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寝坊助さんの起床大作戦

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 寝坊助さんの起床大作戦

梅雨入りしましたね。鬱陶しい日々が続くと、人間の方は活動が鈍り、起き上がるのが億劫になります。朝が苦手なお子さんなら、なおさらです。もうグダグダではないでしょうか。

私が聞く子供の困りごとでダントツ多いのは、この起床問題。友人たちは口を揃えて「ウチの子、朝、起きてくれないのよ~」というのです。どうしたら起きてくれるか、あれこれ試行錯誤を繰り返しているけれど、得策が浮かばないと。

なので今日はどうやって目覚めてもらうか、かつて寝坊助だった息子を思い出しながら綴ってみたいと思います。大体、皆さんがトライしているのはこんな感じ。

きょうだいも手伝って一家総出、あるいは入れ替わり立ち替わりで「寝坊助」を起こしに行き、何度も声をかける。時間をかけた末にやっと、どうにかこうにか起きてくれる、などという話には、「うちも」「うちも」という相槌が飛び交います。みんな同じなんですね。

詳しく聞いてみると、声のかけ方も工夫しているとか。

30分ぐらい前に小声で声をかけ、それから10分間隔で。だんだんと5分おきに、徐々に声量を上げてゆきタイムリミットを感じさせるのだとか。いきなり大声で起こすと子どもの機嫌が悪くなる。それにギリギリの時間になって初めて声をかけようものなら「なんでもっと早く起こしてくれないのー!」と大惨事が巻き起こる。だからそうしているのだそうです。細かい調整までしてお疲れさまです。

あるご家庭では、とうとうリビングのソファーにシーツをかけて寝かすことにしたとのこと。朝の家族の動きやテレビの音で起きるかもしれないという試みです。その後、友人からは何も聞かないので成果があったのかもしれませんね。

そのほかにも、時計を何個もセットするとか、冬なら布団を取っ払って寒さで起こすとか、濡れタオルで顔を拭いてあげるだとか。昭和の頃からの目覚まし作戦は「寝坊助」を持つ家庭の登竜門でしょう。

中には、完全に本人任せにしているというママも。「もう、知らんぷりよ!」と。その肝っ玉ぶりには頭が下がります。慌てようが遅れようが、それは本人の責任だから、遠目に見守るしかないと言うんですね。確かに子どもが成長してきて、反抗期も影響してくると、本人に任せる方がずっと効果的なのかもしれません。当の本人は、ギリギリにせよ、学校には間に合っているようなので、この方法も成功してるのでしょう。

我が家も然り。ちゃんと経験しましたよ。

小さい頃から得意なことといえば「早起き」だという私からすると、不思議で仕方がありませんでした。でも不思議がってばかりいても、息子の寝起きの悪さが改善するわけでもないので、考えました。あれこれ試行錯誤もしました。

そして手を尽くした甲斐あって、なんと6年生の今、平日はほぼ息子に声をかけることもなく、自分ですっくと起きます。早起きがしたい。なぜなら、やりたいことがたくさんある。だからなのだそうです。昔を思い起こしながら、その姿に感心しているこのごろです。

では、ここに至るまでに我が家でどんなことをしたかというと、こんな風です。

ふにゃふにゃ泣いて自分で目覚めていた乳児期を経て、1歳近くなったころです。

保育園に通い始めると、親の仕事の時間と登園時刻の都合があるので、無理やり起こさないといけなくなりました。ここからが我が家の戦国時代。冒頭の友人たち同様、「起きてくれない」「機嫌が悪い」「無理やり起こせば大惨事」の悩みと毎朝戦いました。

でも、やがて戦いにも疲れます。もっと楽しく起こしたい。

そこで考えついたのが、目を覚ますと良いことがある、という雰囲気を作ってみようという案でした。そうすれば、きっともう少し早く目を覚ましてくれるだろう、少なくとも機嫌は良いはず、と。

フランスで買い集めた童謡やわらべ歌集の一部。CD付きの美しい絵本で、言葉はわからないけれども擦り込むように息子に聴かせまました。寝かしつけにも寝起きにもとても効果的でしたよ。左から、ポルトガルとブラジルの童謡、アルメニア、ギリシャ、クルド、トルコのわらべ歌(どちらもDidier Jeunesse )。右はフランス語のわらべ歌集(Gallimard Jeunesse 社)。

そこで持ち出したのは、擦り込むように効かせてきたモーツアルトや、世界の童謡、わらべ唄。フランス語、ロシア語、アルメニア語のものなど。異国の言葉だろうと、童謡やわらべ唄というものは、メロディーなのか、周波数なのかわかりませんが小さい子の心を癒す作用があるものだと身にしみて感じました。起床時間の少し前から小さめの音量でかけはじめ、それから息子を起こしてみると、泣き出してもすぐに止むので、毎朝この方法を取り始めました。きっと、起きてみると楽しい音が聞こえる、そんな風に感じたのかもしれません。

やれやれと、肩をなでおろしましたが、子どもは成長します。やがてこの目覚ましも通じなくなりました。

幼児期ごろになると、はたまた寝起きが難しくなったのです。

そこで、今度は音楽の代わりに本を持ち出しました。朝の読み聞かせをトライ。読み聞かせは寝る前にというイメージを払拭して、目覚ましにも使ってみようと思ったのです。やはり目的は、起きてみると楽しいことがある、と思わせることです。この年代の子には面白い話を聞かせるに限ると。

もちろん「はい、読みますよ」と声をかければパキッと起きれるわけもなく、まだ目も開かなければ、意識も半分夢の中という状態です。まどろんでいても、少しずつ音楽の時と同じようにお話が耳から入れば良いわけです。絵が少ない昔話や児童文学のようなものは、ここにぴったりでした。

起床時刻の10分ほど前に声をかけ、昔話を読み始めると、なんと想像以上に早く目をこすりながら耳を澄ませ、文字を追おうとしました。日本の昔話はもちろん、世界のさまざまな童話集は1話ずつ。長い長いお話は数日にまたがって読み進めました。するとどうでしょう。クズったり、腹を立てたりすることもなく、お話を読み終える頃にはすっかり目が覚めていましたよ。

朝の慌ただしい時を削ってでも作ったこの10分は、今となっては掛け替えのない思い出です。

使ったのは例えば、こんなお話集。

『こどものに聞かせる世界の民話』(矢崎源九郎:編/実業之日本社)

世界のありとあらゆる国の民話がたっぷり集録されている、お話の宝箱のような本です。どこから読んでも良いので、私は偶然パッと開いたところをその日の朝の読み聞かせにしました。はじめに、今日はどこどこのお話ですと伝えると、フランスやロシアといえばなんとなくイメージが湧く息子も、ウルグアイ、セルビア、ガーナなど、聞き慣れない国名に、まず興味津々。もう、その時点からワクワク。早く起きたいという気持ちが高まるようです。ついでに地球儀で場所も確認してみたりもして楽しませました。当然お話自体も多種多様で、子供部屋にいながら世界の裏側までも旅できる素晴らしさがあります。一方でどこか日本の昔話にも通じるようなくだりもあり、そうした相違点や共通点を見つけるのも面白い。「読み聞かせる」とだけあってとても読みやすく、どのお話もすっと心に入ってきます。

『世界のむかしばなし』(瀬田貞二:訳、太田大八:絵/のら書店)

どのページにも挿絵があり、文字も大きめ。小学生なら一人読みにもオススメですが、もちろん読み聞かせても。北ヨーロッパで語り継がれた14話のみですが、5分ぐらいで読める短くて愉快なものばかりです。時間のない朝でも、親子の間にすぐ笑いが生まれるでしょう。思い出せば、集録されているロシアの民話『だれがいちばん大きいか』の、常識をはるかに超えた展開に、「ええ!」「ええ!!」と驚きながら息子と大笑いしましたよ。

小さいお子さんには『おねぼうさんはだあれ?』(片山令子:文、あずみ虫:絵/学研プラス)。

春の訪れに心を躍らせたウサギのミミナちゃんは、動物のおともだちを起こしに出かけます。「もう はるよ」。そう声をかけ、シロツメクサやスミレの花を順々に置いていきます。ポカポカと柔らかなお日様の光に、優しい春の香りが漂う朝、一番のお寝坊は一体誰だったでしょう? 何度見ても可愛い作品で、心が浮き立ちます。小さい子の朝に、ぜひ。(3歳から)

目覚めると、この世の中はたくさんの喜びで溢れている。そんな風に感じてくれたら。

大人の貴重な朝の時間を少しだけ削ってみてはどうでしょう。もっと貴重なものが子供に届くはず、と思っています。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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