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小さなお子さんがいる家庭向け防災ガイド「地震から身を守る②」

小さなお子さんがいる家庭向け防災ガイド「地震から身を守る②」

Part2 地震発生後12時間後まで・部屋の安全

9月は防災月間。コロナに気をとられて忘れがちですが、災害はいつ起きてもおかしくありません。首都直下型地震は30年以内に70~80%、さらに広域の南海トラフも同じ確率で起きるといわれています。

今回は、地震発生の瞬間、そして12時間後までに何が起きるかをシュミレーションしてみます。


防災館での震度7起震体験

自宅で幼い子どもと2人きり、緊急地震速報が! どうする?

冬の平日、夕方17時、マンションの5階。お子さんはリビングで遊び、あなたはキッチンで夕飯と離乳食の準備中。肉じゃがをぐつぐつ煮込んでいます。
この想定は、政府が「最も地震被害が大きくなる」と想定している季節と時間帯です(*1)。

チャランランラン、チャランランラン。
突然、緊急地震速報が鳴り響きました。
「緊急地震速報です、強い揺れに備えてください」

「ママッ!?」 はじめて聞く大きな音におびえる子ども。
走って子どもを抱えにいきました、その瞬間、ガタガタガタッ!

いろんなものが飛んできましたが、ケガは免れました。

揺れが収まり目を開けると、部屋は足の踏み場が無いほど物が散らばり、窓ガラスは割れています。

子どもは、初めて見るガラスの破片を興味深そうに触ろうとしています。

「だめっ、危ないっ!」
あわてて強く抱きしめて、立ち上がりました。
危険すぎて、子どもを床にはおろせません。
(抱っこひもはどこ?)

(震度は? NHKつけなきゃ! あ……っ)
テレビはふっとんでいます。

(ズボンのポケットに入れているスマホがあるから大丈夫)
でも、停電のためかwi-fiはダメ、4G回線も規制のためなかなか使えません。
一時的にLINEの新規メッセージも読み込めません。
電話回線は、緊急優先のため90%以上が通信制限されます(*2)

(夫や実家は無事なの? 私達がこうしていることを誰も知らないまま?)

「ぶりっ!!」
子どもがうんちをしたようです。
(どうして今? そんなにおむつを買いだめしてないんだよね、困ったなぁ)

時刻は18時をまわり、部屋は真っ暗に。停電しているのです。

(どこかに懐中電灯があったはずだけど……)
仕方ないので、スマホのバックライトを使って照らします。
この時点で、バッテリーの残りは45%。

抱っこに疲れました。暖房が切れ、窓が壊れており、寒さがこたえます。
(私もトイレに行きたくなっちゃった、断水していたらどうしよう?)
人は、一日4~7回トイレに行きます。ということは、起きている間は6時間以上はトイレを我慢できません。

どうやらトイレの水は流れます。が、これは地震前に貯まった分。
震度5以上では、水道管が破損する恐れがあるので、状況確認が済むまでは水を流さないほうがいいのです。

「ママ~、おなかすいたーっ!」
夕飯前でしたね。あっ、台所で火を使っていたけど、大丈夫?
今はマイコンメーターで震度を感知して自動消火されるので、消しに行く必要はありません。

でも、冷蔵庫が倒れて中身がぶちまけられています。
残念。停電しても、開け閉めを最小限に抑えれば冬なら3日間は食糧保存庫として機能します。何よりも、冷蔵庫の下敷きになったら大変。

散らばった食材の中から、ちくわやお惣菜を探し出して食べさせました。
(2Lペットボトルが4本あるから水はなんとかなるかな?)
大人1人が飲食用に必要なのは、1日2~3Lです。東京都は、1週間は自力で乗り切るべし、と想定しています(*3)。

(まだ、夫や実家と連絡がつかない……)
スマホのバッテリーは残り10%を切りました。
基地局を探し続けるためバッテリーの消費が早くなりがちです。機内モードにするなど工夫しましょう。

19時半、ついにスマホが切れ真っ暗に。とにかく布団にくるまって眠ることにしました。
「ママ~、寒いよ~。パパはまだ~? こわいよ~」
余震への不安もあり、親子共に眠れません。
ガタッ、余震です。
地震から数日間は大きな余震が予想されます。

消防車のサイレン、ヘリコプターの音が気になり寝られません。遠くには、炎がいくつも見えます。
(煙臭い……、まさかここまで火災は来ないよね? 情報が入らないってこんなに不安なのかぁ……スマホもテレビもない生活は無理だわ… …)

夜泣き、寒さ、不安、孤独。
(もういやだ! 明日絶対避難所行こう! 家は崩れてないけど、部屋はぐちゃぐちゃだし、真っ暗でスマホも充電できないし、気が変になりそう)

ほとんど眠れないまま、朝6時。
「避難所って何を持って行けばいいのかな? 小さい子がいると別室に? 騒いで迷惑がられると困るし。まだおっぱい飲む時もあるしなぁ」
大人の女性が持ち運べるのは15㎏(*4)。子どもを抱っこする分を含めてです。マザーズバック+一泊旅行分くらいが限界では?

玄関のドアを押して……あれっ? 開きません。地震でゆがんだようです。
「うそでしょ? 誰かーっ、開けてください。子どもと閉じ込められています! だれかっ、助けて!」
パニックになりながら叫び続けました。
災害直後はヘリコプター等の音もあり、騒がしいため、人の声はかき消されます。また、大声を出すとすぐ疲れてしまいます。ホイッスルを使うか、金属で金属をたたくなど高くて目立つ音を出しましょう。

「おーい、わかった、今バールであけてやるから、安心しろ!」
なんと、マンションの隣人が助けてくれました! ラッキー。
……しかし、家にバールを持っている人って、そうはいませんよね?

