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藤田あみいの「懺悔日記」・49私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ【懺悔日記・49】

2017.07.21

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第49回 悲しい顔

49

2016年10月20日 

ストレスケア病棟の人たちはみんな優しくて悲しい目をしている。

なんでだろう。みんな顔は全然違うのに、同じ表情だ。

どこか、ここにいることを申し訳なく思っているような顔つきだと思う。

朝ごはんをホールで食べながら、そんな風に感じていた。

昨日友達になったMちゃんは、27歳でスラッとした女性だ。子供が二人いて、2歳と1歳の子だそう。

夫からのモラハラ発言に耐えられず、逃げ出してきたようだ。ここに入る前は、子供に起きてーと言われても、うんともすんとも言えないとほど衰弱していたらしい。

もう一人昨日お話ししたTちゃんという人は、31歳。お兄さんに溺愛されていて、束縛されるあまり、そんなお兄さんからの暴言に耐えられなくなって、ここに入ってきたらしい。お兄さんはとても暴力的な人だそうだ。

みんな悪から逃げてここにいるのだな。

私は? 私は可愛い娘から逃げてここにいるのだ。可愛くて屈託のないふわふわの髪の毛の女の子から逃げているのだ。

あらためて自分の弱さにクラクラする。

悲観的に考えればそうだが、私が逃げているのは可愛い娘ではなく、自分自身の不安だとも思う。けれども、形として娘から逃げているのは間違いない。

今日、担当医が訪ねてきた。

心理検査をする意向は変わらないようで、どうもやはり私自身の発達障害を疑われているようだ。悲しい気持ちと、諦めの気持ちと、たった数回話しただけの女性に発達障害を疑われて、軽く苛立つ気持ちもあった。

でも、娘は最愛の母からずっとずっと何かを疑われているのだ。

何があっても私は私。ある意味、疑いをかけられることによって、発達障害の意味するものがなんだかわかってきた気がする。

うまく生きていけないから、診断名がつくのだ。そうでなければ、必要がない。現に私はこうして入院までして困っているのだ。診断名がつくかもしれない。だけどそうであったとしても、そうでなかったとしても、道は開ける。

発達障害であれば、得手不得手を理解し、より生きやすくなるように工夫をすればいいのだ。そうでなかったら、それはそれで困りものだが、気持ちとしては嬉しい。

娘のこともそうしてみてあげるのがよかったのだ。

先生はもしかしてわざと、そんな検査をする提案をしたのだろうか?……いや医者に限って、そんな荒治療……というか無駄なことはするまい。本当に私の様子をみてそう感じたに違いない。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい
第51回「わたしは「懺悔日記」と銘打った記録を書き上げた」
第52回「娘の屈託のない笑顔。ここにわたしはなにを求めていたのだろう」
第53回「産後はみんなホルモンの影響で不安に。それに耐えられる人とそうでない人がいる」
【最終回】第54回「なぜ病気になったのかはわからないが、私を治したのはまぎれもなく、娘だ」

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい