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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

映画『子どもが教えてくれたこと』と、不安と退屈を楽しみに変える絵本3冊【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2018.06.25

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


子どもが知っている、ありのままの楽しみかた

梅雨に入り蒸し蒸しとしてくると、あの、いやぁーな、蚊のお出ましです。私は蚊がとても嫌なので、見かけようものなら血眼になって、両手で挟み撃ち。パチン、パチン、とやっつけます。「あ、蚊が!」と言って、パチン!という具合に。

私のその姿を見た2歳のころのウチの子は、同じように「かが!」と言ってパチン!と真似て可愛かったのが思い出されます。まだ蚊の存在も知らない、刺されると痒い虫だということも知らないころの話です。それが今は、「あー、もー、蚊の奴め!」と言って、刺されたところを掻きむしるように。そんな息子の足に虫除けスプレーしたり、ムヒパッチをつけてあげたりしていたら、シャルルのことを思い出しました。

シャルルとは、蝶の羽のように繊細な肌を持った男の子。

痒いな、痛いな、と思うことが多い中でも楽しく日々を送っている、映画の主人公のうちのひとりです。

題名は『子どもが教えてくれたこと』。シャルルの他に、アンブル、カミーユ、イマド、テュデュアル、の5人の子どもたちの日々を追う、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督のドキュメンタリー作品です。この子たちには、楽しい、ユーモアがある、可愛いなどのほかに、難病を患っている、という共通点があります。

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ただしこの作品は、「病気」というものにフォーカスした医療ドキュメンタリーでもなければ、「辛さ」をクローズアップして偽善を煽るような「お涙頂戴もの」でもありません。人生の愛しさが写し出された気取りのない感動作です。

カメラは5人の子どもそれぞれが、家族の愛に包まれながら一時一時を大切に暮らしている姿を追います。家で過ごす子もいれば、学校に通う子もいれば、病院で平日過ごしている子もいますが、どこであれ、まず最初に日本の私たちが驚かされるのは、大人と子どもの対等さ、でしょう。子どもをやたら子ども扱いしない。

例えば医療現場では、子どもの「知る権利」を尊重するため、本人にダイレクトに、分かりやすく、論理的に状態を説明していて、ドキッとするほどです。理性でもって感傷的にならずに、病気と向き合うところは、とてもフランス的だと思います。文化が違うのでそのまま真似たほうがいいとは思いませんが、参考になることも多い。また、親たちの子どもへの声がけも、優しさや温かみがありながらとても冷静で、なるほど、こういう風に対応すればいいのねと、子育てのお手本にしたいやりとりが、そこここにあります。

でも、何より魅力的なのは子どもたちです。演劇が得意なアンブル、サッカー少年のカミール、賢いイマド、花を愛でるテュデュアル、優しいシャルル。シャルルの親友ジェゾンも忘れがたい。どんな状況でも子どもたちは遊びを考え出し、楽しみを生み出すものですね。子どもらしい笑い声を響かせるなかで、当然ながら時には辛かったり悲しかったりもします。

そんな日々から生まれる、彼らの言葉や表現の美しさ、さらには機知に富んだ考えに、もはや小さな哲学者のようだと思わないではいられないくらい、私たちのほうが支えられていきます。この子たちに、「ありのままでいい」という安心感を与えられてしまう、という素晴らしさ! 何度でも観たい作品でした。

ちなみにウチの子には、シャルルの看護師さんの要領で、「ほーら、これでよし、魔法のムヒパッチでしょ~」とやってみました。

7月14日からシネスイッチ銀座、ほか全国順次公開ですので、ぜひ、ぜひ!

ちょっと不安、だいぶ退屈……そんなときに読みたい絵本

さて、絵本です。この子どもたちに限らず、どんな子も病気や怪我のひとつやふたつはしたことがあるでしょう。ベッドで寝てないといけなかったり、病院に行かなくてはいけなかったり。ちょっと不安、だいぶ退屈。そんなときにの3冊です。

『ひとまねこざる びょういんへいく』(M.レイ:文 A.H.レイ:絵/岩波の子どもの本)。あの、ジョージの病院版ですね。うっかり「はめ絵」(=パズル)を飲み込んでしまい、緊急入院したジョージ。ここでも相変わらずの大騒動を巻き起こします。

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知りたがりでいたずら好きな姿は、病院内の子どもたちにも大人気。読んでる方も思わずクスリとしてしまいます。病院が怖い、そんなお子さんには特にオススメです。ちなみに50ページほどあり、絵本にしては長いですが、このシリーズは息子の保育園で3歳ぐらいから年長までの子どもたちに大人気だったようです。私がお迎えに行くと、遊び場の必ずどこかで、先生が5~6人に囲まれて読み聞かせていました。

『ベッドのしたになにがいる?』(ジェームズ・スティーブンソン:さく/童話館出版)。ベッドでずっと横になっていたら、あれこれ考え過ぎてしまったり、とりわけ夜だと、怖くなってしまうのが子どもあるあるですよね。そんな気持ちに寄り添っておじいちゃんが孫たちに語るお話。

怖いのかと思いきや、ユニークな面白ワールドに展開してゆき、最後は楽しくおやすみなさいができる絵本です。童話館HPには3~4歳からとありますが、子どもにもよるかもしれませんね。

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『ああ、たいくつだ!』(ピーター・スピアー:作/評論社)。子どもはどんな場所でもどんなときでも、面白いことを考えつくすものだなぁ、とつくづく思った作品です。なんでも揃って持ってるけど、退屈でたまらない、なんていう子どももいるでしょう。でもそんな暇な時間も大切です。

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たっぷり退屈を味わったら、この兄弟みたいに大発明するかもしれませんよね。絵も細部まで楽しめます。3歳ぐらいからオールエイジ向け。まずは退屈しのぎに!!

そういえば、このごろは、ウチの子の一時期良く聞いた「ママ~、ぼくなにすればいい?」を耳にしないなぁ。やりたいことづくしで暇がないのかも…。

絵本片手に、どんなときでも楽しみを見つけられますように。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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