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「公民」好きとメディアリテラシーの絵本

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 「公民」好きとメディアリテラシーの絵本

しばらく間が空いてしまいましたが、もう2月末。そして3月になれば、あっという間に息子の小学校生活が終わってしまいます。

卒業式の息子の「衣装」を考え終えたところで、時の流れはなんて早いのだろうと感じているところです。

とはいえ、まだあと少しあります。息子には残りわずかな3学期を存分に楽しんでもらいましょう!

最終学年になってからというもの、学びの幅もぐっと広がり、あれやこれやと忙しそうでしたが、そんな中とりわけ息子が興味を持った授業がありました。

「公民」です。

かつての私だったら、ちょっと硬い内容に感じられ、あまりワクワクはしなかったでしょう。

でも息子の方は楽しそう。暇さえあれば国会の構成や、歴代政治家の功績や罪過の調べごとに没頭しているのです。時折、私の方をみて、あれこれ質問してきます。

「〇〇首相は、元何大臣か?」とか「〇〇事件が起きたのは、誰が何をしかたらでしょう?」とか。あるいは、私にはただのおじさんにしか見えない写真をipadで持ってきて「誰でしょう?」とか。

台所でバタバタと食器を洗う私は、「後にして」という言葉を呑んで、流しの蛇口を一旦閉めることにします。子供の話にはしっかり向き合って聞いてあげましょう、という子育てバイブルの教えを思い出しながら。

そうすると実に愉快そうに、あれこれ政治のことや国会のことを話してくれるんです。

これってウチの子だけかな、と思っていたら、そうでもなさそう。なかには、帰りが遅いと母親が心配していたところ、夜の駅前広場で演説を聞いていたんだという友人の子も。思えば、昔から将来総理大臣になるって意気込む子はよく居たし、クラスメイトには「首相」と「大統領」は違うといって論破していた子もいました。案外「公民」に興味を持つ子は多い。それがたまたまみんな男の子だったので、男子あるあるなのかという印象を、ついさっきまで持ってしまいました。

でもなんてこと! 公民の扉を開くのは男子だなんて、無意識に植え付けられたジェンダーイメージでしたね。今後どんどん「将来の夢は総理大臣」と作文に書く女の子が、増えていく世の中になってほしい。それには子どもをリードする大人の意識改革も重要なのでしょう。

ともあれ「公民」に関心があるウチの子は、日々新聞を読んだり、ニュースをみても、なんだかんだコメントしています。「言っていることとやってることが逆」と突っ込んだり「言ってることが表面的すぎる。もっと〇〇するべきだ」などと持論を呟いていたり。悪いことではありませんが、時々やかましい。学校の授業に加えて、メディアリテラシーも学ぶ機会があったからなのか、現代っ子ならではなのか、あまりメディアの情報をそのまま受け止めない。面白いです。

これからは激動の世の中と言われています。混沌とした情報の海で、溺れずに完泳を目指すには、メディアの誘惑に対してタフでなければならないでしょう。いったいどうやったらタフになれるのか。きっと教育現場は子ども達にどう教えるか模索してくれていると信じたい。一方で、学校にお任せではなく、お家でも親子で考え、語りあって、対コロナだけでなく、対メディアの免疫力をつけていけたらなと思うこの頃です。

というわけで、メディアリテラシーへのやさしい導入を、と絵本を選んでみました。

本当はなにも「メディアリテラシー」と気負わなくても、昔話などには「情報」と向き合うための教訓が盛り込まれているものです。ごく小さい子には、じゃんじゃん昔話を読んで聞かせればいいと思います。

