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【フランスからの報告】個人主義の国フランスでは、発達障害も個性の1つ。だが最近では…?

【フランスからの報告】個人主義の国フランスでは、発達障害も個性の1つ。だが最近では…?

発達障害という用語は1963年にアメリカ合衆国(以下U.S.A.)でつくられ、日本でよく耳にするようになったのは2005年に「発達障害者支援法」が制定されてからのこと。
2012年、U.S.A.では9%、日本では6.5%のADHD(発達障害の1種。注意欠陥&多動症)が申告されていたが、フランスでは僅か0.5%(Psychology Today)。
フランスにADHDの児童が少なかったのではなく、単に認識度が低かっただけのこと。

発達障害にも様々な種類や症状がありますが、今回は主にADHDについて、フランス事情のごく一部分をリポートします。

第28回 効果あるかな? ADHDの子ども達が集中しやすいスポーツ

フランスでの認知が遅れた理由

なぜフランスが「発達障害」への認知に遅れたか。
それには大きな3つの要因がある。

①「皆それぞれ違って当たり前」の国

よく「国産チーズだけでも365種以上」とフランス人は誇るが、厳密に365種あるということではなく、毎日違うチーズを食べられるほど数えきれないほど種類が多いという意味。そしてそれは「チーズと同様。人もそれぞれ違って当たり前」という形容にもよく使われる。
世間一般のいわば“常識“がそうだと「うちの子は他の子と違う」「成長速度が遅い」と感じても、まず「基準なんてないのだから、それで当たり前なのかも」と親は思う。
そして保母や教員、祖父母など親族や近所の人達にも「私達大人と同じで子どももバラバラ。それぞれ違って当たり前」と言われ、むしろ気にする親は「神経質」「子どもを型にハメようとしている」と非難される傾向も強かった。

②「最初から完璧なんてあり得ない」国

新車を購入しても、完璧に整備され納車されるとは限らない。
「乗りながら修理していけばいい。不備が見つかったら連絡ください」とディーラーが公然と言う国だ。これには私も移住当時、かなり驚かされた。
子どもについても同様。初等教育で「記憶能力に欠けるかも?」「吃りや発音発声に問題があるかも?」「いつまでたっても鏡文字を書き続ける」など諸問題を教師が見つけると、授業時間内に抜け出しての通院を教育委員会から認められ、数年かけて専門家のもとで治療や訓練をする(この場合の費用は教師からの申請なので国費で賄われる)。
つまり、同級生と同じ教育内容やスピードを必ずしも全員が強いられない。
「個々に修正や調整をしながら大きくなっていくのが“成長“であり“教育“」という論理が基本にあるため、他と学習能力や速度が異なることを「発達上の障害」と捉えることへの違和感が、社会全般においても強すぎた。

③乳幼児時期から「集団検診」がない国

日本では1歳児半や3歳児検診での発達障害の判明率が高いというが、フランスには子どもの集団検診制度がない(大人の場合は、職場により集団検診がある)。
定期検診は小児科医や内科医、また更には歯科や婦人科などについては20歳まで無償で受けられる。しかし、それらはすべて個人が自分のかかりつけの医院に行くもの。集団検診ではないので親には他の子どもとの比較を健診時にする機会がない。
「何か違う」とは感じながらも「何が違う」のかまでは分からず、グレーなまま見守るか、自己判断するしかなかった。

これらが大きなネックとなり、日米から情報は入ってきていたものの、社会全体が聞き流し、見過ごしていた。
その「無知」による悪影響も以前は強く、とりわけ今の70歳以上の舅&姑世代には「躾のせい」つまり「親のせい」と嫁や婿を咎める風潮もあり、育児ノイローゼに陥る親達も多かった。

2019年 発達障害(ADHDを含む全般)に国は予算3000億円

2015年。ようやく国の保健機関が発達障害に注目。力を入れ始め、それまで0.5%しかいないとされていたADHDは3.5〜5.6%と調査結果を変え「やはり認知&認識されていなかっただけ。日米と同じレベルでADHDはフランスにもいた」ことが判明。

そして病気として認知・認定されると、たちまち「精神ケアも大切だが、まず必須なのはお金!」とシビア&迅速に動きだすのが、フランスならでは!

2019年には発達障害児への予算3000億円を組み、今も日常上、さまざまな方策を試みている(education.gouv.fr。日本は令和3年時点で7億円弱/厚生労働省)。

例えば……、

1)初等教育(幼稚園&小学校)までは、必要な児童がいる場合は、クラス内に専門の補助教員を教育委員会から派遣。仮に1名のみであっても授業中、教室内で、その児童の速度や能力に則した個別指導を行う(「人はそれぞれ違って当たり前」の“常識“は子ども達にも浸透しているため、このことで他の子どもが劣等感を与えたりという差別やイジメは生じない)。

2)そのための補助教員も各教育委員会が育成。

3)上記②のように専門家や専門医での治療&訓練は国費で推奨。平日の日中であるため親が仕事などで子どもの送り迎えができない場合は、申告すればタクシーも無償で手配可能。親や家庭の事情による子どもの治療不可は、可能な限り行政が防ぐ。

4)それら個々への指導をしても治癒できない場合、子どもはどうしても学業の遅れから自己肯定感が低くなる。それは、いわゆる「発達障害の2次障害」であり、学年が上がるほど強まってしまう傾向が強いので、中学校からは専用クラスを全国の各公立校に設置。

5)専門医やその専門医から処方される薬も国保&任意保険でカバー。

6)3週間連続滞在による「温泉療法」も国保&任意保険でカバー(次で詳細を説明します)。

ADHD向け「温泉療法」

©️Chaîne  Thermale du Soleil-Molitg-les-Bains
ADHDには「筋肉や関節が巧く噛み合って機能せず、そこから多動になったり、思うように身体が動かずイライラして集中できず不注意になっている場合も多々」であることから、整体の効果は大きいともいわれている。また最低3週間という長期療養の間、飲泉療法や食事療法により糖分や添加物の摂取改善もされ、それを同行する親も共に体験し学ぶため、帰宅後の食生活改善にもつながることが多い。

フランスは「肥満」や「心臓病」「喫煙による呼吸器疾患」、「アトピーなどのアレルギー体質改善」や「不妊治療」などにも保健省が「テルマリズム(温泉療法)」を推奨。
全国にある指定温泉地に連続3週間滞在して療養することが勧められている。

費用は国保で65%、任意保険で35%が払い戻されるが、それには「発達障害」も適用。知的教育面だけではなく、精神面と身体面への治療にも有効ということで、全国に6箇所「発達障害治療」に適した温泉地を指定している。

ただし最低3週間連続で同じ温泉地で療養しなければ補償は受けられないため、多くのファミリーが夏休みを利用。
3週間、自然豊かな温泉地で共に過ごし親子の信頼関係を育むという精神面だけではなく、整体師の施術による「身体バランスの調整」や栄養士指導による「食生活の改善」、また飲泉による「身体の7割を占める水分の入れ替え&ミネラル浄化」などにより、効果を認める親子が多い。

AHDH向きかもしれない? 遊びやスポーツ

ここからは裏付けになる資料やデータはなく、単に「参考になるかもしれない」アイデアであることをご了承ください♬

夏休みの間、アルプスのリゾート地で子ども向けスポーツクラブ(8〜18歳)のコーチをしている息子(20歳)が、去年は3名、今年も既に今のところ2名、計5名の親から「うちの子は多動症であることで悩んできたのだけれど、ここで初めてこんなに長時間集中している姿を見た!」と喜ばれた。
5名中、2名はアーチェリーの最中に。1名はアスレチック。2名はクライミングの時に言われたという。

パリ在住の10歳のルイのママは、それまであらゆることにトライ。
「専門医には3年以上、毎週1回通っている。医師のアドバイスでヨガや瞑想をさせたり、日本人に柔道や習字も教わったりしてみた。静かにしないと落ちてしまう乗馬も試したけれど、数回後にはよそ見をはじめて“危険“と言われ諦めた」
それが今回、1時間以上もの間、アーチェリーにずっと集中。驚いたという。

「静かにさせようするのではなく、集中しないとできないから必然的に静かになる。その方向の方がいいのかも?」
と息子は思い、クラブが終わってから試しにルイをスラックラインに誘ったところ、日が暮れるまで挑戦。さらに両親を驚かせた。
スラックラインは一瞬でも集中力が切れると落ちてしまう「遊び」だ。

「そういえばスキージャンプのチームにも、小さい頃は多動症だったっていう仲間が数名いた」
スキージャンプはスタートしたらレールから外れられない。さらにはレールが終わる瞬間に踏み切って跳ぶのみ。選択の余地がない。
「そこからは逃げられないし、集中しなければ落ちて怪我をする。言われなくても静かにせざるを得ない。そんな強烈な『制約』『リスク』を子ども自ら感じられるスポーツを選ぶのも一つの手かも?」
というのが息子の見解だ。

そこで運動教育学の大学講師でもあるスポーツクラブのチーフに「静かに集中せざるを得ない多動症の子ども向けかもしれないスポーツ」をいくつか挙げてもらった。

●アーチェリー

「アーチェリー」には、子ども用スポーツクラブに参加した多動症の親達のほとんどが「これほど長時間、集中した我が子をみたことはない」と感嘆するという。バイアスロンやレーザーゲームなど射撃でもいいのかもしれない。ただアーチェリーの場合、腕力も使用。引いたポジションで息を止めるという、その静と動の連動が、とりわけいいらしい。

●アスレチック

ハーネスを使っての「空中系アスレチック」。安全は確保されながらも、子どもにとっては足元の不安定さから集中せざるを得なくなる遊び。

●クライミング

「トップロープ・クライミング」は壁と向かい合うことで、大人にとっても「集中することで頭脳の疲労回復になるスポーツのひとつ」と言われている。ロープは安全を確保するだけではなく、多動症の子どもには「繋がれることによる制約訓練」も与えてくれる。そして「ただ、ひたすら上へ上へと頂点を目指して昇る」というシンプルさも「散漫さの軽減」に繋がるという。

●スラックライン

平衡感覚や脚の筋肉を発達させるため、近年、さまざまな競技のトレーニングにも愛用されている「スラックライン」。子ども達も夢中になりやすい、集中力育成には最適な遊び。

●スケートボード

オリンピックで人気が急増した「スケートボード」も、ちょっとでも気を抜くとバランスを失う「集中できる遊び」のひとつ。しかもどの国のスケートパークでも、ボーダー同士は互いにリスペクトし合い、それこそ「空気を読む」感じで各々スタートを決める。「協調性」でも悩むことが多い発達障害児の自然療法につながるかもしれない。最初は難しいので、このような初心者用スケートボードで慣れるのもいい。

●スキー・ジャンプ

フランスよりも日本の方が盛んな「スキー・ジャンプ」。あまり知られていないが、冬だけではなく夏も盛んでほぼ一年中、長野や東北、北海道では練習。幅広く選手を集めるために、他府県の子ども達に気軽に体験もさせてくれるクラブも多い。「感情の起伏を抑えられない」部分を補正できるスポーツとも言われている。

●キッズバイク

補助輪つき自転車から自転車を覚えるのではなく、近年はペダルなしの「ストライダー(=キッズバイク)」から始める子どもがフランスでも増えている。バランス感覚や脚力をつけるのに良いとも言われているが、脚を動かし続けないといけないので、近所に住む多動症の子どもをもつ親はコレを活用。放り出してどこかに走っていってしまうこともあるけれど、補助輪つき自転車よりかなり長い時間、乗り続けるそう。

習い事に限らず、例えば少し高さのある丸太の上や道端のガードレールや塀(へい)、体育館にある平均台などを歩かせるのもいい。

余談だが、息子は多動症ではなかったものの勉強のスピードが遅く、よく休み時間まで教室に残って問題を解いていた。
「頭の回転がゆっくりなのか、じっくり考えるタイプなのだろう」と私は楽観していたが、ある時、担任教師に「それは違う。集中力に欠けているからよ」と厳しい口調で指摘された。

とはいえ、どうやったら集中力をつけられるのかがわからず放置していたところ、11歳でスキージャンプを始めると、途端に居残り勉強が不要になった。

教師から指摘されながらも、内心どこかで「集中力と勉強速度の関係」を信じていなかった私はとても驚いたものだった。

祐天寺りえ

祐天寺りえライター

1994年フランスのスキー場(メリベル)に移住。小学校勤務(給食、教室清掃、スクールバス添乗など)、執筆業、鍼灸&指圧&アロママッサージなどを生業とする3子(20&21&26歳)のシングルマザー。著書「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て(小学館)」「食いしん坊の旅(パラダイム出版)」「フランスだったら産めると思った(原書房)」facebook.com/rie.yutenjiosaki

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