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新型コロナウィルス:ある一家の自宅療養記(イギリス)

新型コロナウィルス:ある一家の自宅療養記(イギリス)

2021年8月、日本ではコロナ陽性による自宅療養者が激増しました。入院できない、自宅で死亡、などショッキングなニュースを目にしましたが、海外ではどのようなことが起きたのでしょうか?

イギリスで、6月にコロナ自宅療養を終えた小林かおりさん(仮名)に話をききました。ご夫婦と小学生低学年のお子さんとの3人暮らしです。

それは、ご主人のあやしい咳からはじまりました。

陽性とわかるまで

ご主人の咳の様子から、かおりさんは「家族全員、コロナの検査を受けてみよう」と思ったそうです。

早速、国民保健サービス(NHS*)が運営するウェブサイトにアクセス。

国民保健サービス(NHS)のコロナ感染チェックサイト(英語):https://digital.nhs.uk/services/nhs-111-online/nhs-111-online-coronavirus-services

指示に従って、自分で症状を入力し、フローチャート式に最後まで進みます。すると、歩いて5分程度のPCR検査施設が自動的に割り振られました。スマホに送られてきたQRコードが、検査のための確認証となります。

イギリスでは、全国民(条件を満たせば一時滞在者もOK)がNHS番号を持っているため、国に一元管理され、居住地域でその時必要な医療サービスが受けられます。

48時間以内に結果が分かると言われ、帰宅。
PCR検査を受けた夜、かおりさんは少しだるさを感じましたが、翌日もリモートワークで働ける、大丈夫、と感じる程度の症状でした。

(*)NHSとは:国民保健サービス(National Health Service, NHS)。イギリスに6か月以上滞在する場合、条件を満たせば誰でも、極めて低額もしくは自己負担なく医療サービスを受けられる。

自宅療養開始

しかし、かおりさんに、翌日からインフルエンザをひどくしたような症状があらわれました。寒気、背中の痛み、嗅覚異常、食欲の低下……。
「すべてが臭い。お米も、水も臭くて食べたり飲んだりする気にならない」と、かおりさんは語ります。

「酸っぱさはかろうじて感じるので、ライムをしぼった水を飲んでいました。そして、トムヤンクンスープがどうしても食べたくなって、友達に届けてもらいました。すべてが臭い中、あのトムヤンクンは美味しかった!」

ライム入りの水。味覚があまり分からないなか、酸っぱさの虜になり、よく作って飲んだそう(かおりさん提供)

お子さんは陰性でしたが、家族全員で10日間の隔離生活を送りました。

実は、陰性の子ども(18歳6か月以下)の場合は、隔離ルールがやや複雑。
・症状が出ている大人と同居の場合は、子どもも外出制限あり。
・症状が出ていない大人と同居の場合は、子どものみの外出はOK。

ピンとこない部分もありますが、子どもをむやみに家に閉じ込めてはいけない、ということでしょうか?

夫の様子がおかしい、「救急車を!」

ご主人は、元来とても楽天的な性格。しかし、コロナ陽性が判明してから、病的なほど不安症になりました。

ご主人自身が、パルスオキシメーター(指先で酸素飽和度を測る医療機器)やイベルメクチンを通販ですぐ購入。

「息が苦しい!息ができない!」と訴えるご主人。

それって重症化のサインでは???

さらに、「胸が苦しい!」

もしかして、コロナで心臓に影響が?ということで、ご主人が何度もNHSに相談し、ついに自宅に救急車が到着。

救急隊員が、血圧、体温、心電図などを計測し、救急搬送するべきかをチェックしました。

結果は……、
「病院に行きたいなら行ってもいいけど、救急車で搬送する必要は無い。行くなら、自力で行ってください」でした。

ご主人がコロナ感染により不安状態にあるのを悟った救急隊員は、
「大丈夫、家にいてください。あまり閉じこもると気がふさぐから、夜くらい散歩に出かけたらどうですか?」
と声をかけて立ち去りました。

かおりさんはそのやりとりを、「非常に信用できる」と評します。
「必要がないのに病院に行っても、待たされるだけです。安心するかもしれないけど、身体には負担になりますから」

自宅療養を支える仕組み

陽性判明の翌日、NHSから「生活の助けは必要ですか? 買い物サポートしましょうか?」という電話がかおりさん宅にかかってきました。かおりさんは必要ないと断りました。

ちなみに、請求すれば、コロナに感染した低所得者には500ポンド(8万5000円程度)が支給されます。
全員に一律に何かがもらえるというわけではないそうです。

イギリス人は、「無料ならもらっておこう」ではなく、「税金でまかなわれているのだから、必要な人に届くように」と考える傾向があるそうです。

かおりさんの場合は、ご近所や友人に助けられました。
コロナ第一波の2020年4月頃、「何かあったら助け合おう」と近所の人達と電話番号の交換をしました。
今回、様子がおかしいと感じた近所の人から「大丈夫? 何か手伝おうか?」とテキストメールが届いたそうです。

NHSからの電話は数日に渡り、かかってきました。
まずは「ちゃんと家にいますか?」という隔離チェックの電話。隔離違反すると罰金だそうです。

次に、医療職スタッフ達が「どんな容体ですか?」とかけてくる健康チェック。2~3日に一度くらいの頻度で、親身に相談にのってくれます。このサービスは、Covidクリニックと呼ばれます。

NHSが提供するウェブサービスには、自宅療養中の病状把握のために、酸素濃度(酸素飽和度)を入力するものがあります。
NHS COVID Oximetry @home – digital and data services(英語):
https://digital.nhs.uk/coronavirus/covid-oximetry-at-home-digital-and-data-services

個人の情報は引き継がれますが、毎回違う人がかけてくるので、個性があらわれ面白かったと、かおりさん。
「健康管理アプリにあなたの体調が入力されていません。今すぐ、酸素濃度と体温をはかってください。え! 結構悪い数値ですよ。部屋を70歩歩いて、また測ってみて? 少しはよくなった? あなたねぇ、まじめに入力してくださいよ?」
という調子。

健康状態の入力は強制ではなく、断ることもできます。

この他、コロナで自宅隔離になり寂しさを感じる人達と話すサービスもあるそうです。

さて、病欠すると、会社に診断書を提出しなければいけませんよね。
実は、コロナの場合は、診断書は不要だそうです。

もし、コロナ感染の証明書が必要な時は、NHSナンバーを入力し、ウェブからダウンロードして使います。
わざわざ病院に行かなくても済むシステムは、病後特に助かりますね。

陽性判明から半年間は、コロナ(Covid)パスが有効

順調に隔離生活を終えたかのように思われたかおりさん一家。

しかし!
なんと、すぐに2度目の隔離を経験。

実は、会社の手続きの一環で、回復後1か月たたないうちにPCR検査を受けてしまったのです。

新型コロナウィルスの場合、人に感染させる恐れがあるのは最初の10日間(その期間は隔離が必要)。でも、陽性になってから90日間は、PCR検査で陽性と出てしまいます。これはイギリス政府のウェブサイトにも記載されている事実です(注1)。

もし、再度、陽性の検査結果が出れば、NHSナンバーで管理されている以上、また10日間隔離が必要になります。

このパスを会社に提示すればよかったのですが、かおりさんはうっかりPCR検査を受けてしまいました。
NHSにもかけあいましたが、新型株も流行っているので念のため隔離を、と言われ、一家はお子さんも含め、2度目の10日間隔離に入りました。

後遺症?「コロナ前には、なかなか戻れない」

現在、かおりさんには息切れ、眠気、頭がぼんやりする、鼻血、抜け毛などの症状があります。

「思ったより影響が長引いています。在宅でのリモートワークはできるけど、対面の仕事はしていません。だるい、昼寝しなきゃ、という生活です」

感染判明後、12週間たってもしんどさが残るなら「Long-Covid-Clinic(長期コロナクリニック)」を受診するようにと、イギリスでは指針が出ています。

コロナ感染により、心身の状態が変化し、以前の仕事ができなくなった人達や生活の質が変わってしまった人達対象のZOOMおしゃべり会なども実施されています。
コロナ回復後も、長く体調が戻らず悩む人は多いようです。(文:岡本聡子)

(注1)イギリス保健省:https://www.gov.uk/government/publications/coronavirus-covid-19-testing-in-adult-care-homes/covid-19-testing-schedule-for-a-suspected-or-confirmed-outbreak-in-a-care-home

(注2)NHS:https://www.nhs.uk/conditions/coronavirus-covid-19/covid-pass/

(この記事は、2021年9月20日時点のデータに基づいています。9月20日現在、イギリスでは成人人口の9割近くがコロナワクチンを必要回数接種済。1日あたりの7日間平均感染者数は約3万人強、対して死亡者数は120~150人程度で推移)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。oyakobousai@gmail.com facebook.com/okamotosatokochina

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