連載:絵本とボクと、ときどきパパ 子どもの「なんで、どうして」攻撃に、「元々はですね」
2021年が明けて、皆さんも「初」を意識をしたこと、あると思います。初日の出、初夢、初笑い、初売り、初仕事…。初ものを大切にするのが日本の文化ですが、確かに心が改まる感じがします。
考えてみれば、何にでも「初」があるものです。それがことの始まり。知ると物事が存在する意味がわかって面白いものです。
実は最近、こんな本に出会いました。
『なんでもはじめて大全』(スチュワート・ロス:著/東洋経済新報社)
人類文明における様々な事柄の「はじめて」を紹介した、事典のような読み物です。ビックバンや生命の誕生はもとより、身近なものも。
ダイエットのおおもとは? 冷蔵庫はいつから? スポーツはどんなふうに? 美容整形はどこの国から? 他にも、興味を持ったら索引から逆引きできる便利さは、息子の「なんで?」「どうして?」に答えるのにだいぶ役だ立ちました。
大人向けなので、高学年ならではの質問、例えば「窓ガラスっていつ頃できたんだろう?」「薬物なんて、なんであるんだ?」「戦争、誰が始めたんだ?」にも十分対応しています。ただ、小学生にはちょっと難しいので、大人が読んで説明してあげる必要があるかもしれませんが。
そもそも子どもは、多かれ少なかれ「なんで、どうして」攻撃を親にしてくる時期がありますよね。特に小さい頃、何につけてもなぜなのかと聞いて、それに答えると、その答えに対して、またなぜかとと聞いてくる。そして答えると、また「なんで?」。もう、辟易とするほどです。
例えば、こんな風。
子ども「なんでトマトは赤いの?」、
お母さん「うーん、お日様に当たると赤くなるのよ」
子ども「なんでお日様に当たると赤くなるの?」
お母さん「美味しく熟れたよって印なのよ」
子ども「なんで印が赤なの?」
お母さん「太陽と同じだね、ということよ」
(だんだんと、お母さんの答えは、いい加減になります)
子ども、「なんで、おんなじなの?」
お母さん「うーん。(もう答える気が失せかけています)なぜかしらね?」
子ども「なんで、なぜかしら、なの?」
結局、お母さんは、「なんででも、そうなの! もう!!」と言って半分キレてこの質問攻撃に終止符を打ってしまいませんか?
私もそういう経験がありますが、それはどうでしょうか、という話がよく育児書には載っていますよね。子どもの思考力を育むために、「なぜ?」にはとことん付き合いましょうと。そこで、私は、息子が小さかったときに改めることにしました。
とはいえ、私は百科事典ではありません。子どもの「なんで?」に正確な知識でもって延々と付き合えるはずもありません。しかも相手は子ども。分かりやすく説明するのも至難の業です。
そこで、残されたできることは、2つ。
一緒になって、なんでだろうと考える。
一緒になって、とことん調べる。
これをやってみました。息子の「なんで?」にはこの2策で対応するのがだんだんと定着しました。結果、家の中が図鑑だらけになってしまい、片付けに困る結果となりましたが。一方で、思考力の成果のほどは? こちらは様子見ですが、少なくとも調べ癖がついているのは確かです。
ものごとの「はじまり」がわかると、なぜそのものがあるのかが分かったり、もっと深く探りたいという好奇心が生まれるでしょう。
そういえば、子どもにも大人気の伊沢拓司さんは、どんな質問が振られても、即座に「これは元々はですね」とその由来を素晴らしく明確に説明してくれますよね。由来を知ることは知識を広げることにつながり、広い知識があればより世界が面白くなる。世界が面白くなれば、偏見がなくなり、偏見がなくなれば多くの人に愛される。そういうものだと、つくづく思います。
私も子どもには、なぜなのかを考えることと、由来を知ることを大事に、と伝えたいと常々思っています。
子向けにも、物事の由来を説明している事典はたくさん出版されています。図書館や本屋さんで、色々手にとってどれがお子さんに合っているか試してみることをお勧めしますが、例えば、『こども語源じてん』(聖心女子大学教授、山口佳紀:編/講談社)はどうでしょうか。
普段使っている言葉の中から選ばれたおもしろ語源エピソードが、約600語載っています。リビングに置いておくと、暇なときに手軽に言葉の由来を知ることができるので、自然と物知りになるかもしれませんよ。
そもそも語源がわかると、言葉を覚えるのが楽になりますし、語彙が増えれば、読書も学校の教科もどんどん面白く思えてくるのではないでしょうか。息子の「なんで銀行では社長と言わないで頭取というの?」に応えてくれた事典。「ちゃんこ」鍋の謎もスッキリ。
「元々はどうやって始まったの?」という疑問は、考えてみれば日常のあらゆる場面にも抱けるものですね。
『はじめてのはじまり』(中川ひろたか:ぶん、中野真典:え/小学館)は、はじまりに焦点を当てた、エネルギッシュな絵本です。
なんでも「初」の瞬間は、とても新鮮で、緊張もしますし、勇気もいるものですよね。1日の「はじまり」から始まり、舞台の開幕、試合がスタートする瞬間、そして、生命が生まれる時…。私たちはなんて多くの「はじめて」を乗り越えてきたんだろうと感動さえ覚える作品です。出産祝いや入園祝いにも喜ばれそう。(赤ちゃんから大きい子も)。
私たちはどこから来たのでしょう? 私たちの始まりを知るには、今やダーウィンなしでは語れないのではないでしょうか?
ダーウィンの進化論や人物についての子ども向け作品はたくさんありますが、今回は絵がとても美しい科学絵本をご紹介します。『はじめての進化論/ダーウインの種の起源』(サビーナ・ラデヴァ:作・絵/岩波書店)。
長い間、全ての生物は一瞬にして「神様」が作ったもので、人間はその存在が生まれた時から同じ姿をしていた、と思われていました。その考えを一気に覆したのがダーウィンです。生き物は、様々な進化を繰り返し、今の姿があると。
では、どういう風に変化してゆくのか。なぜ生き残る種とそうでない種があるのか。生命の根源を分かりやすく説明したダイジェスト版ですが、とても詳しく、読み応えは十分です。(中学年から)
日本人として知っておきたいのは『古事記』(偕成社)
日本はどのように生まれたのか。こちらはご存知、神話です。上巻の部分を富安陽子さんの親しみやすい文章で、とても読みやすく編訳されています。神様たちの名前がややこしくてお手上げだった私も、この作品と出会ってあっという間に読んでしまいました。
全ページに、山村浩一さんの実に愉快な挿絵が施された絵物語形式というところも、物語がすんなり頭に入ってくる理由ではないでしょうか。なにせ神々が繰り広げる展開が奇想天外で、面白い。
馴染みのある『ヤマタのオロチ』や『イナバの白兎』のお話も出てくるので、小さい子にも読んで聞かせてあげてもいいかもしれません。いろんな日本の昔話のみならず、世界の物語に通じる部分もたくさんあり、世の中を知る上でのコンパスにもなるのではと思います。(中学年から)
(Anne)