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藤田あみいの「懺悔日記」・50「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい【懺悔日記・50】

2017.07.25

妊娠出産を経て、深刻な産後うつに。
三年の月日をかけてようやく母親になった、わたしの懺悔の日記。

この連載は……

出産後、ある時期から深刻な産後うつ状態になったイラストレーター・藤田あみいさんが、娘のてーたんを育てながら3年間にわたる気持ちの揺れを克明に綴った日々の記録「懺悔日記」。その内容を、少しずつ公開していきます。


第50回 お芋掘りはどうだったのか

50

2016年10月22日 

今日は娘の保育園でお芋掘りの日だ。ママ友から写真が送られてきて、無邪気に遊ぶ娘の顔を見て、涙が出そうになった。早く会いたい。あんなに離れたかったのに、娘はやはりわたしの心に咲く一輪のバラだ。

今日は病院で仲良くなった子たちと、近所を散歩した。

横断歩道で、赤信号なのに「いまいけるかな」と渡ろうとしたら、友達の一人に「せっかちですねえ」と言われた。ああ、そうかもしれない。私、なにもかも急いでいた気がする。

あれをしながらこれもやっとけばあとから楽だろうとか、いろんなことを急いでいた。

昨日も薬を飲むためのお茶を取りに行くのに、職員さんを待たせたら悪いと思って廊下をパタパタ走っていたら、「はしらないでください」と別の職員さんに言われて、あれ、たしかに今そんなに急ぐ必要ないなと思った。この期に及んで何を焦る必要があるというのか。時間はたっぷりあるのに。

それから少しゆっくりとひとつひとつの動作を行うように心がけてみた。子供がいるので化粧水をゆっくり塗ることもできなかったが、ここではそんなことを急ぐ必要はない。たっぷりと塗って、手でなじませて、乾くまでじっとしていていいんだ。

娘ももう3歳になる。そういう時間はすでに持てるはずなのに、何かに急かされるように全ての動作を早め早めにしていた気がする。

これからはもっとゆっくりと過ごしてみよう。結果はすぐにはでない。子育てなんてもっと結果がわかりずらい。なにか、急ぎ過ぎていたのかもな、とふと思ったら、色々と楽になったような気がする。

それと、「曖昧なことを受け入れるのが大人になることだ」という、ソクラテスの名言を知った。

これは私に決定的に足りていなかったことだと思う。ただ病院でダラダラしているだけだが、今回ゆっくりと自分のことを考える時間ができて結果的にすごく良かったように思う。大人になるというのは、曖昧さを受け入れることだったのだ。

つまりまだまだ精神的には未熟だったということなのだな。曖昧なものはいたるところに存在していて、それを受け入れて、みんな生きているのだ。私も、そのようになれればいいのだと思った。

自分が発達障害の疑いをかけられ、その答えも急ぎに急いでいたが、どう転んでも結果は変わらないし、なんなら結果が出たところで自分自身も変わらない。

苦手なことがあるなら、別の能力で補うこともできるような気がする。また、苦手が解れば、その部分を人に助けてもらうこともできるかもしれない。そんな風に思う。

3歳の娘のことなんてもっともっと曖昧だ。そうであっても、曖昧さを受け入れる。というか、気にしない。やることはただひとつ、笑顔で過ごすことだけだ。

はやく娘に会いたい。私にあったら娘は大喜びするだろう。いきなりママに会えなくなって、心配しているだろう。入院する前の日の晩「ママ、大好き」と言って眠りに落ちていった娘の側で、私ももう一度眠りたい。

(次号に続く)

これまでの連載
第1回「私は生命を生み出してしまったのだと。ことの重大さに気づいた」
第40回「もう終わらせたかった。なにもかもを終わらせて、消えたかった」
第41回「ちょっとだけ話をしたい」と言いながら、子どもみたいに泣いた」
第42回「元気に見える人たちも、なんらか心に葛藤を抱えている」
第43回「愛情という文字を見た瞬間に、わたしは大きな声を上げて泣いていた」
第44回「「自分を責める必要はない」というのはわかったが、やっぱり辛いのだ」
第45回「娘を見ているのがつらいなんて変だ。私は家を出ることにした」
第46回「布団に入っても、夫の言葉が頭の中を巡った」
第47回「自分に発達障害の可能性があるとは、夢にも思わなかった」
第48回「私が発達障害を抱えているとしても、何も変わらないのではないか」
第49回「私は、可愛い娘から逃げてここにいるのだ」
第50回「ママ、大好き」と言って眠りに落ちた娘の側で、私ももう一度眠りたい
第51回「わたしは「懺悔日記」と銘打った記録を書き上げた」
第52回「娘の屈託のない笑顔。ここにわたしはなにを求めていたのだろう」
第53回「産後はみんなホルモンの影響で不安に。それに耐えられる人とそうでない人がいる」
【最終回】第54回「なぜ病気になったのかはわからないが、私を治したのはまぎれもなく、娘だ」

「懺悔日記」連載一覧

藤田あみい

イラストレーター・デザイナー・エッセイスト。
「無印良品の家」のウェブサイトで「ぜんぶ無印良品で暮らしています~三鷹の家大使の住まいレポート~」を執筆中。
2016年に同タイトルの本を出版。現在韓国語・台湾語に訳され、幅広い層の人へ向けて発信を行っている。
趣味はショッピング。夫と娘が生き甲斐。

「懺悔日記」読者へのメッセージ

妊娠・出産を得て、わたしは強迫性障害という病気になってしまいました。
強迫性障害を簡単に言うと「潔癖性」というようなものがわかりやすいと思います。
私の場合は潔癖ではなく、「『娘に障害があるのでは』という強迫観念が浮かんでくる。」というのが症状です。
愛する子どもを育てていて、一瞬でも「この子に何かあったら」と不安を感じる人は少なくないと思います。
このブログはそんな気持ちのドツボにはまってしまった私の懺悔の日記です。
「ありのままを受け入れる」そこに至ることが難しい人に向けて、少しでも気が軽くなればいいなと思い書き連ねています。
藤田あみい