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10センチ伸びた傘と土砂降りのお話

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 10センチ伸びた傘と土砂降りのお話

7月になると、学校は短縮授業となり、ギラギラと照りつける太陽の下で、プールからは水しぶきが飛ぶ。

私の子どもの頃はそんなイメージでしたが、今は成績表が配られるころになってやっと空が晴れるのです。気候がずいぶん変わりましたね。梅雨と呼ばれる時期は7月中旬にまでずれ込むのですもの。しとしとと降り続く雨の中、アジサイにカタツムリが這う、というのんびりとした景色は、少なくとも私はここ近年見ていません。

代わりに空から時々ドカンと落ちてくるのはゲリラ豪雨。河川氾濫、土砂災害、住宅浸水、などの被害は、台風の時期を待たずに通年発生し、死者や行方不明者が出るような危機感のある時期になったように思います。こんな水害は数十年に一度ほどだと思われていたのに。被害に遭われた方々のお気持ちを思うといたたまれません。

一方で、雨は自然の恵みであることも確かです。地面を潤し、作物を育て、豊かな水を与えてくれます。私たちの気持ちもしっとりと落ち着きますし、子どもにとっては遊び場でもあります。長靴で水溜りを蹴ったり、大きく口を開いて味わってみたり、雫がレインコートを伝うのをじっと眺めてみたり。誰もがそんな体験をしたと思います。

息子には自然の変化に合わせてどう暮らすべきかを考えられるようになって欲しい。それには、やっぱり雨と戯れる時間も大切だと思っています。

だから息子が傘を壊して帰ってきても、文句は言ったことはありません。もちろん、物を大切にするだとか、人に迷惑をかけないだとか、そんなような注意はしましたけれど。

雨の日だからこそ、傘を持っているからこそ、やってみたいこともあります。たとえば、くるくると回してしぶきを飛ばしたことだってありますし、閉じた傘をズルズルと引きずったこともあります。あるいは、お友達と傘をひっくり返して遊んだのは数知れないでしょうし、逆さにして雨を貯めてみたりもしたでしょう。先の部分がすり減ったり、肢が折れたり、ジャンプシステムがばかになったり、持ち手が曲がってしまったり。傘を一人でさせるようになった3歳ごろから今までの10年弱の間に、いったい何本買い直したことでしょう!

でも気づけば、ここしばらく新調していません。6年生にもなれば、なんと傘が壊れない!

もう十分雨と遊んだのでしょうね。

つい最近のこと、豪雨注意報が出ていた日ですが、いつものように息子の塾のお迎えに行きました。

門から出てきた息子と肩を並べて歩き、随分と背が伸びたなぁと思っていると、途端に雨が降ってきました。まさにバケツをひっくり返したような。

息子を見ると、55センチの傘が、ベトナムの園主型藁帽のように、頭の上にかぶさっています。雨に濡れないように、その下にまるまるように入っていて、気の毒なくらいでした。もう小学生用では小さいのね。

壊れたからではなく、成長したから傘を新調するのはこれが初めてです。

10センチ大きくした65センチの新しい傘が新しく玄関に並び、これを、雨の日息子は真っ直ぐにさして出かけるこの頃です。

今回は、シトシトではなく、ざっと降る雨がテーマの作品を選んでみました。

『雨、あめ』(ピーター・スピアー/評論社)

二人のきょうだいがお外で遊んでいると、急に雨が降ってきました。ああ、今日は外では遊べないなどとがっかりなんてしません。こんな時ならではです。傘をさし、レインコートに長靴姿で二人は出かけて行きます。蜘蛛の巣についた水滴。大きな水溜り。車が跳ね返す水飛沫。どんなものでも遊びに変わってしまうとっておきのひととき。家に戻って、温まる様子もほっとします。繊細な描写が素晴らしい、文のない絵だけを楽しむロングセラー絵です(2歳ぐらいから、大人まで)。

『たいふうがくる』(みやこしあきこ:作・絵/BL出版)

明日は海に行くんだと約束していたのに、台風が来るなんて。がっかりするぼくが迎えた夜。風や雨が吹きつける大きな音にドキドキしながら、心の大冒険へと飛び立ちます。木炭で描かれたモノトーンの絵は、子どもの緊張感や願望がダイナミックに表されていて、共感しないではいられません。ものすごい画力です。唯一カラーの水色に心も晴れ晴れしますよ(3歳ぐらいから)。

『雨やどりはすべり台の下で』(岡田淳:作/偕成社)

もしかして魔法使い?  雨森さんが通ると不思議なことが次から次に起こる。そんなエピソードを、夕立の雨やどりで駆け込んだ滑り台の下で子どもたちが語らいます。さまざまな年齢の子たちの視点から描かれる、どこか物悲しさや懐かしい雰囲気が素敵。オムニバスのように仕上がっているなんとも心温まる作品です。小さい子には1話ずつ読んであげても(中学年から)。

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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