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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

いつの日か思い出してくれればいい。モン=サン=ミシェルとフランス語絵本【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2018.08.25

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


モン=サン=ミシェルもフランス語絵本も、いつの日かきっと

8月16日には、『Hanakoママサマーフェスティバル』の絵本読み聞かせイベントにお越しいただき、ありがとうございました。お子さんたちの可愛いリアクションに読み手の私もとても楽しませていただきました。
また機会がありましたらぜひいらしてくださいね。

さて。前回に引き続きフランス滞在中のエピソードです。

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ノルマンディー地方に1週間弱ステイしておきながら、モン=サン=ミシェルを見に行かないなんてありえません。というくらい、私が好きな世界遺産です。今までに幾度も訪れていますが、今回は世界遺産とやらをなんとなく理解し始めた息子を、なんとしても連れて行きたいという思いがあって、私は出発前からモン=サン=ミシェル、モン=サン=ミシェルと騒いでいました。

フランスでなにがしたいか事前に教えてくれという母のメールにも、モン=サン=ミシェルに行きたい、あとは、「ジゴー・ダニョー・プレ・サレ」が食べたいだけ、と返事をしました。モン=サン=ミシェルの潟の草で育った、子羊の腿肉の丸焼きが食べたいと。

モン=サン=ミシェル周辺で育った子羊は塩分を含んだ草を食べているので、肉自体にすでに塩味が付いています。そのことを「プレ・サレ」と言います。他の地域のプレ・サレもありますが、昔一度食べたモン=サン=ミシェル産は、忘れられないほど美味でした。それくらいしかフランスでやりたいことが思いつかないくらい、この、海に浮かぶ小島の修道院で頭がいっぱいだったのです。

実際行ってみると、やはり何度訪れていても感動します。ロケーションも息をのむほどですが、修道院も素晴らしいです。何世紀にも渡って建設されたので、11世紀から16世紀ごろまでの、様々な建築様式が混ざり合っていて、その建築史を一望できる面白さはなかなかないと思います。

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本当に面白いッ!面白いよね、面白いよね!と、先を急ぐウチの子のTシャツを引っ張って、話かける母の私。「これはゴシック様式と言って縦にながーいでしょ、これはロマネスク様式と言って、上の部分がまあるいでしょ、窓が小さいでしょ」などと、なんとか興味持たせようとごにょごにょ説明しても、「そうなんだねー」と一言で放されてしまいました。がっかりするべきではないとは重々分かっていますが、正直言うと、ちょっぴり、がっかり。でもまだ小3。あたりまえです。

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一方、島から臨む景色の美しさと、飛び交う海鳥の優雅な姿には心が動かされた様子でした。「うわっ!すごっ!すごっ!」だそうです。

ところが、島を出る間際になって、思わぬ展開に。あんなに晴れていた空が一気に暗くなり、いきなりの強風とともに砂嵐が巻き起こってしまったのです。目も開けられないほどで、砂粒が頬に当たって痛い。ウインドブレーカーを羽織り、壁の陰で凌いでいると、今度はバラバラバラと雹が降ってきてしまいました。びしょ濡れです。それだけならまだしも、砂嵐以上に痛い!危険を感じるほどで、観光客は一気にそこいらに停留している送迎バスのドアをこじ開け、ぎゅうぎゅう詰めになって中に避難するという事態になりました。

世界遺産の素晴らしさを感じて欲しいと願って連れて行ったものの、息子の記憶に残ったモン=サン=ミシェルは、砂嵐と雹。「ママ、なんで、こんな日にモン=サン=ミシェルに連れてきたの?」と睨まれて終わることになったわけです。

でも、それでもいいんです。砂嵐と雹さえ記憶に残ってくれれば。いつの日か、ふと目にゴミが入った時、あるいは夕立に見舞われたときに、そういえば、モン=サン=ミシェルっていうところに言ったな、ひどい目にあったな、なんだか広々とした不思議なところだったな、と思い出してくれれば。そういえば、そのときママが、天井見ろだとか、窓がどうだとか、しつこかったな。どんな天井だったっけ、という風に、関心を持つきっかけとなってくれさえすれば。

