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コロナ禍の妊娠・出産を経験して ①妊娠期間

コロナ禍の妊娠・出産を経験して ①妊娠期間

「ほんとにひとりで産むんだなぁ」

2020年9月、出産のためにタクシーで病院に向かう時、ゆう子さん(仮名)は覚悟を決めました。

コロナにより妊娠・出産・産後のママ達の孤立が深まっている、という調査結果(*1)が出ました。コロナ前は立ち会い出産を希望する妊婦のうち9割近くが希望を叶えましたが、コロナ禍では4割に減少。産後の面会希望の実現率は、コロナ前は9割、コロナ禍では2割。産後うつなどメンタル悪化の事例が増えているという報告も。

一方、男性の育休取得率は上昇し、妊産婦向けサービスのオンライン化が進んだという明るいニュースもききます。

今、出産・産後に何が起きているのか? この状況を乗り切るヒントは?  2020年4月以降の出産経験者や専門家に話をききながら考えます。

「子どもの成長は、コロナの脅威に勝る」

冒頭のゆう子さんは、今回2人目を出産。1月に妊娠判明した直後から、世の中はコロナであわただしくなりました。

「お腹の子の成長とともに、確実に前に進んだ実感があり、2020年はコロナだったけど私にとっては良い年でした。出産が無ければつらかったと思う。つわりで外出しづらいのもあり、自粛も気になりませんでした」

「でも、出産中に万が一のことがあったらどうしようと。健診時ですら、妊婦以外は一切立ち入らせない病院でした。命の危険があれば、さすがに夫くらいは病院に入らせてくれるとは思うけど、すごく心配になり緊張しました」

「夫婦が、共に親になる」というプロセスをもてない

コロナの影響で、健診への付き添いはもとより両親学級も開催されなくなりました。データ(*1)では、「病院・産院等の両親学級等の受講」希望実現率は、コロナ前に比べ58%減となりました。

両親学級は、沐浴(赤ちゃんのお風呂)、抱き方、オムツ替えなどスキルを伝える場ですが、「夫婦が一緒に親になる」というプロセスを経験する目的もあります。

家で夫婦一緒に赤ちゃんのお世話動画を観ても実感がとぼしく、「ふーん、そうなんだ」という感じ……。7月に1人目を出産した真美さん(仮名):

「病院で直接指導を受けたのは私だけなので、赤ちゃんを連れて家に帰ると、夫が『教えてくれないとできない』と完全に受け身になっていて、残念でした。最初から上下関係、教える側・教えられる側という関係になってぎくしゃくして……。でも、今は毎日お世話をしてくれています」

沐浴などは、YouTube動画を観ればわかる、という意見もあります。そのとおり、たくさんのコンテンツがウェブで公開されており、スキル習得には困りません。でも「動画と同じように抱っこしても泣き止まない、げっぷしてくれない」と悩む新米パパママは多いのです。

そう、子どもは皆違うんです。初めは、そんなことも考えられないほど必死で、一人で悩んでしまいますよね。

「切迫早産で入院、1か月間誰とも会えなかった。SNSが心の拠り所」

真美さんは、妊娠後期に切迫早産の恐れがあり、1か月入院しました。もちろん家族もコロナ禍により面会禁止。

「1か月間、人と会えない状態が続いて、わけもなく涙が出てつらかったです。夫も心配して、よく電話をくれました。SNSで同じような思いをしている妊婦さん達と愚痴を言いあい、励ましあって乗り切りました」

真美さんは、Twitterを介して、同じくらいの出産予定時期の妊婦さん達と知り合いになりました。

「Twitterに救われました。私、ちょっと珍しいタイプかもしれませんけど(笑)。同じ立場の人達をピンポイントで見つけて『共感』しあう感じが、私には合います。そんなにうまくリアルでは妊婦友達は見つからないし、以前からの友達には重たすぎて愚痴れません。コロナで人と会えないから、どんどん一人で煮詰まってしまう。適度な距離感、匿名性……。そう、夜中でも誰かがつぶやけば、誰かが返してくれるから孤独じゃない」

私には想像できなかった世界ですが、真美さんは「Twitterは、実際に会うことがない相手なので、逆に何でも言える関係。トラブルになる前に関係を切れるので安全」と使いこなしています。

つらい時に欲しいのは、「共感」しあえる「気軽な関係」なのかもしれません。

SNSには危険なイメージもありますが、使い方で「癒し」や「励まし」として大きな役割を果たすものだと気づきました。

「コロナの胎児への影響が分からなくて、ものすごく不安だった」

一度目の緊急事態宣言が出た4,5月は、新型コロナウイルスについて分からないことだらけでした。そのため、「ゴミ捨てすら自分では行かず、健診のための外出はマンションエレベーターを避けるために、13階から階段で1階まで歩いて下りた」「慎重になりすぎて、メンタルをやられそうになり休職した」という方もいました。

