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藤田あみいの「懺悔日記」・41「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた【懺悔日記・41】

2017.06.23

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第41回 強迫性障害とうつ症状の悪化

41

2016年8月12日

相変わらず夫は私のことを一切責めなかった。それどころか、以前より献身的に家のことをいろいろとやってくれるようになっていた。

仕事も、極力会社へ行かず、自宅作業をしてくれるようになった。「一緒に治そう」「僕もてーたんも君の味方だよ」「いままで一人で頑張らせてごめん」そんな言葉が次々と夫から発せられた。

なぜだかわからないけれど、一人じゃないんだという気がして涙がボロボロと零れ落ちる。久しぶりにものすごく暖かい気持ちに触れたような気になった。

なにか夫が別の人間になってしまったような気すらした。

いままでだって色々なことで負担をかけてきたのに、今度は心にも寄り添ってくれるという。夫には感謝してもしきれない。

仕事にだって本当は行きたいだろうに、会社の人にもたくさん迷惑がかかるだろうに、私のせいで……私のせいで……。

くよくよしても仕方がない。一刻も早く良くなって、みんな笑顔に戻れるように踏ん張ろう。

誰も「早く良くなれ」なんて言わないでくれている。みんな「ゆっくりでいいんだよ」と言ってくれる。夫も家族も友達も。

今はそういう時期なのだと受け入れて、辛い波が去るのを待とうと思う。とても苦しいけれど。

2016年8月17日 

目覚めた瞬間から気が重い。特に朝は徹底的に調子が悪い。まさしくこれはうつ症状というのではないだろうか。

「うつは甘え」なんて言葉をたまに耳にするが、むしろこの状態は24時間試練の時であると感じる。

常にギリギリの崖っぷちまで追い詰められている感じだ。甘えているどころか、誰が好き好んでこんな状態になることを選ぶのだ、と思うほどの疲労感だ。

目に見えて傷が確認できるわけでもないので、周囲の理解も得られない。

自分自身でも「本当に調子が悪いのだろうか、わたしはただ怠けたいだけなのではないだろうか、クズ人間だ」と罪悪感で一杯になる。

今日も何もできなかった。明日もきっと何もできない。もう未来なんてない。そんな気持ちに押しつぶされそうになる。

朝ごはんの準備をするどころか、布団から出ることもできない。布団の中にいても、常に不安でいっぱいな状態で、胸騒ぎがするたびにギュンと胸が痛くなり、体をよじらせる。

時には滝のように汗が出て、心臓の鼓動がじっとしていればいるほど、大きな音で聞こえてくる。

いよいよここまできてしまったのか、もう戻れないかもしれない。絶望的な思考ばかりが頭を駆け巡る。

夫は今日も家で仕事をしてくれていた。

忙しい夫だ、なるべく話しかけるまい、と思っても、じっとしていることすらできなくなった時に、フラリと夫の元に行って「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、ただただ子どもみたいに泣いた。

泣いても何も変わらないのに、泣いている間は少しだけマシな気がするので不思議なものである。

夫は仕事の手を止め、ひたすら涙を受け止めてくれた。

(次号に続く)これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第30回「私はこんなにめちゃくちゃな人間なのです、と泣けたらどんなに楽だろうか」
第31回「破壊へと道を進めているのは私そのもの。私だけが狂っている」
第32回「恐れていた一歳半検診。ついにこの日が来た」
第33回「わたしが暗闇の中を彷徨ってる間に、この子はこんなに喋れるようになった」
第34回「ああ嬉しい。もうちょっとで普通のお母さんになれる」
第35回「胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる」
第36回「娘に「ママいなくなってもいい?」と聞いてしまった」
第37回「頭の中は娘に関する心配事ばかり。身も心も憔悴しきってしまった」
第38回「体重が激減した。ご飯が喉を通らないのだ」
第39回「悩んでいたことが口からこぼれ、初めて会った人の前で泣いていた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい