子育てママのお悩み解決メディア
プライド月間、レインボーを知ってほしい

連載:絵本とボクと、ときどきパパ プライド月間、レインボーを知ってほしい

6月はプライド月間でしたね。

特に海外では大規模な「LGBT+」のデモとパレードが混ざったような祭典が行われます。シンボルはレインボーカラーの旗。LGBTはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略だということは、かなり世間に知られるようになりました。さらに最近では、LGBTにQや+を加えて、性趣向や性的アイデンティティーのマイノリティーは4つに限らないことを伝えるように。自分の性的趣向または性認識がわからない、あるいははっきりさせようと思わない、それがQ(クエスチョニング)。性についてカテゴライズしない、という選択があってもいいということです。+は、最近も話題になった、ノンバイナリーやアセクシュアル、その他など。

なんだかたくさん名前がついて覚えにくいという方もいますが、要するに性的趣向やアイデンティティーは多様であるということです。多数派のヘテロセクシュアル(異性が好き)でシスジェンダー(生まれ持った性と性認識が一致)でなければ、LかGかBかTの四分割されるというわけではなく、まるで虹のように、さまざまなカラーがあり、交わり合って、グラデーションを成している。そんなイメージではないでしょうか。

今までの歴史を振り返ると、性的少数派の立場はだいぶ受け入れられるようになりましたが、私は「受け入れ」という言葉が使われなくなるのが理想だと思っています。そこに「居て」当たり前、という認識になれば良いなと。

でも、この「プライド月間」が存在するということは、LGBT、それからそのほか、プラスアルファを含んだ人たちの人権保護がまだまだ必要だということを教えてくれます。みんながお互いの違いを自然だと思える日が早く来ると良いですね。

そこで毎回驚くのは、子どもたちの世代の認識です。私たち大人より遥かにボーダーレスで、息子なんかは、どこかの議員の差別的な発言を聞けば、呆れていますし、LGBTはもとより「ノンバイナリー」「アセクシャル」と聞いても、考え込む様子はないのです。「それがどうしたの? 良いんじゃね?」という感覚です。

多様性を受け入れるというより、もうすでに当たり前のこととして、息子を取り巻く世界に存在している。そんな若い世代は頼もしいなと思う母の私です。

話は飛んで、息子と国語の問題を競い合っていた時のことです。歴代作家と作品を結び合わせる問題で『よだかの星』とくれば「それは宮沢賢治!」、「『小公子』は?」に「バーネット!」などとやりとりをしていました。

「じゃあ『トロッコ』は?」と息子に聞かれ、私は「ええっと、ん? 宮沢賢治じゃないの?」。

「ブッブッー」とNGを出され、答えを教えてくれました。「芥川龍之介!」

好きな作家なだけに、有名とされる短編も知らなかったことが恥ずかしくて、こんな返事で誤魔化しました。

「ママね、芥川龍之介といえば『奉教人の死』が好きなのよ」。

パリの高校生だった頃、日本語補習校の先生が見事なお話をしてくれたことがありました。

『奉教人の死』(新潮社)っていう話があってね」と先生が語り始めたその物語は、「ろおれんぞ」という名の美しい少年が主人公で、その信仰心の深さを綴ったものでした。思春期だった私にとって圧倒的な吸引力があり、胸の高鳴りとともに迎えた衝撃の結末に打ちのめされたのは忘れもしません。

息子にこの話はすごいんだと力説して、ふと気付きました。これ、ちょっと、レインボー?

ネタバレしてしまったら勿体無いので、これ以上はとても書けませんが、短いのでぜひ手にとって、中・高校生ぐらいのお子さんに読んで差し上げて欲しい。最初は読みづらい安土桃山時代の口語文体も、慣れれば美しい。かつての私が感動を共有したいと呟いています。

ということで、今回は、多様性が当たり前と小さいうちから感じられるような絵本を選んでみました。

『王さまと王さま』(リンダ・ハーン、スターン・ナイランド:絵と文/ポット出版)

世界中どこでも昔話では、王子様とお姫様が出会うお話ばかりです。でも、本当は異性を好きになる人ばかりではありません。王子様と王子様が一緒になるお話だってあってもいい。むしろあるべきです。そんな思いから生まれたこの作品は、話の流れこそシンプルですが、実はそこがとても良い。王さまが別の王さまに一目惚れしたって、取り立ててびっくりするような、衝撃的なことではありませんよ、ということです。恋に落ちた二人がとても愛おしく思えるだけ。絵の具や色鉛筆、和紙や封蝋まで用いたグラフィックはとてもユニークでおしゃれ。見入ってしまいますよ。(4歳ぐらいから)。

『マチルダとふたりのパパ』(メル・エリオット:さく/岩崎書店)

パールは学校に新しいお友達がやってくることを知ってワクワク。会ってみるとなかなか気が合いそう。名前はマチルダ。ある日、パールはマチルダのお家に招待されます。きっと楽しいことが待っているに違いない。そう期待したのですが……。思っていたのと違う、という展開がさりげなく素敵な作品です。見返しの部分もお見逃しなく。さまざまな家族構成の絵が可愛いんです。(幼児から)

『いろいろいろんなかぞくのほん』(メアリ・ホフマン:ぶん、ロス・アスクィス:え/少年写真新聞社)

今まで絵本の中で目にした家族の形は、お父さんがひとり、お母さんがひとり、男の子と女の子が一人ずつ、それに犬と猫が一匹ずつ。でも実際にはいろいろな家族がいます。お父さんだけの家、お母さんが二人の家、おじいちゃんおばあちゃんと暮らす子も……。また、住む家の形もさまざまですし、家で勉強や仕事をする人もいます。休みの過ごし方だって、みんなそれぞれ。食べ物も服装も。さまざまな違いをユーモアたっぷりに映し出した、一家に一冊欲しい作品です。違いがあって当たり前、ということに心が和み、ほろりとしてしまいました。(低学年以上向けですが、小さい子でも)。

たくさんの違いに出会って、お互い心が通じ合えますように。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

Anneさんの記事一覧 →