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本好きの子どもと、夢中になれる絵本

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 本好きの子どもと、夢中になれる絵本

「図書室で本借りてきた!」

息子が学校から帰るなり、ランドセルをソファーに放り投げるようにそう言い放ちました。突然そう言われたら、反射的に何を借りてきたのか聞きたくなります。でも教えてくれません。

「当ててごらん」というのです。

なんでそんなクイズをしたがるのか。そもそも億とある書籍の中から、ジャンルは絞れたとしても、作者や題名までは言い当てられる筈もありません。

のっけから答える気ゼロで、「わかんない」と即答したら、不服な様子。どうしても当てて欲しいのでしょう。今までに読んだことのないような作品? それとも私が好きな作者? あるいは聞いて驚くような内容のもの?

そう考える余地もなく、即座にヒントを出してきました。

「やばい系」。

やばい系? どう、やばいというのでしょう。内容が怖いのか、際どいのか、それとも作者が風変わりなのか。本とは、概ね「やばい」と感じるスパイスの小包ではないでしょうか。だから面白いのではないでしょうか。そもそも書き手に「やばめ」なところがないと物書きなんて務まらないでしょう。こう考える私相手だものだから、そのヒントでは検討がつきません。

面倒くさくなって、「早く言ってよ」と一回催促すると、ウズウズしていたのでしょうね、あっさりと口を割りました。

「三島由紀夫だよ」。

初めて手にする、息子にとっての「やばい系」作者の本。禁じられた扉を開くような胸の高鳴りは、こちらにも聞こえてくるようで、おやつにも手をつけず、三島由紀夫を片手にダダダッと階段を上り、部屋に籠ってしまいました。

私のほうも、追いかけて題名を聞くような野暮はもうしなくなりました。そっとしておくのが一番。そんな年頃になってきたのだなと密かに思ったのと同時に、私が初めてこの作者の作品を手にした15の頃が蘇ってきました。

パリのド真ん中で、日本語に飢えていた私は、母の本棚から野良猫が餌を漁るように、日々日本文学を引っ張り出していました。そんな中でもこの作者の漢字五文字は、大人な雰囲気を放っていて、敷居が高いように思えたのは確かです。生涯や影響力はなんとなくは知っていました。だからこそ、手に取ってみたい、未知の世界を知りたい。そんな憧れを抱かせる作者なのでしょう。ついさっきの息子と重なりました。

でも、当時の未熟な私にとって、日本語を目で撫でる喜び以外は、文庫本の三島由紀夫は単なる背伸びでした。内容は十分理解できていなかった筈です。

高学年向けのダイジェスト版を持ち帰った息子のほうがちゃんと読みそう。それに当時の私よりはるかに読書好きです。やっとお座りやつかまりだちができるころから、本が好きでしたもの。

ぎゅうぎゅうに詰まった大人の本棚から本を引っ張り出すことからはじまり、それではと息子用の本を並べると、それからは夢中で開いては閉じ、閉じては開いて……。そして、本を手に持ち、テケテケと大人の方に。リビングにいるパパやママに膝の上にストンと座り、「読んで」とねだってくる毎日が長く続いていたものです。

ああ、懐かしい。先日読んだ漫画に、そうだった、そうだった、と共感し、思い出に浸ったのでした。

その漫画とは、『おとうさん、いっしょに遊ぼ ~わんぱく日仏ファミリー!~』(じゃんぽ~る西:作/祥伝社)

ウチの子然り、本好きの子どもの姿を、ありありと描いたものです。奥さんは冷静でポジティブなフランス人。元気な長男は小学生。そんな2人に見守られ、絵本と乗り物好きのパワフル2歳児と、そのパパがリアルでユニークなやりとりを炸裂させます。どうしてこんなに絵本に夢中になるのか。その謎を明かそうと脳内で苦戦するパパ。読んでいる私たち親も一緒になって、子どもの「夢中」を追いかけ、発達にはなぜ絵本という栄養が必要なのかを理解してゆきます。子どもが本を選んできて、ストンと膝の上にすわる。我が家のデジャビュに、おもわず「あはは」と声をあげて笑ってしまいました。ぜひ保護者のみなさんに。

そもそも子どもは絵本が好きです。絵本に触れる量や頻度にこそ差はあると思いますが、どの子もお気に入りの1冊や2冊はおうち、あるいは保育施設にあるはずです。

何度も読んで聞かせると、どんどん子どもがハマる。そんな絵本の代表格は、たとえば『きんぎょがにげた』(五味太郎:作/福音館書店)でしょう。

上記の漫画でも、「ごみたろー」と親しまれ、子どもあるある、次男の機嫌がなおる魔法の作者として挙げられています。この作品では、鉢から逃げ出した金魚はどこへいったかと探す、シンプルなもの。でも、隠れているものが見つかる・見つけるは、「いないいないばあ」の感覚と同じで、子どもの「好き」の基本です。金魚はどこ? と探し、開いたページの中に真っ赤な金魚をみつけるときの喜び。そして安心感。「あった!」「あった!」と指差す歓喜の声は、回を重ねるたびに大きくなるでしょう! 繰り返し読んであげることが、どんなに大切かが子どもの反応から伝わってくる作品です。(2才~4才むき)

ちなみに、『おとうさん、いっしょに遊ぼ~』では、西さんの奥さん、カレンさんの「同じ本を何度も読み聞かせすることは子供の発達に良いことだとフランスでは言われています」という台詞が載っていました。

そしてこんな作品を見つけました。『ハンダのびっくりプレゼント』(アイリーン•ブラウン:作/光村教育図書)

ハンダは、頭に乗せた籠に、果物を7つ入れました。お友達のアケヨに持っていくのです。どの果物が一番好きかな、とウキウキしながら歩いて行くと、草むらから次々に動物たちが顔を出し……。シンプルな繰り返しが楽しい上に、サプライズがあり、ご褒美もあり。果物と動物の名前に親しめるし、数の感覚の導入にもなって、絵も構成も、素晴らしい。子どもが何度も読んでもらいたくなるような仕上がりで、完璧だと思いました。モデルはケニアに住むルオ族の子どもたち。アフリカの熱い空気にも包まれるようです。

子どもには絵本に触れる機会をたくさん作って、たくさんの心の旅をして欲しい。そう強く思います。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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