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【フランスからの報告】フランスのスクールバスはなぜ安全か

【フランスからの報告】フランスのスクールバスはなぜ安全か

今年だけでも日本では、子どもが乗車中のスクールバスに乗用車が追突し、8人が負傷(横浜)。また5歳児がスクールバスに置き去りとなり、9時間閉じ込められ死亡(福岡)という痛ましい事故が起こり、スクールバスの安全性について問題になった。

フランスでは幼稚園から高校まで、全国で約3万台のスクールバスが走り、21万人以上の子ども達が利用しているが、意外なことに死亡&人身事故数は少ない(車やオートバイがバスに接触する事故はある)。
それはここ20年、国が施行し強化した安全対策の成果だという。

どんな対策がされているか。私自身、村の幼稚園&小学校に勤務。「スクールバスの添乗」にも16年間かかわっているので、今回はその詳細をリポートします♬

第31回 スクールバスの安全対策~フランス編

国(行政)による「安全のための重要ポイント」4点

幼稚園からが義務教育のフランスでは、その大半は公立で小学校との併設のため、スクールバスも幼稚園&小学校用に私営バス会社から手配。学校所有のバスではない。

中学や高校用もあり、また地域によっては幼稚園から高校まで一緒の場合もあるが、今回は幼稚園&小学校用スクールバスについてのみ書くことにします。

まず国(=地域行政)が管理している重要ポイントは、以下4点。

①全席にシートベルトの設置
②乗降に安全な停車位置の設定
③ドライバーへの定期研修(有給)
④添乗員への定期研修(有給)

基本的には「幼稚園児6人以上に1人の添乗員」が義務付けられているが、私の働いている村では園児が1人、他は全て小学生という時でも、全員の安全のために添乗員が同乗している。

添乗者研修

フランスの企業研修は有給(労働法により近年そうなり、そのため被雇用者は以前よりも喜んで受講するようになった)。楽な服装や姿勢で、飲み物も飲みながら受講できるので、写真の様に時間が経つにつれて机の上には紙コップや瓶が散在しはじめる。

添乗者はベテランであっても、2〜3年に1度は研修を受講。
地域の5〜6校の添乗員が集められ、国から派遣される「スクールバス安全指導会社」の講師によって講義される。

シートベルト

ドア付近は、この3点式シートベルト(他の席は腰の部分のみ)。3点式の場合、胸の部分にくるベルトは息苦しくなるので、背中に回してもOK。

シートベルトは全員着用が義務。2015年からはフランス全土、全スクールバスにシートベルト設置が徹底された。
添乗員は子どもの着用を必ず確認してから、自分もシートベルトを着用する。

3歳未満は、普通のシートの上にこのようなチャイルドシートの設置が、家庭での車内でも義務づけられている。各スクールバスにそれを常備するスペースはなく、また各自、毎回持参するのも不便なため(持参すれば学校にも保管スペースが必要になるため)、3歳未満はスクールバス利用は不可としている(フランスの幼稚園は「その年、3歳になる子どもから就学が義務」。つまり新年度が始まる9月から12月の間が誕生日の子どもの場合、まだ3歳未満。誕生日が来るまではスクールバスは利用不可)。

幼稚園児への配慮

幼稚園児への添乗員の心得

①ドア付近の2列には、極力座らせない(事故の際、危ないため)
②後部も避ける(寝入ってシートに倒れ伏してしまうことが多く、見落として置き去りのリスクが高くなるため)
③通路側ではなく窓側に座らせ、非常時に備え、一番小さい子の隣(通路側)に添乗員が座るようにする(バスが横転した場合、横転して上になった窓際の子どもがバス内で反対側に投げ出されるケースが多い。その落下を隣席から守るため)
④子どもが全員下車した後に必ず、忘れ物がないかを確認(置き去り防止にもなる)

「誰の責任!?」をとても重視するフランス人達

この「スクールバス安全研修」で必ず受講者達からは質問。講師からも説明されるのが、各項目について「これは誰の責任であるか?」。

責任には、大きく分けると以下のような区分けがされている。
①「運転と車体」に関してはドライバー
②「子ども」については添乗員。但し添乗員がいない場合はドライバー
③「乗車前、降車後のバス外」については親(その責任や過失問題を明確にするため、添乗員は、バスを誘導しなければいけない時や事故など特別な時以外は、バスから降りないようにする)
④「停車位置の安全確保」については国(行政)

そして「自分の責任ではない」ことになると、途端にリラックス。無責任になるのがフランス人の特徴でもある。
逆に言えば、自分の責任であることについては、かなりしっかり集中して勤める。実にオン&オフがはっきりしている働き方だな、と感心。すべてに頑張りすぎないため注意散漫にならず、子どもの置き去りミスなども生じないのかもしれないと思い、私も見習うようにしている。

ドライバーと添乗員には定期的に研修が行われ、子ども達にも学校で、警察による安全講習などがされているが、親にはまったくそういった教育の機会がないことが問題。
今後の国や行政の対策の焦点になっていくだろうとも言われている。

事故防止&事故の際の「添乗員の心得」

バスからの避難順序(横転していない場合)。緑が添乗員の位置(4名を仮定してあるが、1人の場合、どれか1つと考える)。避難順序の説明は次の写真を参照。

(降車時の事故防止)

スクールバスでの人身事故の10件中7件は、降車後に道を横切る際に起こるため
①親が迎えに来る子どもの場合は、バスの乗降口のところまで来てから、降車させ、親に確実に引き渡す。その際も前述の通り、添乗員はバスから降りないことが「バス外での責任は親」の徹底化につながる。
②親が迎えに来ない場合には(幼稚園児は親の迎えが義務)、バスが出発するまで停車場から動かないように指導し、それを守っていることを確認してからドライバーに出発して良いことを伝える。

(事故の際)

「安全確保」→「通報」→「救助」この3つの流れを念頭に置き
①まずはパニックに陥らないように、子ども達を落ち着かせる。
②状況を把握し、子どもが危険な位置にいないかを確認する。
③(場合によって)後方から車が追突などしないよう、三角表示板など停車表示器具を路上に置く。(通常これはドライバーがするが、できない状況の場合)
④安全な場所に子ども達を移動させる。
⑤ドライバーが怪我や死亡で動けないケースも想定。
自分1人でもドアを内側から手動で開けるか、また窓を壊すためのハンマーの位置、セキュリティセットの置き場所なども、日頃から確認しておく(日本の幼稚園バスなどとは違い、フランスは学校専属のバスはないため、毎日別のバスが来ることも多々。バスが変わるたびに確認しておく)。
⑥怪我人には救助が来るまで極力触れず、意識の有無を確認するために会話だけをし続けるように努める。必要に応じて、セキュリティセットにある避難防火シートなどをかけることで、怪我や不安による体温低下を防ぐ。火傷の場合は服に触れない。

①まず通路側(青)の子どもから順次、降車させる。②その後、窓側(赤)の子どもを降車させ③添乗員(緑)が1名の場合は最後に全員降りているかどうかを確認した後に降車する。

学校保険

©️AXA Assurance

フランスでは幼稚園から大学まで、就学の際に各自「学校保険」に入ることが義務付けられている(年間1人1000〜2000円)。

カバーされるのは「就学時間内での怪我」「他の子どもに怪我をさせてしまった場合の補償」「器物損害(公共物、学校備品、他の子どもの眼鏡なども含む)」「校外授業での事故や怪我」「通学時の事故や怪我」などで、つまりスクールバスでの事故、乗車前&降車後の家までの帰路での事故もカバーされる。

保険ナンバーや連絡先はクラス担任に提出。補償事項が発生すると担任は親へと同時に保険会社にも連絡するシステム。
そのため生徒間の喧嘩や事故による怪我や物損が生じても、金銭トラブルに発展することはほとんどない。

