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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

度合いがとっても難しい。「怒る」「叱る」「甘やかす」【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2018.11.15

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


おこりんぼうママに息子の言い分

みなさんは、子育てで怒ったことはありますか?

このごろは、「怒らない育児」や「褒めて育てる」、さらには「甘やかし子育て」などが推奨されていますよね。「褒めて育てる」というのは、さほど難しくはないような気がしますが、どうですか?

私は、褒めるほうは、抵抗なく自然に、かなり頻繁にしていると思います。でも問題は、「怒らない」のと「甘やかし」の度合いです。どんなに我慢しても、ときには堪忍袋の尾が切れて、ガツンと息子に言ってしまうことがあります。それにいくら怒らないように気をつけたとしても、然るべきときに叱らないのはどうかと思いますし、甘やかしてばかりも不安です。

いろいろな先生がたのご意見はもっともですが、まったくの教科書通りの子育ては、むしろ不自然ですし、そもそも実践が難しい。うまくできなかったときには落胆して、母親としての自信が失われてしまうこともあると思うと、それはそれで残念ですよね。

教科書は参考にしつつ、叱るとき褒めるとき、ときには甘やかすときのバランスを、自分の子育て環境と我が子の性格に合わせて、自分なりに工夫してゆかないといけないものだなぁと思うこのごろです。

というわけで、私の子育てのイメージは、「褒める」を抱きかかえながら、日々、「怒る」、「叱る」、「甘やかす」とおしくらまんじゅうをしている、といった感じでしょうか。

さて、そんな中、先日、またブチキレそうになりました。「もう、いいかげんにしなさい!」と大きな声を出そうとしたのです。でも、どうやら年のせいかもしれません。出そうにも大きな声が出ませんでした。

息子がなかなかテレビの電源を消さないので、言い聞かせたかったのですが、出たのは弱々しい声とため息。大きい声を出せば説得力があるかというと、決してそうではないにしろ、こんな蚊の泣くような声では舐められてしまわないだろうか。一瞬不安になりましたが、息子のゲームだって、何度も繰り返し繰り返し、あの手この手で言い聞かせていたら、とうとう自分で30分で切り上げられるようになったのだから大丈夫。そう私を励ましました。

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毎度お馴染みの映画館で、ドリンクセットを横に、ゲーム。ちゃんと時間を守って切り上げられるようになりました。 

しつけは、大声よりも繰り返しが大事なのかもしれないと、最近実感しているところです。その日のテレビに関しては、ウチの子の好きな入浴剤で釣って消させ、お風呂へと導きましたが。

一方、息子の方は、口が立つのをいいことに、私の言いつけが腑に落ちないと、あれやこれや返してきます。最近は悔しいことに息子の方が上手なこともあり、意地を張って正論をかざそうとしても、支離滅裂な母親を見せつけるだけでよろしくないです。

先日も、日が陰ってきたので、部屋のカーテンを閉めるようお願いしたのに、何度言ってもやっていませんでした。「もォ!何度も言ったのに、忘れちゃったの?」と半分怒り気味で言うと、「そうだよ」とあっさり。

「人間、忘れることだってある。忘れることがない人なんて、人間失格だよ!」と言い返されて、なんだか大袈裟だと思いながらも反論できず、私は黙り込んでしまいました。でも次の瞬間、ふと変なことを思いつきました。「誰が書いたか?」と質問してみたのです。「え?」と息子。「『人間失格』、だれが書いたか?」ともう一度きちんと質問してみました。「太宰治」と答える息子は、すでにそこでスルスルとカーテンを引っ張っていました。私の怒りも綺麗に消えて、親子喧嘩に発展せず、めでたしめでたし。こういうときには、適当なクイズに変えてみるのも、クドクド怒らなくて済む良い手段かもしれません。

ともあれ、お母さんって、ほんと、大変、ではないですか?

というわけで、今回は、お母さん像3作です。

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かなり年季の入った図書館の本。どれだけの子たちの手に渡り、愛されてきたかが伝わります。

まず、言わずと知れた『おでかけのまえに』(筒井頼子:さく、林明子:え/福音館書店)のお母さんは、私にとって理想の母親像です。お出かけの準備で忙しいお母さんやお父さんを手伝おうと一生懸命な小さいあやこですが、やることなすこと全てぐちゃぐちゃ。親としては忙しい時に困ることばかりしでかしてくれる、といった状況ですが、何をしても怒らないお母さんとお父さん。そこにまずは私がすごいと思いました。

こういう風に気持ちに余裕を持って子どもに対応したいとしみじみ思った作品です。2歳ぐらいからですが、ちいさい子でもあやこに共感できるシーン満載ですし、「わざとじゃないけどうまくできなかった」ことで叱られない安心感も得られるでしょうね。親しみやすいロングセラーです。

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『こねこのハリー』(メアリー・チャルマーズ:さく/福音館書店)。お母さんとお散歩にでかけたハリー。大人の立ち話に退屈してうっかり大きな木に登ってしまいます。消防士さんが助けにきてくれますが、そこでハリーは…。

絵もストーリーも、本のサイズもコンパクトでとても愛らしい作品です。一方で、こねこのお母さんを見ていると、「私ってこんなかも」と母親としての自分を鏡で見るようで、ちょっとばかり苦笑いした作品でもあります。息子の気持ちを読み取れないで、勝手に先回りしたり、代弁したり…。ハリーの物語はシリーズにもなっていますよ。4歳から。

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『おこりんぼママ』(ユッタ・バウワー:作/小学館)では、最初のシーンでママに怒鳴られて、体がバラバラになるペンギンのぼくが出てきます。知ってました? 子どもって、親におこられると、こんなふうに体がバラバラになるようなショックを受けるようなのです。

ウチの子が昔、私に怒られるとものすごく傷つくからやめてくれ、と言ったことがありましたが、それを思い出した作品でした。でもやっぱり、このペンギンママのように、子どもの心を立ち直らせてあげれるのは、お母さんとか、ごく親しい関係の人なのでしょうね。親子の気持ちを紡いでくれる一冊です。

絵本の読み聞かせは、結局、親子、両者のためにあるものではないでしょうか。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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はじめまして、アンヌです

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