子育てママのお悩み解決メディア
助産師をもっと身近に ①総合病院の産婦人科師長 三木美代子さん

助産師をもっと身近に ①総合病院の産婦人科師長 三木美代子さん

妊娠・出産のキーパーソンである、助産師。でも、あまり上手に相談できなかったと感じるママ達もいるようです。今回からの3回シリーズで理解を深め、助産師との距離を縮めましょう。

1人目は、東京都墨田区の同愛記念病院で助産師として35年間勤務する三木美代子さん。産婦人科師長として、日々お産に立ち会い、後輩達を育てる現場のリーダーです。


妊娠~産後まで、母子の健康を支えるのが助産師の役割

助産師の仕事は「保健師助産師看護師法」に定められています。お産の支援や、妊娠中から産後まで母子の健康を支えるのが助産師の役割です。同法律では、助産師の行える業務の範囲も規定されていて、助産師はあくまでも『正常な妊娠・出産』の支援に限り、「助産師が異常を発見した時には、医師の診療を受けること」が規定されています。

例えば、妊娠糖尿病の可能性がある場合は、医師。高齢出産でも異常がなければ助産師。助産師は医療行為を行わないので、出産の途中に異常分娩だとわかればすぐに医師につなぎます。会陰切開や会陰縫合の処置も助産師ではなく医師が行います。

なお、助産院では正常出産のみを扱うため、異常分娩は提携病院へ連絡する体制をとっています。

【妊娠・出産に関わる助産師の仕事】

  • 出産前:妊婦検診(赤ちゃんの健康状態を把握)、保健指導、母親学級・両親学級
  • 出産時:正常出産の介助(*1)、分娩異常の早期発見
    (*1)母体の状態を見て赤ちゃんの頭をおさえたり、医師に処置をうながすなど、お産の進行をコントロール。
  • 出産後:入院中の妊産婦の健康管理、授乳介助、乳房マッサージ、退院後の生活や育児に関するアドバイス
陽の光がさんさんと降り注ぐ明るい分娩室

声をかけることをためらわないで

助産師になるには、助産師国家試験を受けるために看護師資格を取得、もしくは看護師資格と助産師資格を同時取得が必要です。すべての助産師は看護師資格も得ています。また、看護師と助産師の業務の区分は、保健師助産師看護師法で規定されています。

――私は6年前に長女を出産しましたが、産婦人科で戸惑ったのは、助産師と看護師の見分けがつかないことでした。聞きたいことがあっても、誰に聞いたらいいのかわからず、声をかけられませんでした。

「それはよく指摘されます。私は5年間看護師として働いてから助産師になりましたが、看護師経験のない助産師も多くいます。さらに看護師と助産師の業務区分により、看護師に質問しても『それは助産師に聞いてください』と言われたという患者さんは確かにおられます。各自、得手不得手がありますので、とにかくまず、声をかけてみてください。必要に応じて適切な相手につなぎますから」

――私がもうひとつ気になったのは、助産師さんの指導が厳しかったことです。特に産後は疲れ切っているし、気持ちの変化も大きいので、助産師さんの一言が重たく感じました。

「皆、ママと赤ちゃんのために、と必死なので・・・。確固たる信念をもった熱心な助産師ほど、つい厳しい印象を与えてしまうようです。産前産後にナーバスになったお母さんから『叱られているみたい』と苦情を受けたこともあります。そういう時は、遠慮せず私達スタッフの誰かに言ってください。気が付くことができれば、コミュニケーションを改善できますから」

助産師キャリア35年の三木さん

助産師は、女性のライフサイクル全てに関わる仕事

――三木さんの働く病院では、助産師とママの距離を近づける工夫をされています。病棟の助産師を外来に派遣し、妊婦健診の時にお母さん達と顔見知りになれるようにしているそうです。しかし、もっとできることがあるのでは、と三木さんは考えています。

「本当は、信頼関係ができた助産師が出産に立ち会うのがベストだとは思いますが、スケジュール調整などが難しくて。ケアの継続性については私達もいろいろ考えているところです。近い距離で何でも話せる関係にならないと、心配事ってなかなか話せないものですよね」

――私自身、お産を手伝ってくれた助産師さんとその後お会いする機会がなかったのは寂しい気がします。産後健診など、相談する機会を大切にしたいところです。

「せっかく妊娠・出産でご縁ができたわけですから、その後も節目に相談に来ていただければと思います。産後2週間健診での育児アドバイス、電話相談などはけっこうニーズがあります。お母さん方は本当にまじめに育児に取り組み、普通の人からみれば小さなことだとしても、真剣に考えて電話してこられます。助産師の勉強をしている時、先生に『助産師は、女性のライフサイクルすべてに関わる。その時に、その人に必要な援助をする仕事』だと言われました。これには、不妊や更年期も含まれます。出産だけで関係が終わるのはもったいないです」

和室が併設された個室の分娩室

自分だけで背負い込まずに、もっと専門家に頼ってほしい

――最近は、一人で育児をがんばってしまうママが多い気がします。また、ネットの妊娠・出産情報も豊富になり、わざわざ助産師に相談しなくても、という人達もいるかもしれません。

「近年、周囲の目を気にする、他人に迷惑をかけないよう他人に頼らず自分でなんとかしようというママ達が増えています。我々との間にも一線をおかれるので、声をかけづらいというか、プライバシーに踏み込めない雰囲気です。対面相談や保健指導していても『SNSで調べます』『後で検索するから大丈夫』『出産経験のある友達に聞けばいいから』と言われることがあります。でも、せっかく専門家が目の前にいるのだから、もっといろいろ聞いて活用してもらいたいです」

――助産師をうまく「活用する」には、まず勇気を出して疑問や不安を伝えることからですね。

「どんな小さなことでも、心配事があれば声に出してみてください。必ず対応します。健康に関することだけでなくても、例えば経済的なことでも、望まない妊娠でも、なんとか解決する手立てはあります」

――特に、総合病院の強みは、チームでその方の課題に対処できることです。管理栄養士、ソーシャルワーカー、赤ちゃんに何かあれば小児科医、といろんな専門家がお母さんをサポートしてくれます

同愛記念病院

(第2回、第3回に続く)

(同シリーズ第2回、第3回は著者記事一覧よりご覧ください)。

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

岡本 聡子さんの記事一覧 →