連載:絵本とボクと、ときどきパパ 「丸焼きチキンとクリスマス料理の絵本」
先日、ママ友から超簡単ビュッシュ・ド・ノエルの作り方を教わりました。
簡単すぎて、フランスのお菓子作りが上手な友人達でさえ、面倒なケーキだと言っていたのは、私の勘違いだったのかと思うほど!
なので、クリスマスの日には自家製のビュッシュ・ド・ノエルでお祝いをしようかと思っています。
そもそも私はお菓子作りには消極的な方ですが、一方で、メインや前菜作りはわりと好き。昔は、とりわけクリスマスシーズンにもなると、メニューを考えることからワクワクしていたのを思い出します。
定番は鶏肉の類の丸焼き。母が住むフランスで年末を過ごすと、お肉屋さんには当然のようにジビエ類がぶら下がっています。その種類の豊富なこと! 七面鳥はもちろん、雉、ホロホロ鳥、鴨、ガチョウ、それにシャポンと呼ばれる去勢鶏……。どれにしようか長い時間吟味することと、お腹に栗のスタッフィングをこしらえて詰めるのが醍醐味でした。
過去形なのは、コロナ禍でフランスにここ数年行けていないので、豊富なジビエ類にお目にかかれないからです。それに、忙しくするのはキャパオーバーなので、育児中は、クリスマスメニューにも手間をかけないようになったという理由もあります。
最近のクリスマスディナーは、もっぱらローストビーフ。さっと表面を焼いて、アルミホイルとタオルに包み、クッションで挟んで火を通すというやりかたで、横着にもほどがありますが、育児中はこれでいいんですよ! みんなが一番好きな料理ですから。
ところが、昨年は、ローストビーフは作らず。
というのもシーズン前の宅配便のチラシを見ると、こんがり焼けた丸ごとチキンが載っているのを目にしたからです。ジビエではないけれど、これを電子レンジで温めれば、久しぶりのローストチキンだ。やはりなんといってもクリスマスらしい! と思い、注文したのです。25日に、パパの実家に持って行くんだと意気込んで。
ところが、届いた箱を覗くと、ドカンと真ん中に薄桃色の塊があるのです。ああ、よく注意して注文すればよかった。と後悔しても始まりません。こんがり焼けたローストチキンは、イメージ写真であって、売り物はというと、冷凍の、生の、丸ごとの、チキンだったのです。
チンすれば済むという話は飛んでしまい、試したこともない電子レンジのオーブンモードにチャレンジする勇気もなく、もっと慣れたレシピにすり替えようと、急遽解体することにしました。
せっかくの丸ごとでしたが、罪の意識と共にバリバリと包丁を入れることに。すると、思いのほかいい感じの骨つきチキンのバラが出来上りました。
コック•オ•ヴァンをつくろう! 独身時代、幾度も作った十八番。
そこからは、料理のモチベーションアップです。まず欠かせないのはブルーゴーニュワインでしょ、と酒屋に走り、それからマッシュルームとイタリアンパセリをわざわざ買い出しに出かけ、手間暇かけた鶏のワイン煮を作りました。
勢いに乗って、ついでに野菜のテリーヌも作り、クリスマスらしい品がそろったところで、パパの実家に持っていきました。横着クリスマスメニューからようやく脱出! と胸を張ったはいいのですが……。
あんなに頑張って解体した丸鶏。そして丁寧に煮込んだコック•オ•ヴァン。なのに、実家の皆んなは誰ひとり手をつけてくれませんでした。私がすっかり忘れていたのです。彼らは皆、体質的にアルコールが苦手だということを。アルコール分は十分飛ばしたつもりでも、苦手な人にはどうしたって難しいようでした。
でも良かったことがふたつ。
コック•オ•ヴァンで勢いに乗ったおかげで作れた野菜のテリーヌは、好評で瞬く間になくなったこと。それと、ワイン煮のほうは、唯一食べてくれたのは息子で、そのことによって、彼はアルコールOKな体質だろうと知ったこと。
食材とメニュー選びには失敗してしまいましたが、まあ、いいんです。次に生かしてゆけば。というわけで、クリスマスとなれば、あれこれ美味しいもののことを考えたくなる時期でしょう。そんな今、ぴったりの作品を選んでみました。
『はらぺこサンタのクリスマス』(はらぺこめがね:作、ほるぷ出版)
クリスマスの前夜、サンタさんは子どもたちにプレゼントを配りに出かけます。でも、実はお腹がペコペコ。ソリーから見下ろす山々や家々は、つい美味しそうなお料理に見えてしまうんです! シュトーレン、ミートローフ、そしてローストチキン! それでもサンタさんは頑張ってプレゼントを配り続けます。素敵なメニューが続々登場の、お腹の空く作品です。
『ちいさなねずみのクリスマス』(アン•モーティマー作•絵/徳間書店)
クリスマスは誰にとってもウキウキする日です。たくさんのプレゼント、華やかな飾りつけ、美しい歌声……。そして美味しそうなお菓子屋デザートがテーブルに並べば、誰だって手を伸ばしたくなりますね。 小さな可愛いネズミだって同じ思いです。繊細な絵で、クリスマスが待ち遠しくなる作品です。
『エーミルとクリスマスのごちそう』(アストリッド•リンドグレーン:作/岩波書店)
元気一杯のエーミールは、毎日大忙し。あれこれいたずらを思いついては、大惨事を巻き起こし、そして木工小屋に籠らされる、という繰り返しです。でも、本人に悪意はありません。純粋に良かれと思ってしたことが、発想がユニークなあまり、残念なことに周りから見ると「いたずら」に見えてしまうのです。その面白さに読む方はワクワク。どんどん惹きつけられる一方で、どんなことがあっても息子を肯定し続けるお母さんの姿勢に安堵感も覚えます。そして、次から次へと出てくるお料理の魅力的なこと! クリスマス用のメニューも豊富で、たまらなく食欲をそそりますが、その背景に織り込まれた、すべての人々が平等であるべきだという強いメッセージも素晴らしい! 小学2~3年生ぐらいから読めますが、大人も笑っちゃいますよ。