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藤田あみいの「懺悔日記」・42元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている【懺悔日記・42】

2017.06.27

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第42回 新しい病院

42

2016年8月24日 

わたしにはまだ唯一希望があった。それは、「絶対に治したい」という気持ちが心の中にかすかにあったことだ。

病気に寄っかかってしまって、どうせよくならない、と思い込んでしまえば、きっと良くならないまま一生を終えるのであろう。

病気に酔って、泥のように崩れてしまえばそれはそれで楽かもしれないと、今の状態なら思うのだが、わたしにはそれができない理由があった。

娘。愛すべき娘。わたしは、救急車騒ぎの時、慌てふためく娘の表情が忘れられない。

きっと、トラウマになってしまったに違いない。あんな小さくて純粋な可愛らしい心に、なんてことをしてしまったのだろうか。

わたしが苦しんでいるように、娘の心にも翳りが出来てしまったら、一体どうしたらよいのか。この子のためにも早く元気なお母さんになりたい。

この気持ちだけが、満身創痍の体を少しだけ奮い立たせてくれた。

このごろのわたしは布団の中にいるだけで何もしていないのに、さらにやる気が失せていた。

これ以上何をやめればいいのかな…と考える中で、少しでも現状が良くなるようにという気持ちで、薄目の意識の中、スマホを触った。

すると、強迫性障害には「認知行動療法」というのが効果的、という記事を見つけた。

認知行動療法。なんだそれは。

やすやすと信じることは時に絶望に繋がる(前の病院然り)が、少しでも前に進みたい気持ちが先行した。近所で認知行動療法のカウンセリングが受けられるところを偶然にも見つけたので、早速門を叩いた。

そこで、認知行動療法のカウンセラーである宮地さんという女性と対面した。

第一回目のカウンセリングは、今の自分の状態になるまでを順序立てて説明することのみに終始し、あっという間に終了した。これで6000円、正直言って、高い。と思った。

まだ1回目だからなのか、なんなのか。よくわからない。聞かれて終わり?

本当に効くのか? 認知行動療法とやらは。

この日も、その時の外出以外はずっと布団の中で過ごした。まだまだ明日は見えない。

2016年9月6日 

以前からお世話になっている三鷹市の保健師・永坂さんに、前の病院が合わなかったという相談をしたところ、新しい病院を一緒に探してくれた。

ちょっと遠い病院だが、永坂さんが勧めてくれるのであれば、そこそこいい病院なのかもしれない。

永坂さんは、今までにも同じように産後うつや育児ノイローゼのような状態になってしまったお母さんたちと随分接しているようで、この病院を勧めたのもこれが初めてではないという。

早速永坂さんとその病院に行ってみることにした。

着いてみると、大きな病院だった。入院施設まで整っていた。

フロアにはお年寄りから若者まで、たくさんの人がいた。一見元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えているのだと思った。

前にも書いたが、心の病というものは目に見えないのである。今、笑って過ごしている人たちも、絶望的な心境ですごしている場合がある。

わたしは子育てに関しての不安によりこの状態になってしまったので、希望していた通り、子育て経験のある女性医師が担当となった。

若い女医だった。今までのことを、カウンセラー宮地さんに話したように初めから説明し、ひととおり聞いてもらった後に、女医は「ご推察の通り、『強迫性障害』という状態、でしょうね」と言った。

この女医は、とても物腰が柔らかくて、わたしの症状にもひとつひとつ丁寧に解説を交えて話してくれた。

自分に今何が起こっているのか、どうして疲れ果ててなにもできないのか、なぜ娘に対し不安な気持ちが止まらないのか、あらゆる面からある意味冷静に、客観的に、説明をしてくれて、ああ、この人は信用できそう。と感じた。

女医は現在行っている認知行動療法(カウンセリング)は続けて行い、投薬治療の方はこちらの病院で行うことを勧めてくれた。

保健師の永坂さんが良い病院を教えてくださったおかげで、やっとひとつ前進できたように思う。

女医さんにこれからよろしくお願いしますと頭を下げ、保健師の永坂さんとロビーでお別れをし、帰路に着いた。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第30回「私はこんなにめちゃくちゃな人間なのです、と泣けたらどんなに楽だろうか」
第31回「破壊へと道を進めているのは私そのもの。私だけが狂っている」
第32回「恐れていた一歳半検診。ついにこの日が来た」
第33回「わたしが暗闇の中を彷徨ってる間に、この子はこんなに喋れるようになった」
第34回「ああ嬉しい。もうちょっとで普通のお母さんになれる」
第35回「胸の奥から再びモヤモヤした黒いものが湧き上がってくる」
第36回「娘に「ママいなくなってもいい?」と聞いてしまった」
第37回「頭の中は娘に関する心配事ばかり。身も心も憔悴しきってしまった」
第38回「体重が激減した。ご飯が喉を通らないのだ」
第39回「悩んでいたことが口からこぼれ、初めて会った人の前で泣いていた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい