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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

暑い日は絵本の木陰へ。この夏、読みたい絵本3冊【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2018.07.25

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


自然の音に耳をすませば、動物達が見えてくる

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先日、夏休み中心地よく過ごせるようにと、山荘の空気を入れ替えてきました。滞在が短かったので、大したことはしませんでしたが、お天気もよく、あたりの緑も青々としていて目に心地良かったので、息子と雑木林の小道を少しばかり散策をしてみました。

そもそも我が家は、野山に行っても、がっつりアウトドアレジャーを楽しむとか、あるいは避暑地のおしゃれスポットに出向くとか、そういった特別なイベントは稀にしかしません。どちらかというと、ただ、散歩するとか、ただお庭でぶらぶらするとか、枯れ枝を少し集めたから、ちょっくら火を焚いてみるとか、そんなふうに過ごします。でもそれで私たちには十分です。

雑木林の小道を散策すれば、ウチの子はちょっと立ち止まって「自然の音を聞こう」といって、耳をすませます。そうすると何が聞こえるかというと、楓のひらひらとした葉がこすれ合う音が聞こえます。巣作りのためにヒヨドリが白樺の皮を剥がす音が聞こえます。それにアカゲラのドラミング。時期によっては、たまに遠くでケーンケーンとキジが鳴きます。そこで、ジビエ料理に目がない私がうっかり「美味しそう」などと言おうものなら、パパが横目で睨みます。

ある時は、ガザガザという物音がして注意深く見てみると、とんがった顔、太い尻尾の、なにかが横切ったこともありました。それが狐だと分かった時の、息子の喜びようといったら忘れられません。

耳を澄ませたあと、今度は目を凝らしてみると、足元にひらひらと見たこともない蝶が近づいてきました。即座に図鑑を開きます。すると「フジキオビ」。絶滅の恐れがある、蝶もどきの蛾です。珍しい昆虫に遭遇して、ときめきで胸がいっぱいになります。

ふとみると岩陰からカナヘビがこっそりこちらの様子を伺い、そして、さっと逃げてしまいました。その先を追うと、雑木林の木々に絡まった蔦が、だんだんと大蛇に見えてきます。そうこうすると、あっちの陰にもこっちの陰にも、葉と枝の重なりが、タヌキやら鹿やら、イノシシやらが潜んでいるかのように見えたり。あげくのはてに、そこらじゅうの木目が野獣の目に見えて、ヒョウも、ゾウも、ライオンもいる、という気になって、ジャングル探検ごっこが始まります。ウチの子とこんな風な話で盛り上がるわけです。

本当にどうということはありませんよね。でもこれが、私たちにとっての、とっておきの過ごし方なのです。

こんな感じで、一歩夏の野山に踏み入れると、『もりのえほん』(福音館書店)のような楽しみが広がります。安野光雄さんの繊細なタッチの、写実的な美しい森の絵。でもよく目を凝らして見ると、あれあれあれ? 色々な生き物が浮かび上がってきます。本を横にしてみたり、逆さにしてみたり。子どもも大人も夢中になります。

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見開きごとに、何匹の生き物をみつけられるでしょうか。そんな遊びをしながら、一家でページをめくってゆくのもいいですね。どうやら130あまりの動物が隠されているとのことですが、私たちはまだ全部は見つけていません。4歳ぐらいから。

その他に、夏だからこそ、『ウェズレーの国』(ポール・フライシュマン作、ケビン・ホークス絵、あすなろ書房)。私にとって、これほどまで好きな作品は他にないと言いきりたくなるほどの絵本です。私は大人になってから出会いましたが、これを子どもの頃に知っていたら、どんなに心踊る経験ができただろうかと悔やまれます。いじめられっ子の主人公ウエズレーが夏休みに思いついたこと。それは「自分だけの文明を作る」という壮大な自由研究です。

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庭に育った作物から、食べ物や飲み物を作り、生地を拵え、納屋を建てて、自分だけの時間で過ごすこと。やがてみんなが集まってきて…。だれもがウエズレーの国に魅了されていくお話です。小学生向けですが、「自由研究」とか、「人と同じじゃなくていい」とかいうような教育的、または道徳的な概念を教わる前にも是非、自由に感じて欲しい作品です。絵がダイナミックなので、引き寄せられやすいと思います。私だったら5歳からおすすめしますが、いかがでしょうか。

最近の子は昔話離れをしていて、現実的でない話をなかなか受け入れられないというような話を聞くことがあります。だからなるべく昔話をお話会でするようにしているという、お話の先輩もいるほどです。私は、昔話がとかく好きなので、息子にも散々読んで聞かせてきました。そうした甲斐あってか、ウチの子は一人でいるときも、昔話の絵本を引っ張り出してきては静かに読んでいることがあります。

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そんなウチの子のお気に入りの一冊、『ねむりむしじらぁ』(川平朝申・再話、儀間比呂志・版画/福音館書店)は、沖縄の昔話です。ハイビスカスやバナナの木も力強く彫られていて、夏にふさわしい。ふとウチの子に「このお話、好きだっけ?」と聞いてみました。すると「けっこう面白いよ」とのこと。怠けものなのに、ふとしたことで後からがんばるという男の変わりようが面白い、白鷺もかっこいい、とのことでした。(4歳から)

ギラギラとした夏の暑い日差しの中。時折、絵本の木陰で心も涼みたいものですね。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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はじめまして、アンヌです

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