
連載:絵本とボクと、ときどきパパ 冬の絵本と焼嗅のこと
この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学2年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。
焼嗅は子どもに教わりました

先日は節分でしたが、みなさんも豆撒きはしましたか?
実は毎年、よそのお宅は「福は内!」をどのようにやってるんだろうと気になります。あれって、思いっきり家の中に豆を飛ばしたら、お掃除が大変ですよね。
なので我が家では、玄関にだけ投げて良いことにして、家の中には撒き散らさないルールで、さらにご近所に遠慮して控えめな声量で、今年も謙虚に「福は内!」をしました。
来年こそは手間のかかるお掃除も覚悟で、思いっきり豆を撒き、堂々と福の神を招き入れたいものです。
ところで、この節分行事に「柊鰯(ひいらぎいわし)」というものがあるというのを、実は私最近知りました。
柊鰯そのものは、確かに昔から見たことはあったのですが、トゲトゲした柊に鰯の頭がぶっ刺してある様子がどうしても物騒に思えて、見かけても「この家、危うし」と横目で睨むぐらいの気持ちで前を通っていました。
それが実は、なんのことはない。節分行事の一環で、鬼を追いやるただの魔除けのようなものだそうですね。教えてくれたのは、ウチの子です。
5歳ごろのことです。新しい言葉を教わって嬉しかったのでしょう、保育園の帰り道に電動自転車の後部シートから、やらた「やい、かがし」「やい、かがし」とリピートしてくるウチの息子。
私はその聞きなれない言葉に、つい「やい!カカシ!」かな? カカシが出てくる絵本でも読んでもらったのかな? などと、いつもの惚けた考えが頭をよぎりましたが、すぐさま、そんなわけないと却下。
「なあに?やい、かがし、って?」と尋ねると、「柊に、鰯の頭、焼いたのね、それを刺して飾るやつ、鬼が来ないため」などと説明してくれました。
帰宅して即検索してみると、あの物騒だと懸念していたものと一致するではないですか。
やいかがしは「焼嗅」と書くんですね。以降、節分といえば、豆の準備より先ず鰯。息子から教わったからでしょう、それほどのお気に入り節分アイテムとなり、今年もしっかり門に飾りました。
ちなみに、後日談があります。「やいかがし」を教わった翌日だったか、息子と近所のお稽古に行くと、柊に串刺しされた鰯の絵を見せてもらいました。
「これはなんでしょう」と質問する先生に、ウチの子は得意げに「やいかがし!」。すると先生は少し困った様子を見せて、そして「柊鰯ね」と返してくれました。
どうやら西日本では「焼嗅(やいかがし)」、私が住んでいる東日本では「柊鰯(ひいらぎいわし)」と言うようですね。でも、私は耳には、あの自転車の後ろからの可愛い「やい、かがし」が残っています。
さて絵本です。
時期すでに遅しですが、節分といえば、『かえるをのんだととさん』(福音館書店)をオススメしたいですね。

ウチの子に散々読んで聞かせたお気に入りの昔話絵本ですが、地域のお話会でも好評で良く読みます。お腹の具合が悪くなった「ととさん」にお寺の和尚様が色々とアドバイスをする話で、ととさん、カエルをのまされたり、ヘビをのまされたり、挙げ句の果てには鬼まで飲まされて……、というシュールな展開です。
テンポの良い文は読み手にも心地よく、おもしろ系です。
あと、雪が降ったときには『きらきら』(アリス館)も良いですね。雪の結晶の写真絵本です。

青と白のコントラストが美しい吉田六郎さんの写真に、谷川俊太郎さんのやさしい言葉が重なり、3歳から大人まで楽しめます。
結晶の宝石のような幾何学模様にはうっとりしますよ。短いので、お話会では時間が余った時にオマケで読んであげたりと、重宝してます。
それと、この寒い時期、『おふろだいすき』(福音館書店)で温まりましょう!

林明子さんの絵と松岡享子さんの文。私がとても好きな絵本作家さんのうちのお二人です。子どもならではの素敵な空想世界がお風呂場いっぱいに広がる物語です。
実は以前、これをウチの子に読みながら、この男の子みたいに一人でお風呂に入れるのはいつなんだろう、と思っていました。今やウチの子は8歳、一人でも入っています。
それでは、また!
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