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嘘ってついてはいけないの?

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 嘘ってついてはいけないの?

4月1日はエイプリルフールでしたね。

嘘はいけないと言うのが万国共通の常識ですが、この日は違う。思う存分嘘がつけるのです。

新聞には、自動車会社のメーカーのフォルクスワーゲンが、新型の電気自動車の発売に合わせて、アメリカの子会社を電圧を意味する『ボルツワーゲン』に改名すると言うニュースが載っていました。へえ、なんて思いながらそのまま読み進めてみると、なんだエイプリルフールか。思い入れあるメーカーの、さもありそうな話にまんまと引っかかってしまいましたよ。騙されるのも案外面白いものです。

実は我が家には毎年恒例、この日にここぞとばかりの嘘をつきあう習慣がありました。

つきあうと言うより、妹一家とグルになり、私たちの母を標的にするものです。うちうちで案を出し合って、どんな嘘だったら面白いか、どう話したら信じてもらえるか、綿密に練るわけです。

そこまでのプロセスも楽しいですが、そこで鵜呑みにしてくれたらなおのこと。いかにストーリーをうまく組み立て、信憑性を持って話せたかが試されるので、成功すると誇らしくなるほど。その日は大盛り上がりなのです。

ところが昨年も今年も、話は別です。

昨年はちょうどコロナが蔓延してきたばかりで、我が家は自粛や休校中。海外に住む家族はロックダウンの最中でした。誰彼も先が不透明の中で我慢を強いられ、神経を尖らせていた日々だったので、遊びの嘘とはいえ、人によっては笑えなかったでしょう。ましてや誰かがコロナに罹ったなんて言う嘘はもってのほかです。エイプリルフールどころではありませんでした。

今年になってもまだまだコロナ禍。今回も新聞記事に私が騙された程度で終わりました。早く気軽に嘘がつける4月1日を迎えたいものです。

一方、母は、ここ2年、今年こそは騙されまいと電話片手に構えていたそうですが、待てど暮らせど子供達からの連絡が一日に来なかったと言うのです。「楽しみを奪われた」母を想像すると、やはり嘘は娯楽にもなりうるとつくづく思います。家族で一緒に物語を作って、語ってみせる。出来のいい「作品」であれば、結果、騙されてくれる。楽しいイベントではないですか!

私も息子には、鵜呑みにできるほど上手い物語をエイプリルフールによこしてもらいたいものです。
でも方向性を間違えれば、オレオレ詐欺のようなの手口にだって使えてしまう。これもある意味「上手い」物語ですから。
そう考えると、一言に嘘と言っても、犯罪にも娯楽にもなる。子どもに、嘘の良い悪いはどうやって教えるべきだろうかと、考え込んでしまいました。とりわけ子どもが嘘をついた時…。
顔洗ったの? と聞くと「洗ったよ!」という返事。でも口元にはケチャップがついている。
宿題やったの? と聞くと「やったよ」と即答されて、怪しいとノートを開くと真っ白。
階段のお掃除は? とそそのかすと、「今朝やった! 多分…」と、後ろめたそうだったり。
こんなことは子どもあるあるでしょう。

我が家の場合、特に多いのが、ゲームがらみの嘘です。
買い物から帰ってくると、宿題が進んでいない。なぜかと尋ねると、難しいんだと言います。でも電子器具置き場にあるはずのiPadは、ドリルの傍に。「ええ、そうでしょうとも。進んでないのはゲームをやっていたからね!」という私に「ママ、なんでわかったの?」と驚いています。嘘がバレバレなところは、まだ可愛いですが、こう言う場合、どうしたって目は釣り上げて注意するべきですよね。嘘はいけませんと。

嘘は誤魔化しだし、人を傷つけたり、不愉快にもさせますから、当たり前ですが、良くないことです。

でも、エイプリルフールのような娯楽の嘘は?
想像力や創作力の源となる嘘。相手を思いやる嘘や、人や自分のプライバシーを守るための嘘だってありそうです。嘘は時と場合にもよるし、内容にもよるし、限度や言うタイミングも関係してきます。

一方で、なんでも正直に話すべきなのかといったら、こちらも時と場合にもよるし、言うタイミングもあるでしょう。一概に否めない。
そんな風に考えていると、噓にもいろいろな類があることに改めて気づかされました。
そんな様々な嘘の形を子どもと考えたいとき、こんなお話はどうでしょうか。

まずは、嘘を肯定的に捉えた視点に、ハッとさせられた作品。

『エイドリアンはぜったいウソをついている』(マーシー・キャンベル:文、コリーナ・ルーケン:絵/岩波書店)

自分の家には素敵な馬がいるんだと言い張る男の子と、それを、絶対に信じようとしない女の子との交流のお話です。エイドリアンという名のその男の子はいつもひとりだし、机はぐちゃぐちゃだし、ぼーっとしてるし、それに、そもそも馬が飼えるような広いおうちではないはず。嘘をつくなんて許せないといったように女の子の方は憤ります。そんな矢先、ひょんなことからエイドリアンの家の前に来てみると……。彼が語る白い毛並みで金色のたてがみが美しい馬は、この作品を手に取った私たちの心の中にもやってきてくれる、輝くような感動作です。

『ほんとうのことをいってもいいの?』(パトリシア・C・マキサック:文、ジゼル・ポター:絵/BL出版)

このタイトルを一見みると、もちろん良いに決まってるでしょ、と言いたくなります。でも実は本当のことを言うのは、なかなか難しい。主人公のリビーはお母さんに嘘をついたことで叱られ、それを機に本当のことだけを言おうと心に決めます。ところが、なんだか周囲の様子が変。みんな気を悪くしているようです。良かれと思ったのにどうしてなの? リビーは悩みます。どうすれば良いのでしょうか? 子どもが嘘をついたら、本当のことを言うのに悩んでいたら、最初から叱る前に、この作品を一緒に読んでみるのも良いかもしれません。親も子どもにアドバイスしやすくなると思います。

『うそつきにかんぱい!』(宮川ひろ:作、小泉るり子:絵/童心社)

大人気の『かんぱい!』シリーズの一冊で、これを読むと嘘には色々な類があることが明確に伝わってきます。主人公の信也はひいおばあちゃんの様子がおかしくなってきていると気づきます。亡くなった自分の弟と間違えて話しかけてくるからです。でも、お母さんにはその弟になりきるように言われてしまいます。嘘をつくことは良くないんじゃないか。信也が受け入れられないでいると……。そのうちに色々な人がひいおばあちゃんの元へやってきて語り始めます。たくさんの優しい嘘との出会いに信也の心も少しずつ塗り替えられていくのです。

他にも『しっぱいにかんぱい!』や『0点にかんぱい!』など。低学年が絵本から読み物に移行するにはぴったりの、自己肯定感を育む楽しいお話ばかりです。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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