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コロナ禍の妊娠・出産を経験して ⑥あなたを支えるヒント集:産後うつ予防

コロナ禍の妊娠・出産を経験して ⑥あなたを支えるヒント集:産後うつ予防

2020年10月、「コロナ禍で産後うつが倍増、4人に1人が産後うつの疑い(*1)という衝撃的なニュースが飛び込んできました。私が、今回の取材企画をたてたのは、このニュースがきっかけです。

コロナにより妊娠・出産・産後のママ達の孤立が深まっている、という調査結果(*2)が出ました。コロナ前は立ち会い出産を希望する妊婦のうち9割近くが希望を叶えましたが、コロナ禍では4割に減少。産後の面会希望の実現率は、コロナ前は9割、コロナ禍では2割。産後うつなどメンタル悪化の事例が増えているという報告も。

一方、男性の育休取得率は上昇し、妊産婦向けサービスのオンライン化が進んだという明るいニュースもききます。

4回の記事で、2020年4月以降の出産経験者や専門家にお話をききました。その結果より、コロナ禍の妊産婦生活をサポートする知恵をご紹介します。

(*1)参考にしたニュース:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201016/k10012665491000.html

(*2)株式会社スリールとNPO法人ファザーリングジャパン共同実施アンケート「コロナ禍前後の妊娠出産アンケート結果」(2020年9月7日付)https://fathering.jp/news/news/20200907-01.html

「コロナ禍で産後うつが倍増、4人に1人が産後うつの疑い」の衝撃

共立女子大学看護学部母性看護学の岸田泰子教授に、産後うつ予防についてうかがいました。

「突然、産後うつになる、ということはあまりありません。たいてい入院中に何らかのサインがみられます。それに医療従事者が気づけるか、こういうときはこうしたほうがいいですよ、と声かけができるかです。出会いが大切です。

周産期のメンタルヘルスケアはかなり重要視されており、我々もどうにかしてフォローが必要な人を見逃さないようにと考えています。地域の保健所に連絡を入れて、その後をみてもらったりします」

産後うつかどうかを自分でチェックできる質問票はこちら。https://www.kizunamail.com/epds/

とはいえ、初めての育児では「自分が追いつめられている」なんて、わからないもの。「みんな我慢しているはず」「誰にも言えない」とひとりで頑張り続けてしまいます。

そのため、周囲の気づきが大切だと言われますが、コロナにより人との交流が減っています。最大かつ最後の砦は父親。しかし、産後の変化をどうとらえるかは、人により意識の差が大きいところです。「気の持ちよう」「俺だって大変」「母親だろ」と、つい地雷をふむ発言をしてしまうパパも……。

育児に非協力的な夫を敵とみなし、夫婦仲が悪くなる「産後クライシス」という現象も指摘されており、話し合いすら難しい家庭もあるかもしれません。

産後うつ、産後の心身の変化は「誰もが経験する可能性があること」です。早めに相談しやすくするにはどうしたらよいのでしょうか。

写真提供:マルコさん

コロナ禍で増える産後うつ。受診のハードルを下げるために

可能性を探る中で、産後うつに対応する保険を発見しました。

ご存じの方も多いと思いますが「妊娠してから入れる保険」は限られています。そして、原則、精神疾患は通常の保険でも対象外です。

この母子保険は、発案者(Finatextホールディングス代表林良太氏)の奥様が重い産後うつにかかった体験をもとに作られました。妊娠19週まで加入でき、契約・請求・解約はすべてスマホで済みます。

特定の商品を取り上げるべきか迷いましたが、ご夫婦で話し合うきっかけになり、受診のハードルが下がればと考えます。

発案者の言葉を一部引用します。

「もし親の助けがなかったら? 旦那さんの助けがなかったら? 経済的に余裕がなかったら? もしもこのようなサポートがなければ、それで命を断つことになっても『まったく不思議でない」。それくらい、産後うつの方というのは本当に地獄にいるのです。

でも、産後うつに対して社会の理解がもっとあったら? お金をあまり気にせず心療内科行けたら?」(*3)

男性がここまで、産後うつを当事者としてとらえた体験記は初めて読みました。「うつ」には休息が一番ですが、その休息がとれない状態が続くのが、産後なのです。

●(*3)発案者の産後うつ体験記:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76442
●母子保険開発の経緯:https://www.businessinsider.jp/post-219023
●母子保険「はぐ」:https://www.hug-hoken.com/feature/

外部の力に頼ろう、自治体サービスを活用しよう

コロナで里帰り出産しづらい、実家に手伝いに来てもらいにくいという状況の方々が増えました。マンパワー不足と寝不足は、メンタルを急激に悪化させます。

お住いの自治体の提供する産後ケアのサービス(第3回の記事をご参照)を検討してみてはいかがでしょうか? 補助が出るため、民間のサービスより安価に利用できますが、事前に利用登録・申請が必要です。