2020年12月、日本産婦人科医会が「今、妊娠中のみなさんに伝えたいこと」を発表していますので、内容を抜粋してご紹介します。

1. 妊娠中のみなさんの新型コロナウイルスに感染する割合は、一般の人に比べ低いことが報告されています。

2. 妊娠中期の感染が多く、60%が家庭内感染です。

3. 妊婦さんが重症化することは少なく、新生児への感染も国内では報告されていません。

4. 以上から、感染を過度に心配する必要はありません。家族全員で予防対策を徹底しましょう。

詳細:https://www.jaog.or.jp/…/wp-cont…/uploads/2020/12/201215.pdf

「頼れる相手は、夫だけ」「がんばる夫に惚れ直しました」

「里帰り出産できない」「祖父母の手助けを期待できない」という状況で、「頼れる相手は夫だけ」という家庭が増えました。妻は切迫早産気味で絶対安静、上の子の送り迎えは必須、となると、さすがにパパ達もやらざるをえません。

6月に2人目を出産したエミさん(仮名)は、ご主人を見直した一人です。

「まったく何もできなかった夫が、別人のように料理、洗濯、子どもの世話をしてくれました。職場でも周囲に妊娠を告げて、子どもの幼稚園送迎のために仕事を抜け出して戻り、ママ友とのつきあいもこなして、また職場へ。すごく手際もよくて、何かのスイッチが入ったかのよう。惚れ直しました。産後は、洗濯機の使い方も忘れてしまって、何もしなくなりましたが……」

私も、このご主人が送迎する姿を何度も目撃しました。他にも「うちのパパもコロナで張り切って、家のことや育児をいろいろやり出した!」という証言が。もしかして「緊急事態」で父親達の生存本能、闘争心に火がついたのかも?

専門家「立ち会い出産の機会がないことは、夫婦にとって痛手」

共立女子大学看護学部母性看護学の岸田泰子教授は、「立ち会い出産や面会の機会が失われることは、夫婦にとって痛手。一生の思い出、親としてのスタートですから。コロナに限りませんが、最初の出産のトラウマを抱え続けて2人目を妊娠できないというケースもあります。心の傷にならないよう、必要な人にはケアを」と指摘します。

「両親・母親学級がなくなり、妊娠中に知識を得て、自信を持って母になっていくというプロセスがコロナで失われているようです。助産師も大変で、フォローが必要な人を見つけにくいこともあります」

私は5年前に出産しましたが、暗い妊娠期間を送りました。今思えば、産前うつ(マタニティーブルーの一種?)のようで、「心身ともにしんどい、こんなんじゃ無事に産まれても、育てることなんかできない」と涙ぐむ始末。夫婦そろってお腹に一度も話しかけられませんでした。

しかし、偶然の立ち会い出産となり、そこでようやく夫に「本当によくやった、無事に産んでくれてありがとう」と言われて、目が覚めました。

立ち会い出産や面会は、思い出になるだけではなく「親になるスイッチ」をオンにしてくれる意味がありました。しかし、コロナで機会が持てないからといってあきらめることはありません。

今回の取材をとおして、その糸口を見つけたいと思います。

最後に、妊娠中の方向けのチェックリストをご紹介します。

【コロナ禍における「新しい妊娠出産環境を整えるためのチェックリスト」】

作成:株式会社スリール
https://sourire-heart.com/wp/wp-content/uploads/2020/11/6dzeghegnf1ijk0fbpgk72q6yyz1e7z1.pdf

(6回シリーズ。次回に続きます)

(*1)株式会社スリールとNPO法人ファザーリングジャパン共同実施アンケート「コロナ禍前後の妊娠出産アンケート結果」(2020年9月7日付)https://fathering.jp/news/news/20200907-01.html

●取材協力してくださった出産経験者(すべて仮名またはペンネーム):

真美さん:2020年7月、1人目を出産。切迫早産で1か月入院。育休中。

ゆう子さん:2020年9月、2人目出産。重度のつわり、育休中。

エミさん:2020年6月、2人目を出産。切迫早産で入院。

マルコさん:2020年7月、3人目を出産。関西在住の漫画家。 他数名。

写真・イラスト:マルコさん

<マルコさん プロフィール>

関西在住の主婦。ライブドア公式ブロガー。3児の母。
https://danna-tonyo.com/

著書:「うちの夫が糖尿病になっちゃった! ズボラ夫が血糖値を下げた方法」日本実業出版社

夫が2型糖尿病と診断された主婦マルコが、知識ゼロから試行錯誤しながら奮闘する、明るくて“ためになる”ドタバタ闘病記! 月間最高200万超PVと抜群の人気マンガブログを書籍化。患者本人だけでなく、家族やパートナーが糖尿病の人たちの共感を呼ぶ内容。簡単にできるマルコの糖質オフレシピも掲載。

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。5歳女児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

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