連載:絵本とボクと、ときどきパパ 絵本の古典を、今あえて読み聞かせる理由
この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。
絵本の古典
今回は絵本選びの少し真面目な話です。
私の活動ですが、地域のお話し会や読み聞かせをし始めてから、3年半以上経ちました。もう慣れたころと思いきや、このごろになって急に絵本が選べない、そんな時があります。選書のスランプ期かもしれません。最初の頃は、単純に自分の価値観を軸に選んでいたので、絵本選びに迷いはありませんでした。
でもベテランの方の意見を聞いたり、講習会などに出席したり、読み聞かせに付随する書籍を読んでいくうちに、だんだんと、自分が選んだ本はお話し会にふさわしい本だろうかと疑問に思うようになりました。お話会の活動は、子どもの成長の大切な時間を頂いている立場です。いい加減なことはできません。子ども達にとっての「良い本」を選ばなくてはいけない。そんな責任感を以前よりも感じるようになったのでしょう。それで迷う。選べない。
悪いことではないのですが、そう選書に迷ってばかりでは動けません。やはりもっと勉強しなければと、今年もまたお話し会の講座を受けることになりました。
そこで、先日受けた講義で、気づかされたことがあります。それは、やはり、古典は外せない、ということです。
古典、つまり長く読み継がれてきたものですね。
私たちが本屋さんに行くと、本当に様々な絵本が棚に並んでいます。最近の作家さんの作品や新書には、とても面白いものも多く、時代とマッチングもするせいか、子どもの心にスポンと飛び込んでくるものもたくさんありますよね。そうした作品に惹かれつつも、私は古いものも好きです。どちらかというと、知らず知らずのうちに、読み継がれてきた、「古い」絵本に手が伸びているということも多々あります。その癖は直すべきだろうか、もっとポップな作品を、もっと今の子どもの感覚に近いものを選ぶべきだろうか、と疑問を抱くわけです。
けれども今回、講師の方のお話しを聞いて、やはり、長く読み継がれてきた絵本を欠かしては良くない、ということを教わりました。そういう作品は、文も絵も、構成も全てが子どもをいつまでも魅了する、説得力のあるものだそうです。それこそ読んであげるべきとのこと。
最近の作品は、当然、手に取りやすいですし、親しみやすくもあるので、ご家庭での読み聞かせにはもってこいだと思います。楽しい時間を過ごせますし、お話会に持っていっても、とても良い読書経験が得られるでしょう。ただ、お話し会などの機会では、普段あまり触れることがないかもしれない、古典の楽しみも知って欲しい、せっかくだから、と改めて思いました。
というわけで、今一度息子の絵本棚を眺めてみました。
講師の方が「良い本」の例として挙げられた作品があるだろうか。
すると、やはり古典好きの私。ちゃんと、置いていました。
例えば『もりのなか』(マリー・ホール・エッツ/福音館書店)です。2歳から。モノクロの、地味なデッサンですが、読めば読むほど、森の中が生きてくるような絵本です。じわじわとわくわくしてくる冒険。だんだんと楽しくなってくる想像の世界。動物たちとの愉快なやりとり。一見ひっそりとした物語は、繰り返し読むうちに色あいを帯びて、登場する少年と動物たちはページから躍り出て、3D映像にドルビーオーディオ、気がつくころには息子も私もすっかり森の中を少年たちと共に歩いていました。「この本はカラーで覚えています」という大学生がいた、と講師の方がおっしゃってましたが、とてもよく分かります。
子どもの想像力をどんどん膨らませてくれる素晴らしい作品ですね。もし、この絵が子どもには地味じゃないかしら、分かりづらいのではないかしら、と思われても、まずは読んで聞かせてみてください。3回ぐらい読んでみたら、お子さんはきっと好きになると思います。ウチの子はというと、何度も何度も読んで聞かせましたが、あからさまに楽しんでいる様子はありませんでした。でも、この世界にどっぷり入り込んでる様子は微かな息づかいから明らかでした。そこで、さきほど学校から帰ってきたうちの子に、「この本覚えてる?」と聞いたら「うん、もちろん。かわいいし、色々動物が出てきて楽しい」とのこと。しかしながら、「もう一度読んであげようか?」と言うと、「うん、今度ね。今は『ムジナ』読むから」と断られてしまいました。
目下富安陽子さんの探偵シリーズに夢中の9歳。読んでもらうより、自分で読む方を選び、確実に成長しています。
『ちいさなこねこ』(石井桃子:さく、横内襄:え/福音館書店)。これは、小さい子が最初に出会う物語として最高にふさわしい絵本だと思います。文といい、絵といい、シンプルな冒険物語といい、素晴らしいです。そして、子猫が怖い思いをたくさんしたけれど、お母さんのもとへ帰ってくるという安心感が得られます。子どもにとって、最終的に安心できる場所に戻る、という展開こそが大切なのだそうで、確かに、そういった作品は子どもも好きですね。ただ残念ながら、この作品は我が家ではスルーしてしまったに等しいんです。小児科の待合室で2回ぐらい読んだだけでしょうか。いまさらですが、ウチの子が2~3歳ぐらいの時に、寝しなに何度も何度も読んであげたかった!
反対に、『はたらきもののじょせつしゃ、ケイティー』(バージニア・リー・バートン:さく/福音館書店)は、100回近く読んだかもしれない絵本です。こちらも、除雪車のケイティーがたくさんの困難を乗り越えて仕事を頑張り、もとの自分の家に戻るという結末ですが、ケイティーの行動範囲は、先ほどの子猫より、ずっと広くなります。4歳ぐらいから。ぜひ、ケイティーの大活躍を自分のことのように体験して楽しんで、そして安心して眠りについて欲しいですね。
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