たとえば、この作品はどうでしょう。

『めんどりのペニー』(ポール・ガルドン:おはなしとえ/童話館出版)は、フィンランドやイギリスにもある昔話を思わせる内容です。

ある日、めんどりのペニーが、地面の落ち葉をひっかいていると、頭の上にどんぐり落ちて当たってしまいます。突然の衝撃に慌てたペニーは、大変なことが起こった、きっと空が落ちてきたに違いないと思い込んでしまい、王様に伝えなくてはと使命感に駆られ走ります。そこに雄鶏やカモ、それにガチョウや七面鳥が現れます。鳥仲間たちは、つぎつぎにペニーに同調し、みんなで先を急ぎます。どんどん行くと、今度は狐に出くわします。訳をじっくり聞いた狐は、それなら、と近道を教えてくれますが、案内してくれたのは……。慌てること、無知でいることは、不安にかられやすくなり、そうなったときこそ、間違った情報に振り回される危険性を描いているとも取れます。谷川俊太郎さんによる訳もリズム感あって読みやすい。

似たような作品に、イギリスの昔話を元にした『たいへんたいへん』(福音館書店)、インドの昔話を元にした『にげろ! にげろ?』(ジャン・ソーンヒル:再話・絵/光村教育図書)があり、後者のほうは、ノウサギが主人公。

ノウサギは、マンゴーの実が落ちた音に驚き「世界が壊れ始めた」と騒ぎます。そして森の仲間を引き連れて、王であるライオンに報告せねばと走ります。が、さすがは賢者。冷静にうさぎの話に耳を傾けると、静かに尋ねます。実際に見たことなのかと。思い込みや不確かな情報にたよらず、真実はこの目で確かめるべきだという教え。タペストリーのような美しい絵も見応えあり。

もっと馴染みのあるお話では、アンデルセンの『はだかのおうさま』も然り。

メディアリテラシー入門とも見て取れるでしょう。一国を治める王様だというのに、興味のあることといったら華やかな服のことばかり。そんな王様は詐欺師のいい鴨です。「ひどく愚かな者には決して見ることのできない服」を拵えるという2人にまんまと騙されてしまいます。ところが、おうさまだけでなく、周りの人々も、愚か者だと思われたくないがゆえに、口々に架空の布を美しいと褒め称えるのです。今回はバージニア・リー・バートンの絵による『はだかのおうさま』(岩波書店)を選びました。躍動感ある絵も素晴らしい。街の人々も家々も、馬車も馬も家来も、そして肝心の王様も、みんな一緒に架空のものにあやつられてしまう、大衆扇動を思わせます。

小学高学年から中学生にはこの絵本を。『二番目の悪者』(林木林:作、庄野ナホコ:絵/小さい書房)。

金色に輝く立髪が美しい「金ライオン」。我こそが次の王に相応しいと思って誇らしげ。ところが、街外れに住む心優しい「銀ライオン」がどうやら優位だと耳にしたとたん、嫉妬のあまりありもしない噂を広めてしまいます。そんな噂が広まるとどうなるか。偽りの情報を流す罪、それを鵜呑みにする罪。そうしたことについて考えさせられ、大人もはっとさせられる内容です。全国学校図書館協議会選定図書。

そして小学生向けの参考書として、『ネットのルール』(旺文社)

息子もハマった『学校では教えてくれない大切なこと』シリーズの第12巻です。インターネット上に書かれている情報やメッセージが、正しいことなのか、危険なことなのか。そういったことを見抜くための基礎的な解読法や、情報を発信する側に立った時の基本的なルールなどを漫画でわかりやすく説明してくれています。読んでいる息子を見ていると、楽しそう。どうやら、小学生がフツーに読めて、フツーにウケる、という仕上がりになっているようです。

さて、最後に。

今回を持って、この絵本紹介ブログ『絵本とボクと、ときどきパパ』は最終回となります。かれこれ4年あまり続けさせていただき、お付き合いありがとうございました。このページが、絵本を手に取るきっかけになったり、子育てエピソードに共感していただけたとすれば、とても嬉しく思います。また、表現が不器用だったり、説明が不十分だったりして、違和感を感じられた方がいらっしゃるとすればお詫び申し上げます。私自身は、毎回このページを綴るたびに、子育ての楽しさ、絵本の素晴らしさ、そして両者が好きな自分を再確認し、幸せな時間を過ごさせていただきました。

またどこかで絵本を通じて皆さまにお会いできることを楽しみにしています。

長い間ありがとうございました。

アンヌ

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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