バスの横転デモンストレーション

横転を体験できるバス。ヨーロッパでこの1台だけだそう。

「シートベルトの大切さ」を子ども達に実体験させるために、フランスが作った「横転・体験バス(ヨーロッパで、この一台のみのため、欧州全土を回って講習会を開催中)」。
これを使って、小中高等学校、ドライバー、添乗員への講習会が全国で開催されている。
その講習に今月、私も行ってきた。

実際に横転した場合、上になった側にシートベルトなしで座っていると、反対側(横転して下になった側)に、身体は投げ出され、ほとんどの場合、既に割れているであろう窓に叩きつけられることを、この体験でしっかりと想像できる。

また日頃、何の気なしに見ている屋根部分についているルーフ(窓)が、その際、唯一の外への非難口になることも理解できる。

(左)左側を下に横転した状態。デモ用バスなので、ガラスが割れないように、左側の窓にはステンレスが貼ってある。(右上)最後に、もう一度、立て直すのかと、私は内心で楽しみにしてたのだけれど、横転したまま。天井ルーフから脱出するまでが講習だった。
スクールバスの座席上の棚には、安全面からコートなど衣類のみ、カバンなど重いものは置いてはいけないことになっている。それも横転した場合を考慮しての決まり。そのため、飛行機などとは違い、リュックやカバンが置けないように狭い造りに設計されている。この説明を聞くまで、私も気づかずにいた。言われてみて、バスに乗るたび注意してみると、確かにどのバスも頭上の棚はとても狭くなっている。(日本の高速バスは荷物を頭上に置けるけれど、大丈夫なのだろうか?)

親サイドからの「スクールバス・安全確認ポイント」

というわけで、幼稚園バスなどの安全確認ポイントとしては
①シートベルトが全席に装備されていて、それを子ども達は着用しているか
②停車位置が安全かどうか

さらに、その安全性について不安がある場合は「ドライバー、添乗員のスクールバス講習」を提案&お願いするのもいいかもしれない。
ちょうど今はネットによる講習会も盛んになっている時期。
地域の警察などにも協力を仰いで、希望する親も一緒に受けられるようにできたら、フランスより先行く「みんなで子どもを守る」スタイルにもなるかも?!

ここからは余談。フランスでの講習風景をお楽しみください♬

ほとんどの講習は、聴くだけの受け身ではなく、質疑応答が盛ん。そのため、例えば「リエ、今の部分、理解できた?」などと講師が言ったり、初対面の参加者同でも「ローレンス。あなたの職場ではどうしてる?」などと対話しやすいように紙に名前を自分で記入し、全員に見えるように机の上に置く。その際、名字は不要。ファーストネームのみ書くことが一般的。
マスク着用は義務。でも水やコーヒーを飲む際にはマスクをとることができるので、そのために頻繁に飲む人も多々。フランス人は今でもマスクが苦手。
どの講習でも、講習中、飲み物はもちろん、小腹が空いたら、ビスケットやナッツ類などを食べてもOK。途中でトイレのために断りなく退室する人も多々。「自分が集中できる状態」が最重要。講師の質が悪くない限り、ぼんやりしていたり居眠りしている人はおらず、皆、驚くほど意欲的に臨む。ところが、どんなに質疑応答で盛り上がっても、終了時間は厳守。参加者も講師も、あっという間に身支度を整え、帰路に急ぐところもフランス人の大きな特徴。
祐天寺りえ

祐天寺りえライター

1994年フランスのスキー場(メリベル)に移住。小学校勤務(給食、教室清掃、スクールバス添乗など)、執筆業、鍼灸&指圧&アロママッサージなどを生業とする3子(20&21&26歳)のシングルマザー。著書「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て(小学館)」「食いしん坊の旅(パラダイム出版)」「フランスだったら産めると思った(原書房)」facebook.com/rie.yutenjiosaki

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