妊娠届を出したときに、母子手帳と一緒にチラシやガイドブックを受け取りませんでしたか? なるべく臨月までに登録を済ませましょう。外出できない場合は、電話で相談に応じてくれます。

以下の内容が受けられます。

・助産院やクリニックに半日、一泊滞在
・自宅で産褥期支援をうける
・自宅で、家事・育児サポートを受ける
・相談
・(条件付き)託児サービス

保健所も、妊産婦さんへの働きかけをこころがけています。都内自治体の担当者にききました。

「妊娠20 週時点で産後ケア事業の内容や利用申請のご案内をしています。また、32週頃にも電話でのフォローを行い、産後ケア事業利用申請をされてない方には、産後支援は大丈夫ですか? と声かけをしてケア申請を勧めます。

産後も赤ちゃん訪問などの様々な機会をとらえ、産後ケア事業や産後サービスのご案内や申請を勧めています。

産後ケア(助産院滞在の場合)の利用は、緊急事態宣言中の2020 年4-6 月、減少しましたが、産後うつの予防として、続けるべきものだと思います。

昨年11月からは、サービスを充実させており、助産院等も感染対策を徹底してくださっています」

自分をケアする時間を。できれば、体を動かそう。

うつ病予防には、睡眠、運動、規則正しい生活、ストレスを抱え込まないことが大切です。しかし、産後は睡眠も生活も赤ちゃんにふりまわされがち。せめて、自分が好きなリフレッシュ方法をひとつは見つけましょう。

産前から運動が好きな人はYouTubeやオンラインで運動を、ゲームが好きな人はゲームを。スタバの新作を楽しみに散歩するのも立派な息抜きです。

運動は、そのものがうつ予防につながります。週1時間の運動が、うつ病発生を12%抑制するというデータが示されています(*4)。

(*4)参考データ:https://dm-net.co.jp/calendar/2017/027463.php

とはいえ、コロナ禍で外出しづらい間は、0歳児連れでの運動はなかなかできませんね。

オンラインでの運動講座や動画はいくつかありますが、なかでも参加者同士の交流の工夫をしているのはこちら(第5回で工夫を紹介しました)。

マドレボニータ
https://www.madrebonita.com/selfcareclass-online

エクササイズに加え、参加者同士の対話を重視しているのが特徴。

おむつ替えや授乳時の姿勢を工夫してママの身体を楽にするなど、日常生活にとりいれられるストレッチやセルフケアを提案。赤ちゃんに泣かれると困りますが、仲間同士「大変だね」と声をかけあいながら進めます。

参加者の声です。

「毎週決まった時間に、自分の体と向き合うとてもいい時間を待つことができました。コロナ禍で孤独を感じていましたが、他の参加者の方々も同じように孤独感を持っていることがわかり、それをまた共有することで安心感に変わりました。オンラインでどこまでできるのかなと最初は思っていましたが、対話の時間があったりと実際に顔を合わせて行ったような気持ちになりました」

つい自分のことを後回しにしがちな産後のママ達には、無理にでも時間を決めて「この1時間は、自分のケアに使う!」という考え方もありですね。

運動講座写真:マドレボニータ提供

あとがき「一歩踏み出せば、世界は変わる」

今回の取材をとして気づいたこと。それは、

「コロナによる妊産婦の孤立、リアルでの情報入手機会の減少により『情報格差』『マンパワーの格差』が広がっている」ということ。

今回4人のママ達をメインにとりあげました。コロナの影響もあり、夫婦間の家事・育児協力がすばらしく、夜間授乳を替わってくれる、在宅勤務・育休取得するというパパ達が多かったのは驚きです。

一方、この他に、産後すぐにご主人が単身赴任になりワンオペ育児になった人、ママ本人がZOOMを使ったことがない人、SNSやスマホが苦手な人、極度の人見知り……など様々な方がいらっしゃいました。

写真提供:マルコさん

コロナ禍の妊産婦の孤立は、ソーシャルディスタンスという物理的なものに起因しています。

しかし、感染症や災害など有事の際には、通常その社会がもっている価値観が表面に表れるものです。だとすれば、日本の育児は、もともと孤立傾向だったのかもしれません。私ひとりが感じていることかもしれませんが、「育児は、産んだ人が担うべき」というしんどさはどこからくるのでしょうか。

この「孤立した育児」がコロナにより、また進んでしまったという気がします。でも、今回の取材では、コロナ禍でも妊産婦さんを支えようとする多くの方々や、取り組みに出会いました。もし今、「寂しい、つらい」と感じる方がいらっしゃれば、この中のひとつだけでも試していただければと思います。

もうひとりで悩まないで。

一歩踏み出せば、世界は変わります。

(6回シリーズ完結)

◆過去の記事へのリンクはこちら

第1回 (1)妊娠期間 
第2回 (2)出産~産後1か月 
第3回 (3)産後2か月目~3か月目 
第4回 (4)産後4か月目~ 
第5回 あなたを支えるヒント集 オンライン活用 
第6回 あなたを支えるヒント集 産後うつ予防

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

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