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不妊治療の保険適用で、体外受精がデフォルトとなるか

不妊治療の保険適用で、体外受精がデフォルトとなるか

2022年度から体外受精が保険適用になるかも!?

厚生労働省の調べによると、不妊の検査や治療を受けたことがある/現在受けている夫婦は18.2%。しかし現在、不妊治療は一部を除いて保険適用の対象外です。不妊治療の中でも、費用が高額な人工授精や体外受精や顕微授精などは、保険適用の対象ではありません。

国は、高額な費用負担を軽減するために、2004年から一部の不妊治療への助成を開始。その後少しずつ拡充され、さらに2020年度の制度改正で、特定不妊治療への助成を1回30万円、1子ごとに6回まで(40歳以上43歳未満は3回まで)に拡充。所得制限も撤廃しました。

そして、さらに大きな動きがありました。

7月21日、厚生労働省の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は、2022年4月からの、不妊治療への公的医療保険の適用範囲を検討する議論を開始したのです。

保険対象となるのは、有効性や安全性が確認できた治療法とすることを基本方針とし、どの治療法を保険の対象とするかは、日本生殖医学会が6月に公表したガイドラインを参考に決定されるようです。

年末までには対象範囲が決定するとのことですが、ガイドラインでは、「体外受精」「胚培養」「勃起障害による男性の不妊症の阻害薬」などが「強く勧められる」とされており、保険適用になる可能性が高いと考えていいでしょう(これが決定すれば、前述の国の助成金は終了します)。

もし、体外受精が保険適用になるとしたら、従来の不妊症治療は大きく変わるかもしれません。

タイミング療法、人工授精の段階を飛ばして体外受精から?

現状の不妊治療は、

①タイミング療法
基礎体温から排卵日を予測して性交のタイミングを指導する治療法

②人工授精
排卵の時期に合わせて、子宮の入り口から管を入れて精液を子宮内へ直接注入する方法

③体外受精
十分成熟した卵子を排卵前に取り出し(採卵)、精子と受精させ(媒精)、培養した受精卵(胚)を子宮内に戻す治療法

を①→②→③の順で行う、3ステップの治療が一般的です。

しかし、NAC(Natural ART Clinic)日本橋の理事長、寺元章吉さんによると、「タイミング法と人工授精でおおよそ1年かかる。年齢が上がるほど成功率は下がるので、当院ではタイミング法と人工授精の有効性を速やかに判定し、無効と考えられる方には時間を無駄にしないで 体外受精を開始することをすすめています」とのこと。

実際、株式会社ninpathの調査によると、不妊治療によって妊娠した人の7割が体外受精や顕微授精を行っており、タイミング法や人工授精で妊娠した人は2割程度という結果が出ています。

また、妊娠率は35歳を過ぎると下降していくので(日本産科婦人科学会ARTデータブック)、確かに1日も無駄にすることはできない気がします。

体外受精にかかる費用は、トータルで50万円前後~。これが保険対象となるのなら、最初から体外受精を選択するケースも増えるかもしれません。

日本は、世界的にみても、不妊治療の成功率が低い国です(2017/04/26東洋経済オンライン記事より)。それは、治療を始める年齢が遅いことも一因かもしれません。厚生労働省が日本産科婦人科学会会ART databook(2017)を基に作成した資料によると、不妊治療をしている患者の年齢構成が、アメリカやフランスなど欧米諸国が35歳未満であるのに対し、日本は40代が最も多くなっています。

少しでも早く、より成功率の高い方法を選ぶことが、不妊治療の成功の鍵といえそうです。

体外受精の自然周期法と卵巣刺激

体外受精は、成熟した卵子を採取(採卵)し、同日に採取した精子と受精させて、受精卵を育て(胚培養)、細胞分裂を開始した受精卵(胚)を子宮内に移植します。

採卵の方法には大きく二つあります。一つは、自然周期を利用する方法、もう一つはホルモン剤を投与することによる卵巣刺激(排卵誘発)法です(卵巣刺激法には、使用するホルモン剤等によって、さらに細かく分類されます)。

卵巣刺激法は、自然周期法にくらべ、採取できる卵子の数が多い、採卵日をコントロールできるなどの利点があります。しかし、副作用が皆無ではありませんし、費用も自然周期法よりも高額になるなど、どちらの方法にも一長一短があります。

しかし、寺元さんは「基礎体温をきちんと測って、排卵の周期を知ることで、自然周期法でも排卵の時刻を正確に知ることができ、採卵の精度を高めることが可能です。自然周期法のほうが良好な卵子を採取できますし、それだけ体外受精の成功率も高くなります」と言います。

体外受精をさせるためには、良好な卵子を採卵することも重要ですが、良好な精子も非常に重要です。寺元さんによると、「体外受精に何度も失敗しているケースでは精子に問題があることが多い」のです。NAC日本橋では、男性不妊の治療にも力を入れています。無精子症の男性からも運動精子を複数回にわたって採取できるPESA法という治療を行う数少ないクリニックでもあります。

「不妊は病気ではありません。どこかに不具合があって自然な妊娠を妨げているだけ。原因をつきとめて改善すれば必ず妊娠できます。あなたの子どもになる卵子は必ず眠っている、精子も必ずいる。それを見つけるのが私たちの仕事です」(寺元さん)

病院に行く前に必ず基礎体温表をつけよう!

不妊治療をするなら、1日でも早いほうがいいのですが、病院を訪れる前に、必ずしておいてほしいのが基礎体温をつけること。便利なアプリもありますが、寺元さんのおすすめは、書き込み式の基礎体温ノート。基礎体温からは、月経周期や排卵日、ホルモンの状態なども知ることができます。

もし、既になんらかの妊活や不妊治療を受けているなら、その履歴、行った治療法、使用した薬も書き込みます。それによって、何がうまくいって何がうまくいかなかったかがわかるからです。

できれば、2~3か月分のデータがあるといいので、明日からでもすぐに測定を始めましょう。

病院に行く前に、不妊について相談をしたい場合は、全国の不妊専門相談センターの一覧を厚生労働省が公開しています。ぜひ参照してみてください。

お話を聞いた人>

寺元章吉さん

できる限り薬や注射を少なくし、心身に負担のない方法で、限りなく自然に近い状態で体外受精をおこなうクリニック、Natural ART Clinic 日本橋 理事長。

NAC日本橋受診の基礎知識 これから不妊治療を始められる方へ – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nCr6zx-bHag&feature=emb_logo

石井 栄子

石井 栄子ライター

3児のママとライターを両立してン十年。『Hanakoママ』では3歳〜5歳向けの「3・4・5」を担当。ようやく子どもたちの手が離れ、趣味に飲み会にと羽を伸ばし中。今ハマっているのはオンライン英会話。もう英語で話しかけられても怖くない!のがささやかな自慢!Photo by Natsuko Toida

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