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藤田あみいの「懺悔日記」・39悩んでいたことが口からこぼれ、初めて会った人の前で泣いていた【懺悔日記・39】

2017.06.16

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第39回 ハナコママの編集長と会う

39

2016年4月16日 

すごく残念な事に、いままで通っていた母と子のための心療内科の先生が、病に伏してしまったらしく、病院を移らなくてはならないという知らせがきた。

転院先の候補をいくつか紙でもらったが、ここの先生ほど良く私のことを理解してくれていた人はおらず、また、子供と母親両方を見てくれる病院がなかなか無いので、途方にくれた。

必死に似たような病院がないかとインターネットで探しもしたが、場所が地方であったり、普通に通える距離でなかったりして、突然迷子になってしまった気分だった。

あんなによくしてくれた先生の病状もとても気になった。

どうして皆の心の支えになるような立派な人が、病気になってしまったのだろう。私のように、先生に頼ることができなくなって途方に暮れている人は少なくないだろうと思った。

そしてここから病状はまたガタガタと悪い方に進んでいった。

2016年6月2日

本も無事出版され、私はこの機会にいろいろな出版社に企画を持ち込みに行くことにした。いまを逃すともう文章とイラストで食べていくなんてチャンスはないかもしれない。

心に病を抱え、満身創痍ではあったが、行動力だけには自信があるのでいろんな出版社に電話をし、アポを取り付けた。

「そんなのお前のブログで勝手にやってろよ」と電話先で言われたこともあったが、この世界で生きていきたいならここで負けてはダメだと思い、とにかく頑張った。

マガジンハウスの岸辺さんもそんな私と会ってくれた人の一人だ。

「Hanako」という雑誌は知っていたが、「Hanakoママ」というものが存在していることを後々知り、Hanakoママ編集長の岸辺さんに、自分の育児に関する平凡な日々をどういう形でもかまわないので連載させてくれないかとお願いした。

お願いするうちに、明るい内容で記事を書きたいと言うつもりが、いままで悩んでいた事がボロボロと口からこぼれていき、最終的には初めて会った岸辺さんの前で泣いていた。

岸辺さんはそんな私の様子をとても心配し、そして共感してくれた。

昔の育児日記って、後から読んだら楽しいかな〜と思って書くんだけれど、実際は読み返したくないんだよね…とおっしゃっていた。私も同意見だった。

自分がインターネットの情報にいかに踊らされていたか、そしてそれによりどれほど心を病んだか、幸せだったはずの生活が壊れてしまったのはなぜか、そんな話を岸辺さんは、わかるわかる、と聞いてくれた。

最終的にWEB向けにその辛かった内容で一本原稿を書いてみてくれないか、と言ってもらえた。

やっととりつけた約束だったが、どうしても自分に起きた不幸な事実を人様にさらけ出す気にはなれず、筆が進まなかった。

なにより、今もまだ完治しておらず、悩み続けている私が人を励ますような事が本当にできるのか、とにかく自信がなかった。

他の内容ならいざ知らず、よりにもよって題材がずっと私を苦しめている強迫性障害、娘への心配の話だ。

やはり気が乗らず、なにも書けないまま、日々が過ぎていった。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第30回「私はこんなにめちゃくちゃな人間なのです、と泣けたらどんなに楽だろうか」
第31回「破壊へと道を進めているのは私そのもの。私だけが狂っている」
第32回「恐れていた一歳半検診。ついにこの日が来た」
第33回「わたしが暗闇の中を彷徨ってる間に、この子はこんなに喋れるようになった」
第34回「ああ嬉しい。もうちょっとで普通のお母さんになれる」
第35回「胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる」
第36回「娘に「ママいなくなってもいい?」と聞いてしまった」
第37回「頭の中は娘に関する心配事ばかり。身も心も憔悴しきってしまった」
第38回「体重が激減した。ご飯が喉を通らないのだ」
第39回「悩んでいたことが口からこぼれ、初めて会った人の前で泣いていた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい