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映画『モンテッソーリ 子どもの家』と、見守る子育て

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 映画『モンテッソーリ 子どもの家』と、見守る子育て

「子どもに口出ししすぎてるな」。

最近、私はこんな風に反省するときがあります。

あるいは、「子どもにどう対応したらいいの?」と戸惑うことも、未だに茶飯事です。

当然ですが、自然に育て方がわかるほど野性味を残していない私たちは、生まれたての子を抱きながら途方にくれることだってあるでしょう。

もし、そんな風に親としての立ち位置が揺らいだ時、観て欲しいのがこの作品。

『モンテッソーリ 子どもの家』(アレクサンドル・ムロ:監督、日本語吹き替え:本上まなみ、向井理)です。(2月19日(金)より新宿ピカデリー、イオンシネマほか、全国公開。)

フランスのとある幼稚園の子どもたちの姿を追ったドキュメンタリー映画です。

「子どもの家」と呼ばれるこの園では、私たち大人がイメージする様子とちょっと違います。子ども達は大きな声を出して、走り回ったり、はしゃいだり、喧嘩をしたり、笑い転げたりはしていません。

ここでは、ひとりひとり独特の教具を棚から取り出しては、静かに「お仕事」とよばれる一つの作業に集中しています。水を零さぬよう器から器に移し替えていたり、マットを丁寧に巻こうと格闘していたり、ちょうちょ結びを何度も繰り返したり、線に沿って真剣にハサミを使っていたり。

一見、この作業は無意味に映るかもしれません。でも観ているうちに実にひとつひとつの動作が子どもにとって必要であることが伝わってきます。そして何よりも、こんなことに夢中になるんだという驚きがあります。子どもを分かったつもりでいる親の私たちでも、もっと謙虚になって観察するべきだと、反省しないではいられません。

この独特の園で実施されているのは、マリア・モンテッソーリというイタリアの教育学者が研究と観察を重ねて生み出した教育メソッドです。

モンテッソーリによると、子どもには自然からもらった「宿題」があると言います。そして、ひとりひとりの成長段階において必要かつ適切な時期に、取り組まなくてはならないのだそうです。

その「宿題」とは、子どもが自立に向けて必要とする動作の一連で、この作品で子ども達が夢中で手先を動かしているようなこと。しかも、その動作を完全に身につけるためには、何度も繰り返し行う必要があると。

そして、もう十分だと思った時、子どもは「ひとりでできるように」なり、心が満たされる。それはつまり、心の安定、落ち着き、他者への思いやり、自尊心などにつながる、といいます。

では、保育士さんたちは何をしているのでしょうか。この園では、子ども達を観察し、見守り、そして必要な時だけ、そっと声をかけ、手助けをするに徹しています。その姿を見ていると、こんな風に声をかければいいのだな、教えるときはこういう風にすればいいのだな、夢中になっているときは余程のことがない限り、そっとしておくべきなのだな、ということがはっきりと分かります。

何よりも印象的だったのは、叱らないのはもちろん、むやみに褒めないところです。ご褒美は、もうすでに満足した子どもの心の内にあるのだと痛感しました。

実は我が家も、息子が0~3歳の間、モンテッソーリ教育の保育園に通っていました。子どもへの関わり方は、先生方のアドバイスに沿って、当時は、十分では決してないにしろ、できる限り実践してきたつもりです。

「お仕事」と呼ばれる作業は園にお任せして、おうちでは、子どもが何かに熱中したそうだと感じたら、できるだけそのことに取り組めるように気を使いました。

例えば、まだハイハイとつかまり立ちをしていた頃のこと。本棚の本をひっぱりだしたくて仕方がない。でも、それをやられると散らかって、親は困ります。そこで、本棚の一角を息子の専用にして、好きなだけ本を取り出して良いことにしました。小さい子でも取り出しやすいように隙間を十分開けて、子供向けの本を並べたのです。

初めはただ引っ張り出し、全部出し切ったらそのまま。でも少しずつ、戻し方を見せて、本棚への片付け方を教えてみました。すると、出したらしまう、ということが身についた気がします。そのうち引っ張り出した本は、ページをめくるとなんだか絵が変わる、ということに息子は気づき、絵本への興味が出てきました。このタイミングで、私はずっと楽しみにしていた子どもへの読み聞かせを始めたのです。

私がここでやったことがモンテッソーリのやり方として具体的に正しいかはさておき、子どもを観察して、熱中したいことがあれば思う存分できるように環境を整え、必要であれば手を差し伸べる、ということは園に通わせながら親として学んだことです。

でもこんな失敗もありました。息子がトイレットペーパーをとにかく引っ張り出したくて仕方がない、というときがありました。じゃあ、と事もあろうに、私はワンロールを思う存分引っ張り出させてしまったのです。先生に報告したら、「それは大切なものですから。やるべきことでないと教えましょう」と。何でも思いのままにやらせれば良いというものでもなく、ルールを教えることも大切だと。

息子はもう十一歳。親子共に貴重な保育園時代をすっかり忘れたように思えるこの頃です。私の方は気づけば、やたら口出すお母さんをやってしまっています。それでもふとした瞬間に息子の動作から、モンテッソーリ教育を受けたからかな、と思わせる瞬間があり、懐かしく思います。

この際、初心に戻って、この作品のマレシャル先生のように、じっと見守り、落ち着いて、静かに子どもに対応したいものです。

世の多くの著名人も卒業したというこのモンテッソーリ教育。もっと深く知りたい方向けに、私が読んだ書物をご紹介します。

『EDUCATION FOR A NEW WORLD モンテッソーリの教育・0歳~六歳まで』(M・モンテッソーリ:著/あすなろ書房)

モンテッソーリ自身の言葉で語られた、幼児教育の真髄。私たち一般のお母さんにとっては、専門的な内容や時代を感じる行もありますが、やはり基本を押えたいという方に。

『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』(相良敦子/講談社)日本のモンテッソーリ教育の第一人者によって、本質をわかりやすく説明したものです。映画の中で見られる子どもたちの「お仕事」のやり方も、絵で細かく説明しているので、学びやすい。マンガ版(河出書房新社)もあります。

『モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び』(松浦公紀:著/学研)。静岡で「子どもの家」を主宰する教育者によるモンテッソーリ教育の参考書。図や表、教具や現場の写真などを通して、より簡潔に説明されているので、抵抗なく理解を深めたい素人でも満足できる内容です。実施している園の全国リストも載っているので、重宝します。

『モンテッソーリ教育を受けた子どもたち』(相良敦子:著/河出書房新社)。それで、モンテッソーリ教育を受けた子供たちは、その後はどうなるの? 気になる私たち親の気持ちにしっかり答えてくれる体験談集です。どの経験が脳に効いたのか、科学的な視点からも分析しているので、説得力があります。

さて絵本です。モンテッソーリの保育園で、初めて見せてもらったこの素敵な2冊が、赤ちゃん向けの絵本の扉を私に開いてくれました。

『ぶーぶーじどうしゃ』(山本忠敬:さく/福音館書店)。こちらは、なるべく本物に近い絵のものを選んでいます、と。もちろん、あかちゃんの目が捉えやすいシンプルな形の乗り物本もありましたが、教具に関していえば、リアルな絵のものを使うことがほとんどでした。

『のりものいっぱい』(柳原良平:さく/こぐま社)も子どもに大人気。

特に「おメメ」が魅力のようです。 (Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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