニー映画のセリフを介して家族の会話がすすみます。そうすることで、オーウェンは現実の世界で起きていることを理解でき、両親は彼の考えを知ることができる。子どもたちの世界に歩み寄るのは、忍耐のいる作業です。両親の愛情と思いやりが必要だと思います」

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——どんな親でも、子どもが夢中になれることをみつけてあげたい、と思っていると思います。

「そうですよね。とくに、自閉症の子どもたちにとっては、それが世界とつながる鍵となります。ゲームばかりしている子がいたとしても、もしかしたら、将来世界的なゲームデザイナーになるかもしれない。その可能性を信じて活かしてあげてほしいですね」

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ロジャー・ロス・ウィリアムズ

アメリカ合衆国、サウスカロライナ州出身。ニューヨーク大学などで学び、TVプロデューサー・演出家として活動開始。初監督の映画『Music by Prudence(原題)』(10)でアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞し、アフリカ系アメリカ人監督として初のアカデミー賞受賞者となった。自身もゲイであることを公言し、セクシャリティや貧困、人種などにより”はみ出し者(マイノリティ)”となってしまう人々に目を向けた作品作りに定評がある。


『ぼくと魔法の言葉たち』
監督:ロジャー・ロス・ウィリアムズ
原作:「ディズニー・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと」(ビジネス社刊)
出演:オーウェン・サスカインド他
配給:トランスフォーマー
シネスイッチ銀座ほか4月8日より全国順次公開
http://www.transformer.co.jp/m/bokutomahou

文〇梅原加奈