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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

お月見と月ブームのはじまり【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2018.09.15

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


このたび、度重なる台風や地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

お月見と月ブーム

やっと9月です。朝夕が少し過ごしやすくなって、ホッとしませんか?

それに、私はワクワクもしています。なぜって、今月の我が家のイベント、お月見があるからです。クリスマスやお正月、または雛祭りとかではなく、お月見をそこまで待ちわびる家族も珍しいかもしれませんね。地域によって重んじかたも様々かもしれませんが、なにせ都市生活だと、保育園や幼稚園でお月見団子を食べたとか、お供えしてたとか、そんなエピソードを子どもづてに聞くぐらいでしょうか。家庭では行事といっても素通りして終わることが多いような気がします。

私も、息子が生まれて最初の3年間はそうでした。ところが、今では我が家の一大イベントです。我が家とはいえ、時間帯が早めの夜なので、大概、息子と私の2人きりですが、そもそもどうしてこんな大イベントになったかというと、こういうことなのです。

1歳を過ぎたある初秋。忘れもしない、友人宅の屋上バーベキューパーディーに呼ばれた時のことです。その日は川縁の花火大会も見えるということでした。大人は肉を焼いたり、お酒を飲んだり、お喋りしたりに夢中なわけです。でもウチの子は、伝い歩きをちょっとと、階段をよじ登るのと、ベビー食を平らげるのを済ませると、あとはぐずるぐらいしかできません。なのでしかたなく、花火までの時間を抱っこで待つことにしました。

しばらくしてようやく、ドーンドーンと花火が上がりはじめました。人生初の花火。きっとウチの子が歓喜の声をあげるだろうと期待して、美味しいスペアリブもそこそこに、よく見える位置に抱っこのまま移動しました。「ほーら、きれいだね、花火だよ~」「見てごらん、わぁ、すごいね~」というふうに。

ところが、リアクションが薄い。ドーンと上がって、パッと咲いても、ほんの少し、瞬きをする程度です。1歳児にはまだ早かったのかしら、などと思いながら見続けていると、いきなり、正面ではなく、後ろを向いて息子が「おー!おー!」と大声を張り上げるではないですか。後ろを指さして、「おー!おー!」。抱っこで宙に浮いてる足もバンバン動かして、大興奮です。私は後ろにも花火が上がったのかと思って、振り返ってみました。するとなんとそこには、まんまるの、昇ってきたばかりの、赤いお月さまがぽっかりと浮かんでいたのです。見事な満月でした。

それ以来、ウチの子は、月ブームに突入。生まれて初めて夢中になったものです。家にあった『おつきさまこんばんは』は、1日に何十回と読みました。他の月関連の絵本も、見つけてきては読んで聞かせの日々が続きました。パパは月の写真集を買ってきては見せることを繰り返しました。パパがページをめくるたびに、「おつきさま、どこ?」と尋ねると、息子は写真の中の月を見つけて指で示します。分かりやすい大きさに写っている月だけでなく、米粒ほどの大きさの月でも、三日月のように欠けていても、写真の中にすぐに見つけ出し、それが楽しくてしかたがないといった様子でした。

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『月あかり』/ピエブックス、『月の本』林完次:写真/角川書店。基本的には大人向けです。

「月平線の向こうに見える地球」という写真もありました。そこでも「お月さまどこ?」と聞いてみます。すると、遠くに写っている青い半球体ではなく、手前のクレーターだらけの地を指差すのです。驚きました。なんで分かったのでしょうね。今でも不思議です。

そんな日々を過ごした2年後、ウチの子はB型の認証保育所を卒園し、私たちは、新しく入園が決まった認可保育園の近くに引っ越すことになりました。

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4歳ごろに描いた、地球と月。月の形が変化するのも地球の周りに描いた様子

新しい住居にはベランダがあり、しっかり夜空が見える造りでした。構造上、お月見ができる家に移ったわけです。

だったら、お月見をしてみないことはないでしょう。最初は、どこかの絵本や図鑑で見た記憶を手繰り寄せて、見様見真似でなんとかセッティングしました。ススキとお団子と、お座布団とお茶です。「美味しいね」といってお団子を頬張り、「綺麗だね」といって月を見上げます。ものの5分で終わってしまうような、簡素なお月見です。いまでも形式は変わっていません。それでもウチの子は今年もまた、「やろうね」と楽しみにしてくれています。そうすると私も嬉しくなって、ワクワクするんです。

さて。先日図書館の絵本を漁っていたら、面白いお月見の絵本を見つけました。『いもぱくり』(伊藤秀男・さく/こどものとも1992年10月号/福音館書店)です。

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ハロウィンとお月見が混ざったような、楽しい風習が描かれていて、ちょっと珍しく、中古を見つけて購入しました。お月見は、「十五夜」、「中秋の名月」と言われるのは知っていましたが、「芋名月」という別名もあるそうですね。芋の収穫を感謝する行事。農村地域ではこの『いもぱくり』のように、「こんやは、よそのいえのおそなえを、こっそりもらってきてもいいのです」とのことです。月見泥棒というものですね。

お供えは、お団子やお芋だけではなく、梨や林檎、クッキーやチョコもあります。おまけに風船釣りや、ノートも置いてあったりで、「おもてへでてもさわいでも、こんやだけはだいじょうぶ」と、お祭り騒ぎです。しまいには、ジャック・オ・ランタンのようなスイカだかカボチャだかも、登場します。ハロウィンのお祭りがここまで日本に定着したのも、風習として馴染みがあったからなのかもしれませんね。いや、関係ないかな…。この作品は、残念ながら絶版のようですが、中古や図書館で見つかります。4歳ぐらいから。

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あと、ご存知『おつきさまこんばんは』(林明子・さく/福音館書店)。大げさに聞こえるかもしれませんが、親子で掛け替えのない時を過ごした作品です。月ブーム時代のウチの子の愛読書。おつきさまが最後に顔を出して、にっこり笑っている、というシーンでこんなに子どもが喜ぶとは思ってもみませんでした。ウチの子が喜ぶので、私も喜び、私も喜ぶので、ウチの子も喜ぶ、といった幸せの時間がミルフュールのように重なり、積み上げられるような、そんな思い出があります。子どもから絵本の素晴らしさを教わることがとても多かった乳幼児期でした。0歳から。

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『つきよ』(長新太:さく・絵/教育画劇)。これは、妹の子どもが1歳半ぐらいの時にプレゼントした絵本ですが、とても気に入ってくれたようです。「おなかをりょうてできゅうっとつかんでしまいました」というところで、妹は、自分の息子にも同じことを「きゅうっ」とやってあげるそうですが、そこが一番のお気に入りなのだとか。2歳になった今でもよく読んであげるそうです。最近では岩陰にこっそり隠れている狸を見つけるのも楽しんでいるのだそうです。三日月が船になったり、滑り台になったりといろいろなものになるストーリーですが、いずれにしても長新太さんの不思議ワールドは、子どもをぐいぐい惹き付けますね。2~3歳から。

今年の十五夜は9月24日ですが、9月が過ぎても、10月には十三夜(別名「栗名月」)があり、11月には十日夜(別名「豆名月」)があるそうです。お月見もしばらく楽しめそうですね。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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