絵本もそうです。喜ぶかなと思って買ってきても、リアクションが薄かったり、そっぽを向かれたり、そんなこともよくあるものです。ちょっとがっかりですが、そのまま子どもの本棚にそっと置いておくと、あるときふと、「これ読んで」と持ってきたり、あるいはいつの間にか一人ですっかり読んでしまっていたりします。タイミングってあると思います。なのでこちらの期待通りの反応がなくても動揺することはないですよね。

いつの日か興味を持つでしょうし、仮に持つことがなくても、そのことに関係のない別の道を歩んでいるのでしょうし。ただ、いろいろなことに、自主的に興味が持てるよう、その種蒔きは親としてしたいとは思っています。

フランス語にだって興味を持って欲しいとは思いますが、外国語の絵本は読んで聞かせようとしても最近は嫌がるばかりです。でも、ある日、どんなだろうと思って自分で開く日がくるかもしれません。見たことのある絵なら、なおのこと。

そう思って、フランスで人気の、日本の絵本作家の作品を持って帰りました。いわむらかずおさん、ヨシタケシンスケさん、岡田千晶さんの作品です。

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『14ひきのかぼちゃ』(いわむらかずお:さく、童心社)のフランス語版(L’école des loisirs)。息子も慣れ親しんだ、いわむらかずおさんの世界です。フランスの書店で、日本人作家の絵本を尋ねたら、真っ先にでてきたのがこの作者の作品です。「Kasuo Iwamura~、知ってるでしょ、もう、その、あれ…」に続いた店員さんのジェスチャーから、言わずと知れた、語るまでもない、素晴らしい、などというニュアンスが読み取れて、逆に、こっちでもそんなに有名なんだと驚いたくらいです。かぼちゃがどのように大きくなってゆくのかも分かる、科学絵本としても役立ちますし、これからの季節にもぴったりですね。3歳から。

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『もう ぬげない』(ヨシタケシンスケ:著、ブロンズ新社)のフランス語版(L’école des loisirs)。2017年ボローニャラガッツィ賞の特別賞を受賞した作品で、フランスの書店でも目立つところに置いてありました。日本でも大人気のヨシタケシンスケさんの作品ですよね。ウチの子も大好きで、家にあるのに、しかも何度も読んでるのに、本屋でも飽きもせず立ち読みするくらいです。対象年齢は3歳ぐらいからでしょうか。主人公の男の子も2~3歳くらい。なんでも自分でやりたがる年齢で、ありがちなエピソードからスタートする仰天物語ですが、この可笑しさをたっぷり理解するのは、もう少し後かもしれませんね。

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『おかあしゃん。はぁい。』(くすのきしげのり:作、岡田千晶:絵、佼成出版社)のフランス語版(Pika edition/nobi!nobi!)。酒井駒子さんもしかり、岡田千晶さんのような優しさが溢れるようなタッチの絵は、フランスでも人気のようですね。「おかあしゃん(Maman)」と「はぁい(Oui)」の、たった2言だけで広がる母と子の豊な時間描かれています。ごく日本的な朝食や川の字のシーンなども抵抗はないようですね。2歳ぐらいからでしょうか。

絵本が伝えるメッセージは、文化も超越するようです。

ところで、私のこだわりのモン=サン=ミシェルに戻ります。ちゃんと観光もできましたし、ジゴー・ダニョーも母が作ってくれました。贔屓のお肉屋さんで買った、味は確かだというジゴー・ダニョー。やはりとても美味しかった。ですが、「これ、モン=サン=ミシェル産?」聞くと、「違うと思う」とのこと。「じゃ、別の地域のプレ・サレ?」と「さあ?」との返事でした。私の要望は結局、2つのうち、1と2分の1、叶ったということで、まあ、満足です。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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