ここまでで13時間が経過しました。

電気、ガス、水道の停止による、暗闇、暑さ・寒さ、トイレ、飲食の不安。
スマホが使えない。情報収集やコミュニケーションができない。
家具家電が吹っ飛び、部屋中にものが散らばる。
親子ともに体調や心が不安定に。
など、いろんな課題が想定されます。

(*1)総務省https://www.soumu.go.jp/main_content/000738330.pdf
(*2)総務省https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/yusen.html
(*3)東京都東京備蓄ナビhttps://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp/tips/tips01/
(*4)職場での衛生管理を参考:https://eiseiiinkai.com/2018/08/03/mochihakobi-jyuuryouseigen/

部屋を安全に、まずは家具の固定を

前回(3日)の記事では、自宅の耐震性や土地の特性を把握しました。

阪神大震では、死者の約87%は、建物倒壊や家具の下敷き、火災から逃げられず亡くなりました(*5)。

(*5)株式会社エヌ・シー・エヌ「家づくり構造計算ナビ」
https://www.ncn-se.co.jp/se/column/257

阪神大震災以降、建物の耐震性は大きく向上しました。現在、地震発生の瞬間に、大切なのは部屋の中の安全、すなわち家具の固定です。

特に、重い家具ほど凶器に変わります。
冷蔵庫やタンスは必ず固定しましょう。突っ張り棒をお使いの方も多いのですが、強い横ゆれではふっとんでしまいます。

L字型、T字型固定の器具を使い、壁にくっつけることをおすすめします。可能ならば、金属板や鎖で固定を。賃貸住まいで難しければ、粘着式のものを多めにつけます。ゴムベルトタイプもあります。

固定しても、家具が倒れることはあります。しかし、倒れるまでの時間を稼げるので、その間にそばから離れることができます。

L字型固定「不動王」

家具転倒防止製品の種類:
https://goocho.jp/4885?fbclid=IwAR2nKV1QjrUVP5W5KXuNSARvjkU8AjLvbhv8Y32KAJ6T-19twVw0XSrkEBM

停電しても、冷蔵庫がきちんと密閉されていれば冷蔵庫は冬なら3日間程度食糧保存庫として使えます。でも、倒れて扉が開いてしまうと、ただの箱に。

地震発生時、一番危ないのはキッチンです。いろんなものが飛んで決ますし、冷蔵庫を始めとする重たい家電につぶされます。台所からは離れましょう。

どうしても家具の固定に踏み出せない人に

とはいうものの……、家中の家具家電すべてを固定するにはお金と莫大な労力がかかります。実は私も、転勤の多い賃貸暮らしなので、家具の固定には疲れてしまいました。

そこで、考え出したのが、

「冷蔵庫の固定+寝室だけでも、まずは安全に」

我々は、人生の3分の1を寝室で過ごします。阪神大震災は早朝、熊本地震は21時過ぎに起きて、就寝中の人達を襲いました。

ベビーベッドのまわりには、落ちてくるようなものや家具は起きませんよね? 私達だって眠っている時は赤ちゃんなみに無防備です。

【安全な寝室作り4か条】

1.寝室には大きな家具を置かない、置くなら必ず固定する。

2.クローゼットや家具のドアが揺れで開かないように、器具をつける。

3.寝室のガラス窓は、飛散防止フィルムを貼る。

4.寝室には、夏でもスリッパ、ヘッドライトを手の届くところへ常備。(ガラス飛び散り、停電対策)

これらの努力は、地震発生の瞬間、あなたや家族の命を救うだけでなく、自宅内に一室だけでも安全な部屋を作ることにつながり、被災後も在宅避難しやすくなります。

でも、余裕ができたら、他の部屋も家具を固定してくださいね!

災害との闘いは、心理戦です

お子さんとも「地震警報が鳴ったら、寝室に逃げ込むのよ」と訓練しておくことで、心の安定につながります。

「災害との闘いは、心理戦」。
きっと自分だけは大丈夫、と考えがちな心。
まだ避難しなくても大丈夫、からの逃げ遅れ。
もしもの話をすると、多くの人が正常な判断が下せません。

ましてや、小さい子どもがいれば「この子が小さいうちは、大きな災害が起きないでほしい、いや起きないはず」と考えたくなります。

防災の必要性を理解していても、ハザードマップの確認、家具の固定、備蓄、持ち出し袋、とやることが山盛りで、なかなか手がつけられません。

だからこそ、ご自宅や今のご自身のニーズに集中して、備えをはじめませんか?既存の防災セットや防災頭巾ではなく、本当にあなたが必要とするものを手元に準備しましょう。

次回の記事で一緒に考えます。

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上沢 聡子

上沢 聡子防災士、「赤ちゃんとママの防災講座」主宰

大阪で阪神大震災を経験。東京で出産後、「今、被災したら子どもを守れない」と奮起し、乳幼児親子向け防災を始動。同活動で「第9回健康寿命をのばそう!アワード母子保健分野厚生労働大臣賞優秀賞」を受賞。東京都語学防災英語ボランティア、中野区防災リーダー。幼稚園児ママ。oyakobousai@gmail.com oyakobousai.wp.xdomain.jp

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