連載:絵本とボクと、ときどきパパ 大人も楽しい、映画『パディントン2』とクマの絵本
この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学2年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。
パディントンとクマの物語
週末はどのようにお子さんと過ごしてますか? 我が家はパパがリードするお出かけが多いのですが、出張などで不在の時は、私が担当。
子どもの意見を聞きつつも、どうしても私の嗜好に連行させるような過ごし方になります。まあ、当然と言えば当然ですよね。親の趣味が過ごし方に影響するのは当たり前。野球が好きなご家庭ならキャッチボールをしたり、音楽家ファミリーなら演奏会に行ったり、テレビを観ながらのんびり過ごしたいパパやママなら、一緒に番組を楽しんだり意見交換したり。
私は大概、映画や展覧会、書店や図書館です。暖かくなれば野山にも行きますが、まだ春は遠い。
というわけで、先日もパパは出張不在の週末。自ずと『パディントン2』を観に行くことになりました。
『くまのパディントン』といえば、有名な児童文学ですが、絵本バージョンもあり、私は、幼少の頃、幾度となく母に読んでもらった記憶があります。
私も息子に何度も読んで聞かせましたが、読み聞かせながら私自身が1ページ1ページ鮮明に覚えていたことに驚きました。ただ絵を覚えているだけでなく、五感を通じた体感記憶として残っているんです。
どういうことかというと、例えば、パディントンのスーツケースの、使い古されたなめし革の感触や匂い、ママレードの甘くとろーっとした味わい、お風呂の湯気がもうもうとしている感じ、ソファーでくつろぐときの温かさ、などです。
当然、本当に触れたわけでも味わったわけでもないのですが、絵本から様々なことをイメージして擬似体験した、そんな経験が記憶に刻まれてるんですね。きっとウチの子も同じような絵本体験をしているような気がします。
そもそも絵本とは、五感を震わせ、様々な感覚を与えてくれるものだと思うんです。それで私はというと、小さいとき、パディントンのママレードに憧れて、家の戸棚にあったものをドキドキしながら舐めてみたことがありました。でもその味は疑似体験とはだいぶ違いましたね。苦い…。
そんな思い入れのある『くまのパディントン』絵本。
私が母から読んでもらったのは左、ウチの子にも左(偕成社、マイケル・ボンド・著、フレッド・バンベリー・絵、中村妙子・訳)。新しいバージョンは右(理論社、マイケル・ボンド・著、R.W.アリー・絵、木坂涼・訳)。どちらも5歳ぐらいから。
好みが分かれるかもしれませんが、どちらも可愛いですよ。
映画『パディントン2』も想像以上に面白かったです。パディントンが繰り広ける失敗の連続には、大人の私も思わず声を出して笑ってしまいましたし、ポジティブ思考の天然キャラには癒されるというより元気をもらいました。
それに個人的には、キャストの確認をせずに行って良かった! 思いがけずヒュー・グラント氏が登場して、心躍りましたね。いくつになっても衰えない美貌にズッコケお茶目キャラ、まるで神業のキレッキレな演技。久しぶりに観れて嬉しかったです。
そんなわけで、上映後の私はそれはもう上機嫌でした。きっとウチの子も楽しかったに違いない。
「ね、どうだった?」と期待して聞いてみると、返事は「ん?ふつー」と。
私は思わず、「ムッ!」ですよ。
まるで反抗期かのようなぶっきらぼうで愛想のない返事。そもそも連れてきてもらって、その言い方はないでしょう。
その後私がどうしたか、想像できますよね。ダラダラ、クドクドと、嘘をつく必要はないけれど、感謝の気持ちを込めるべきだとか、他の言い方があるだとか、なんだかんだ言い連ねてしまいました。
育児参考書的にはまぎれもなくNG。それにまだ8歳。ある程度は仕方がないのに、あーあ、また上手く対応できなかったと落ち込む母の私。それでもどうしても、どういう意味で「ふつー」と言ったのか知りたくて、あれこれ聞いてみました。
どうやらウチの子が言いたかったのは、「ほのぼの、面白かった」「可愛かった」ということらしいです。いろいろ感じたことを言葉で表現するのは、大人でさえなかなか難しいものです。でも、少しずつで良いから、言葉の使い方、感謝の伝えかた、親しき中にも礼儀ありなど、大切なことはきちんと教えていくべきだと、改めて思いました。しかし難題ですね。
さて、クマといえば、絵本にも登場回数の多い動物です。2月19日は雪解けが始まる「雨水」という日だったそうですが、そんな2月末にぴったりの、しかもクマが登場する素晴らしい絵本があります。
『はなをくんくん』(福音館書店、ルース・クラウス・著、マーク・シーモント・絵、きじまはじめ・訳)です。有名すぎてわざわざ紹介するまでもないかもしれませんが、私はとても好きです。
ぜひ、お子さんが小さいうちに、なんどもなんども読んでいただきたい。
冬眠から目覚めた動物達が、小さな春めがけて、猛ダッシュするという、シンプルですがドラマチックで躍動感ある物語です。3歳から。
あと、クマの絵本もう一冊。『しろくまのパンツ』(ブロンズ新社、tupera tupera・作)。ちょっとした仕掛け絵本です。
こちらは図書館のお話会のプログラムに組み込んだ一冊で、先輩が読みましたが、とにかくウケました。
パンツをなくしたしろくまが、ねずみさんの助けをかりて、いろいろなパンツに出会うお話。まずは、赤いパンツを外さないと本が開けません。
装丁からすでに高いデザイン性とユーモアがあり、ストーリーの展開も意表をつくもので、なかなか楽しいですよ。2歳ぐらいから、でしょうか。
ちなみに、ウチの子は先日自分で読んで、「赤ちゃんぽいけど、可愛い」とクスリ。小学生も喜ぶようです。
それではまた~!
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