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【イギリスの妊娠・出産②】出産翌日までにほとんどが退院。自宅が一番リラックスできる場所

【イギリスの妊娠・出産②】出産翌日までにほとんどが退院。自宅が一番リラックスできる場所

英国王室のキャサリン妃が出産後すぐに退院した映像を観て、びっくりしました。しかも自然分娩で、すらりとしてメイクもばっちり! 同時期に出産してぼろぼろだった私は、特に打ちのめされました。

彼女が特別なのでしょうか?
実は、イギリスでは出産当日か翌日には、皆退院します。「最高にリラックスできるのは自宅」という考え方と、すぐに退院してもやっていける仕組みがあるからです。

地域にあるチルドレンズセンター(公立)での親子遊び(ハーバートひとみさん提供)

出産する場所、体勢は妊婦の好きなように

イギリスでは、妊娠34週に入ってから産む場所を決めます。
自宅で出産する人の割合の全国平均は2%強。ロンドンでは年平均4%程度(注8)。

おざわさんによると
「国民保健サービスであるNHS(注2)としては、健康な妊娠をしている女性は、自宅か院内助産院で、助産師だけに支えられてお産をすること、つまりお産が始まったとき、問題がないかぎり産科病棟にはいかないことを勧めています。

2011年の調査により、出産環境がお産に大きな影響を与えることが分かりました。病棟ではなく自宅や院内助産院での出産の方が時間は短く、医療的介入が必要になることも少ないと示されました(注1)」

産婦人科病棟(ハーバートひとみさん提供)

驚くことに、イギリスの病院には分娩台がありません。
出産の姿勢は自由です。日本では「フリースタイル」と呼ばれていますが、これは和製英語。分娩台による制限がないので、皆さん好きなように過ごします。

イギリスでは、自分好みの出産ができそうでワクワクしますね。

イギリスの公立病院院内助産院。分娩台は無く、好きな姿勢で出産できる(おざわじゅんこさん提供)

出産翌日までに退院

通常イギリスでは、出産当日か翌日に退院します。明け方に出産すれば、夕方に退院することも可能です。帝王切開の場合は2泊程度。

一番退院が早いのは、自然分娩だそうです。
イギリスの公立病院で助産師として働くおざわじゅんこさんによると、
「自然分娩は、鉗子や吸引、会陰のケガそして出血多量になることが少ないからなんです」

退院翌日には、助産師が自宅を訪問し、ママへのケアを行います。そして、継続的な母乳育児サポートが必要かなどを見極めます。産後5日目に行われる、新生児スクリーニング検査や体重測定ももちろん自宅で。当然、検査や訪問を断ることもできます。

これまでのところ、イギリス人は自宅で過ごすのが大好きなように思えます。イギリス人は、自宅の改造や庭いじりが大好きな国民、とも言われています。

私などは「病院にいる方が、いつでも医療を受けられるし、安全安心」と考えてしまいますが……。

公立病院の有料個室(アーベルさん提供)

おざわさんは。
「身体や心が一番休まるのは自宅。病院や他の施設では、無意識に刺激を受けて落ち着きません。家の方がリラックスできますし、回復も早まります。身体はどう感じるか、身体の声をきいてください」

2020年にイギリスで出産した日本人ママ・こころさんによると、初産でも出産当日退院することがあるそうです。
「母子共に問題が無かったので、『産後3時間以降なら、帰っていいよ、帝王切開じゃないから車の運転もOK! 母乳育児に不安なら産後病棟に移動して、24時間まではいてもいいけど』と言われました。

『いやいやいや、さっき出産して会陰縫われたとこですけど! 赤ちゃん、まだふにゃふにゃですけど!!』と、びっくりしました」

産後4時間で出された食事。税金でまかなわれているので、質素(ハーバートひとみさん提供)
病院での食事、有料個室なので少し豪華?(アーベルさん提供)

さらに私が驚いたのは、赤ちゃんの沐浴についての考え方の違いです。

おざわさんは続けます。
「最近の母乳育児支援の調査の進歩により、イギリスでは、沐浴はなるべくしないほうが良いとされています。誕生10日目以降になれば赤ちゃんを洗ってもいいけれど、それまでは洗わないで、と指導しています。

羊水をまとい、バリア機能や母親の胎内の匂いに包まれていることに大切な意味があるのです。その後も、沐浴は1週間に1回程度まで。特にイギリスは硬水のため、皮膚が荒れやすいという事情もありますね」

生まれてすぐの健康確認(ハーバートひとみさん提供)

地域での産後サポートも充実

イギリスでも産後うつは大きな問題です。5人に1人がかかり、そのうち10人に1人は投薬治療や専門家の介入が必要です。

産後うつは女性本人も苦しみますが、その子供の発育に大きく影響を及ぼすことが立証されており、イギリスではそこを視野に入れたアプローチがなされています。 

NHSが関わる地域のカウンセリンググループでも相談ができ、地域かかりつけ医の予約も優先してとれるなど、国レベルで重点的に対応しています。さらに、ママだけでなく、パートナーの産後うつも対象です。

「チルドレンズセンター」 は医療施設ではありませんが、日常生活の中で助産師に相談できます。これは日本での公民館や児童館のような位置づけです。

毎日、赤ちゃんの体重計測、予約なしの授乳相談など、赤ちゃんと保護者向けサービスたくさん行われています。

育児中の仲間づくりがしやすく、ママ達パパ達を支えています。

チルドレンズセンターでは毎日様々な企画が行われている。(ハーバートひとみさん提供)

産後にこそダイヤを!

産後はホルモン不安定になり、感情の揺れが激しくなりますよね。産後こそ、夫婦間のコミュニケーションを。

生後1週間、初めての外出(ハーバートひとみさん提供)

イギリスで、助産師や保健師が出産直後のカップルによくするアドバイスはこちら。

「産後、身体はボロボロ、イライラする妻。そんな時こそ、夫は妻にチョコや花を贈り、抱きしめて労い、ダイヤモンドを贈りましょう。この時期に『夫に大切にされた』という記憶は一生残り、夫婦の絆を強めてくれます」

確かに結婚10周年よりも、産後にダイヤを贈るほうが効果的な気がします!

(文:岡本聡子)

(第3回に続きます。第1回はこちら(筆者記事一覧https://hanakomama.jp/writer/okamoto-satoko/)から)

(注1)NPEU(The National Perinatal Epidemiology Unit):https://www.npeu.ox.ac.uk/birthplace

(注2)NHSとは:国民保健サービス(National Health Service, NHS)。イギリスに6か月以上滞在する場合、条件を満たせば誰でも、極めて低額もしくは自己負担なく医療サービスを受けられる。

監修・取材協力:

おざわじゅんこさん

岡山県出身。1998年 文系大学卒業。イギリスへ渡航後、2007年助産師資格取得。以来 Imperial College Healthcare NHS Trust で助産師として勤務。 現在は時短で継続ケアチームに所属。特定妊婦の継続ケア(自宅出産も含む)を助産師チームで進めている。 目下の目標は、医療界のヒエラルキーをなくすこと。 夢は『世界平和』。

西川直子さん

イギリス在住。日本で助産師として勤務後、駐在に付き添い、タイ、イギリス、スペイン、イギリスと10年間を海外で過ごす。現地での日本人ママ向け子育て支援を経て、オンラインで世界中のママ達をサポートするfacebookグループ『世界のママが集まるオンラインカフェ(せかままcafe)』立ち上げや、「助産師オンライン24時間マラソン」を主催。

(この記事は、2021年9月1日時点のデータに基づいて執筆しました)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。oyakobousai@gmail.com facebook.com/okamotosatokochina

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