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ASD(自閉スペクトラム症)女性の日常を覗き見! 漫画『見えない違い 私はアスペルガー』

ASD(自閉スペクトラム症)女性の日常を覗き見! 漫画『見えない違い 私はアスペルガー』

障害や病気に関する本は小難しい用語が出てくる気がして、読むのを躊躇する人もいるのではないでしょうか?

今回紹介するASD(自閉スペクトラム症)当事者、ジュリー・ダシェによる『見えない違い 私はアスペルガー』は、その心配が無用の自伝的コミック。ASD女性の日常の中で起こる困りごとを、かわいらしい絵で漫画にしています。読み物としても面白いので、ASDを理解したい人にも、何か新しい漫画を読みたいと思っている人にもおすすめの1冊です。

ジュリー・ダシェ原作『見えない違い 私はアスペルガー』

本書は2018年に刊行された、フランス人ASD(自閉スペクトラム症)女性による自伝的バンド・デシネ(BD、フランス語圏の漫画の総称)です。主人公は発達障害の特性を持つフランス人女性・マルグリット。彼女がASDと診断される以前の生活から診断に至る様子、診断を受けてからの生活が描かれています。翻訳物ですが、漫画なのでスルスルと読みやすいのが特徴です。

主人公の目線で淡々と描かれるASD女性の日常

物語は、主人公・マルグリットが会社へ向かうシーンから始まります。

会社への道をルーティーン化しており、誰よりも早くオフィスに着いて作業を開始します。その後、他の社員が出勤してからはオフィスに溢れる音の波に押し出されるようにトイレへ向かって、ひと呼吸。マルグリットには聴覚過敏があります。

また、触覚過敏もあるため、締め付けが少ないゆったりとした服装が好きです。苦手なことやルーティーンが崩れるようなことがあれば、メルトダウン(パニック発作)を起こします。上司に対して適切な振る舞いができなかったり、言動も浮いたりしているので、周りから変な目で見られることもしばしば。

いつものルートで家路に着き、ゆるめの部屋着に着替えてペットたちとリラックスした時間を過ごすことで、やっと落ち着きます。

欧米と日本のASD女性の課題は異なる

Group of young multiethnic friends enjoying evening and drinking cocktails. Happy men and women raising a toast with mojito on a patio under the light bulb wire. Elegant girls and stylish guy having fun together at party night.

また、マルグリットは、フランスで当たり前に開かれるパーティーが苦手です。恋人に誘われて渋々出かけたパーティーからもすぐに帰宅し、その場を凍らせています。

深い理由について解説はありません。しかし、ASD者は一般的に、音や光、雑談など、パーティーの持つ要素を苦手に思う場合が多いです。マルグリットも例に漏れず、音に敏感で、集団の中で上手に振る舞えないという特性を持っています。

以前、紹介した宮尾益知著『女性のアスペルガー症候群』の中で触れられていますが、日本のASD女性は女性同士の人間関係に悩む傾向にあり、欧米ではパーティーやデートでの振る舞いが問題になるそうです。

ASDの女の子や女性が気をつけたい性被害に関する描写も

husband rapes his wife on a gray background

主人公のマルグリットは、隣の部屋に住む男性に興味を持たれています。ある日、彼にスペイン語を教えてほしいと言われ、渋々部屋を訪ねることに。

マルグリットはスペイン語を教えるつもりで訪ねましたが、彼が期待していたのは「課外授業」。部屋に入るや否や、突然キスされてしまいます。

それ以上の被害には遭いませんでしたが、部屋に招かれた理由がわからず彼を怒らせ、「とっとと帰れ」「バカ女め」「こっちから願い下げだ」という、なんとも理不尽な言葉を吐かれてしまいました。

ASD者は言外の意味を読み取れない、相手の言葉を額縁通りに受け取る傾向があるのは、よく知られています。また、自己肯定感が低いこと、孤独・孤立しやすいこと、断れないなどの特性もあり、性被害に遭いやすいという調査報告がなされています。(※)

性被害に遭わなくとも、ASD者は辛い記憶のフラッシュバックに悩む傾向があります。理不尽な扱いや言葉を急に蒸し返して後々苦しむということが起こりやすいため、なるべくこうした経験をしないよう気に留めておきたい事項です。

発達障害者への性暴力の実態に関する調査|岩田千亜紀、中野宏美

ASDの診断は「自分との仲直り」

恋人や周囲とのギクシャクを機に、自分の居心地の悪さについて知ろうとし始めたマルグリットは、インターネットを使って日々のうまくいかないことについて調べ始めました。

そこで出会ったのが「アスペルガー症候群」(現・自閉スペクトラム症)という言葉。ASD当事者の経験や失敗談を読んでいくうちに、マルグリットは自分もそうなのではないかと思い始めます。こうして専門機関にかかり検査を受け、晴れてASDと診断されるのです。

マルグリットは、アスペルガー症候群という診断を「自分との仲直り」だと位置づけました。周囲と比べて自分が「おかしい」のではなく「違う」ということを受け入れ、これからの人生をよくするために行動を起こします。

違いは「問題」ではなく「答え」

この本の冒頭に、原作者であるジュリー・ダシェの言葉として「”違い”は問題ではありません。むしろ答えなのです」と書かれています。

これを書いているライター自身も、ASDを診断されている発達障害者です。発達障害と言われることに抵抗を感じる人もいるでしょう。しかし、わたしはマグリットと同じく、診断されてよかったと思えたタイプの人間です。それは、自分自身や人生の不可解に対する答えが出たからなのかなと、原作者の言葉を読み返して思いました。

この本についてのレビューをいくつか読みましたが、「読んで勇気が出た」という声が多数あります。ASDについての物語ですが、マルグリットの自分を受け入れ、自分だけの道を切り開いていく様子は、障害の有無に関係なく、勇気をもらえる姿なのかもしれません。

絵も色使いもかわいらしく、1巻完結の物語。ママだけでなく、漫画が好きなお子さんにもおすすめの1冊です。

漫画『見えない違い 私はアスペルガー』の舞台【フランスの発達障害事情

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きく

きくライター

美、食、住に貪欲な、20代から40代の女性向けメディアで活動中の執筆屋。34歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受け、自分の過去や特性を研究しながら、発達障害やその疑いに悩む人に向けた記事を執筆します。

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