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妊娠したかも……中絶? 出産? 赤ちゃんにも母体にも幸せな選択とは

妊娠したかも……中絶? 出産? 赤ちゃんにも母体にも幸せな選択とは

まさか妊娠……? そんな時こそ、落ち着いて考えよう

自宅で男児を出産後、適切な保護をせずに死なせ、遺棄。
空港内のトイレで女児を出産後、殺害し公園に遺棄。
商業施設のトイレで男児を出産直後に殺害。

後を絶たない、痛ましい事件。

彼女たちの多くは、妊娠がわかったとき、どうすればよいのか、誰に相談すればよいのか、何もわからなかったのかもしれません。

実際、コロナ禍の長期休校中、「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を運営する熊本市の慈恵病院に寄せられた中高生からの妊娠相談は、過去最高だったそうです(https://www.asahi.com/articles/ASN5D4J68N5DTLVB006.html)

自分自身や家族、知り合い。望まない妊娠は決して他人事ではありません。取返しのつかない事態にいたる前に、何ができるのかをまとめてみたい。そう、思いました。

時間内なら緊急避妊

まず、避妊なしで性行為をしてしまった場合そもそも望まない妊娠を避けるための方法として、緊急避妊ピルまたは緊急避妊リング、という方法があります。いずれの方法も安全性が確立された方法ですが、性行為後72時間又は120時間以内である必要があり、医師による処方が必要となります。

中絶って必ずできるの?

上記の方法をとることができず、結果として望まない妊娠がわかったとき、考えられるのが「人工妊娠中絶」です。
2018年の日本の中絶件数は約16万件(平成30年厚生労働省調べ)。年齢が低いほど、中絶割合は高くなります。

けれど、中絶は必ずできるわけではありません。まず、母体保護法に定められた以下の2つの条件を満たす必要があります。

①妊娠の継続や分娩が、その女性の身体的又は経済的問題によって、健康を著しく害するおそれがある場合
②暴行や脅迫によって望まない妊娠をした場合

その上で、医師が本人及び配偶者の同意を求めることになりますが、例外として

配偶者が①死亡、行方不明になっている場合、②意思表示できない場合、は本人同意のみでよく、性暴力を受けたケースもこの例外にあたります。ただし、未成年者の場合は保護者の同意が必要となる病院がほとんどです。

次に、法律で定められた妊娠22週未満という、中絶期間内である必要があります。

妊娠初期(妊娠7週~11週6日まで)は日帰り手術で費用は15~20万円程度。

妊娠中期(妊娠12 週~21週6日まで)は通常2~3日の入院が必要で、費用は30~60万円程度。

中絶の時期は早い方が身体への影響は少なく、術後も適切に診察を受けていれば、将来の妊娠についてあまり心配はいらないそう。22週を過ぎると、出産するしかありません。いずれにしろ、中絶には条件があり、少なくない費用がかかることがわかります。

中絶したい でも親に妊娠したことを話せない……

もしも、未成年者で「いきなり親には言えない」という場合は、信頼できる学校の先生や、スクールカウンセラーなどに相談する方法もあります。

ネット上にも妊娠の相談をしているサイトがあります。「にんしんSOS」や「東京都 妊娠相談ほっとライン」「産婦人科オンライン」など、信頼できる運営母体のサイトを選びましょう。

きちんと中絶できても、実は多くの女性が「胎児に申し訳ない」といった自責の念にさいなまれたり、無気力や不安に襲われたりすることが多いのだそう。上記のサイトはこういった状態の相談も受け付けてくれます。1人で抱え込まないことが大切です。

生んだけれど、とても育てられない場合は?

「中絶期間が過ぎてしまった!」「中絶はしたくない……」

でも、家庭環境や経済的理由で赤ちゃんを育てることができない場合もあるでしょう。そんなとき、どうすればよいのでしょうか? この場合は次の2つの選択肢があります。

①赤ちゃんを望んでいる夫婦に子どもを育ててもらう特別養子縁組

特別養子縁組は、子どもが幸せな人生を送るための縁組制度。実親との親子関係を断ち、養親と新しい親子関係を結ぶため、戸籍上も「長男」「長女」など、実子と同様の記載がなされます。

②一定期間、里親や乳児院に預ける

里親というのは、実親の代わりに一時的に子どもを預かって養育する制度。里親と子どもに法的な親子関係はなく、親権も実親が持ちます。実親の状況に応じて、子どもは里親宅で一定期間暮らした後、実親の元に戻るか、18歳になって自立するまで里親と一緒に暮らします。

何らかの理由で親との生活が困難な乳児を預かる施設として、乳児院があります。乳児院は地方自治体、社会福祉法人などが運営。主に0~2歳ほどの年齢の子どもたちが入所し、親元へ戻ったり、里親に引き取られたり、児童養護施設へ入所したりします。

厚生労働省によると、生まれた家庭で育つことができない「要保護児童」は2018年度で約44000人。里親などに委託された子どもは約7500人。特別養子縁組となると、成立件数は624件に留まります。子どもの幸せのためには、できる限り家庭と同じ環境で育ててあげたい。心から子どもを育てたいと望む夫婦のもとで、1対1の愛情を注いでもらうことのできる特別養子縁組制度の活用が、より広がればよいのにと感じます。

けれど、1人で妊娠を抱え、罪悪感や迫ってくる現実に苦しんでいる女性には、上記の制度について考える精神的余裕はそもそもないかもしれません。そんなときは、すでにご紹介した「にんしんSOS」「東京都妊娠相談ほっとライン」や「NPO法人Baby ぽけっと」などが相談に乗ってくれます。必ず、頼ることのできる居場所はあるのです

望まない妊娠をなくすため、大人の役割は?

今回記事を書くためにいくつもの文献を読み感じたのは、「なぜ、母親一人が苦しみ、責めを負わなければならないのか」という、やり場のない怒り、無力感。本来、妊娠・出産そして生まれてきた赤ちゃんは「望まれる」ものでなくてはならない、ということ。

では、「望まない」妊娠をなくすために、何が必要なのか? 私はその一つとして、学校での性教育を挙げたいと思います。数多くの性教育講演を実施してきたNPO法人ピルコンは、性行為や避妊の方法について具体的に教えることで、性知識だけでなく自分も相手も大切にしよう、という意識が芽生えるといいます。

若者が、恋愛でも勉強でも豊かな時間を過ごし、次につなげていく。そのために正しい知識を教えるのは大人の責任なのではないでしょうか。

【参照サイト】

2020年5月12日・朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASN5D4J68N5DTLVB006.html

日本産婦人科医会・緊急避妊について
https://www.jaog.or.jp/qa/youth/jyosei200122/

平成30年度厚生労働省「衛生行政報告例の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/dl/kekka6.pdf

日本産婦人科医会・人工妊娠中絶ができる条件
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa5/

Medical DOC.
https://medicaldoc.jp/column/abortion-surgery-cost/

日本産婦人科医会・人工妊娠中絶手術後の、からだへの影響についてや将来の妊娠について
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa7/

一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク
https://zenninnet-sos.org/contact-list

東京都 妊娠相談ほっとライン
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/sodan/ninshin-hotline.html?utm_source

産婦人科オンライン
https://obstetrics.jp/

厚生労働省・特別養子縁組制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html

厚生労働省・里親制度について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/syakaiteki_yougo/02.html

厚生労働省・社会的養護の施設等について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/01.html

厚生労働省・社会的養育の推進に向けて
https://www.mhlw.go.jp/content/000784817.pdf

NPO法人Baby ぽけっと
https://babypocket.net/

NPO法人ピルコン
https://pilcon.org/

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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