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ひといちばい敏感な子(HSC)~「子育てハッピーアドバイス」著者・明橋大二医師に聞く(3)

ひといちばい敏感な子(HSC)~「子育てハッピーアドバイス」著者・明橋大二医師に聞く(3)

ひといちばい敏感な子(Highly Sensitive Child、以下HSC)は、5人に1人の割合で、あなたの周りにも存在します。

シリーズ累計500万部を超える「子育てハッピーアドバイス」著者であり、HSCに詳しい明橋大二医師に、学校や周囲の協力についてうかがいました。

前回記事:第1回「ひといちばい敏感とは
     第2回「ひといちばい敏感な子(HSC)を育てる

第3回 学校や周囲に、理解・協力してもらおう

ある不登校の子が「これは俺のことだ!」

明橋先生が「HSCの子育てハッピーアドバイス」を出版し、多くの方々がHSCについて知ることとなりました。漫画をもちいて説明されているため非常にわかりやすく、子ども達自身が読むケースが増えました。

本を読んだ不登校の子が「これは、俺のことを書いてる! 学校の先生全員に読んでほしい」と言い出して、親御さんが校長先生に相談されたことあったそうです。この校長先生は理解がある方で、教師全員がこの本を回覧するようとりはからってくれました。結果、教室の雰囲気が変わり、その子も登校しやすくなったとのこと。

「本をきっかけに、傷つき悩んでいる子達が自分のことを語れるようになりました。まわりの理解を得て、本来持っている良さや力を出せるようになりました」と、嬉しそうな明橋先生。

「HSCの子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)

学校の先生に理解してもらおう

学校の先生達の反応について、明橋先生にうかがいました。

「私は、年間100回くらいの講演を行っていますが、中には学校の先生対象の講演もあります。しかし、先生方の中でHSCを知っている人の割合は、2~3割です。でも、学校には、必ずHSCに理解がある人がいます。
担任にわかってもらえないなら、スクールカウンセラー、養護教諭、教頭先生などに話をしてみる。そして担任に伝えてもらう。同僚からの言葉には、案外耳を傾けるものです」

【HSCについて、学校の先生に知ってもらいたいこと】
①否定的な言葉によるダメージ大
②大声で叱られる、怒鳴られることによるダメージ大
③人前での発表には、リハーサルが必要
④じっくり考えるタイプは、行動が遅くなりがち
⑤友達作りへのサポートが少しあれば、うまくいく
⑥長所をほめて、自信を持たせる
⑦「先生は味方」だと伝われば、強い力になる
精力的に講演活動を行う明橋先生(明橋先生提供)

周囲の大人に、助けを求められる子に

HSCに起きやすいこととして、「周りの子の気持ちや、先生の感情を感じ取って、落ち込んだり、ストレスを感じてしまう。他人がいじめられ、怒鳴られている様子に涙する」という状況があげられます。
そのようなときはどうしたらいいのでしょうか。明橋先生はこうアドバイスします。

「他人と自分の間に境界線(バウンダリー)を引くことを教えましょう。苦しいのは、他人の感情と自分の感情があいまいになっているからです。他人に起きていることは、本来その人が解決するべきことなのです。
それでも、つらい時、例えば他人がいじめられている場面を見た時などは、大人に相談しましょう。子どもは、『助けを求める』『相談する』という選択肢を知らないので、大人が教えないといけません。
『困ったときどうする?』ときくと、圧倒的に多くの子ども達が『我慢する』と答えます。人の力を借りたり、助けを求めることは、弱さではなく必要なことだときちんと伝えましょう」

HSCへの配慮は、すべての子ども達が生きやすい社会につながる

明橋先生が、学校の先生向けの講演会などで、「HSCへの配慮をお願いします」と発言すると、「いやいや、集団生活では一部の子だけにそんなに対応はできない」という声があがるそうです。

「何も、特別扱いを求めているわけではないんです。まずはこういう子がいる、ということを知ってもらいたい。
実は、HSCに必要な支援や配慮は、すべての子ども達に必要なことなんです。
先生が教室で怒鳴るのがいやなのは、HSCだけではなく、すべての子どもが嫌なことなんです。それをひといちばい敏感な感性で教えてくれるのが、HSCの子どもなのです。
HSCが自分らしくいられる社会は、本当は、すべての子ども達が過ごしやすい社会なんですよ」

この取材を終えて、私の目の前がぱっと晴れました。同時に、長く封印していたつらい思い出もよみがえりました。

うちの子はHSCではありませんが、私自身はHSCだった、と今なら認めることができます。

小学校2年生の頃、私はある戦争漫画を読んで激しいショックを受け、しばらく発話がおかしくなりました。それでも、大切なことだからと戦争の本を買い与える両親、ますます怯える私。
(しかし、ある時期から逆に興味を持ちはじめ、大学では国際公法を専攻し、この問題に正面から取り組めるようになりました)

両親は、HSCの存在やその接し方を知らなかっただけ。私がパニックに陥った理由が分からなかったのです。そして私は、手のかからない、しっかりした子だとほめられることが多かった気がします。

その後も、自分は打たれ弱い、余計なことにとらわれている、我慢が足りない、と後ろめたさと敗北感を感じて生きてきました。ようやく世の中との折り合いがついたのは、最近です。

HSCは足手まといでも、不要でもない。炭鉱におけるカナリアのように、何かが行き過ぎた時に危機を知らせ、その社会で暮らすすべての人が生きやすい方向を示す存在なのだ、と信じています。(文:岡本聡子)

【明橋 大二(あけはし だいじ)氏プロフィール】

精神科医、真生会富山病院心療内科部長。大阪府生まれ、京都大学医学部卒業。専門は、精神病理学、児童思春期精神医療。現在、児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長、一般社団法人HAT共同代表(http://www.hat-a.com/)。富山県虐待防止アドバイザー、富山県いじめ問題対策連絡会議委員、南砺市政策参与。

著書は、『子育てハッピーアドバイス』シリーズ(http://www.happyadvice.jp/)など多数。同シリーズは500万部を超えるベストセラーとなり、韓国、中国、台湾、タイ、ベトナムにて、翻訳出版されている。

明橋先生の公式サイト:http://www.akehashi.com/

「子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。oyakobousai@gmail.com facebook.com/okamotosatokochina

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