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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

早春、雪山の静けさと絵本。息子の成長を感じたスキー旅行【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2019.03.15

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


早春、雪山の静けさと絵本

2月に入って、ようやくスキーに出かけようと旅行代理店に行ってみると、残念ながら週末はどこも満席でした。
というわけで、今年もまた、3月に入ってからの春スキーに行ってきました。

Anneママ

でも今回は、パパの予定が立たず、息子と私の二人だけ。
パパも一緒の方が楽しいというのはいうまでもないのですが、それはさておき、物理的な意味合いで、以前だったらパパ無しでのスキー旅行なんて到底無理でした。なにせ子連れスキーは大変ですもの。でも小学生にもなれば、物理的に無理ということがなくなるものです。パパが来れないと知った私の反応は「困る!」から「残念!」というものに代わりました。

というわけで、昨年に引き続き、宿泊先で小さい子連れのご家族を見つけると、ウチも、あんなこと、こんなこと、あったなぁと過去を思い出し、大変そうな親御さんに共感してきました。準備だけでも相当時間と手間がかかりますよね。まあ、手がかかるのは大抵、男子ですけれどもね。およそ、子連れスキーはこんな感じではないでしょうか。

まずお部屋で。スキー用の下着を着せて、厚手の靴下を履かせ、フリースを羽織らせ、その上からスキーウェアの上下を着せます。ホテルのベットではしゃぐ子どもを何度も捕まえての着替えです。もちろんくたびれますが、これはスタートに過ぎません。

次にスキーブーツを履かせるというステップが待っています。履く方も履かせる方も、かなりの力仕事になります。なにせあの窮屈で硬いブーツですから。足を中に押し込むのは大人でさえ苦労するのに、小さな子どもとあれば、イタイ、キツイ、カタイで、やがてベソをかきはじめます。でも、履かせないわけにはいかないので、親は一生懸命、杭のように子どもの足をグイグイブーツに差し込みますが、そのとき、親のスキーウェアの中は蒸し風呂状態になります。一方の子どもは、本格的に泣き始めます。でもやっと右足が入ったというところで終わるわけにはいきません。今度は左足です。またもや苦戦し、子どもの方はというと、スキーなんて大嫌い、やらない、部屋に戻る、と断言します。
そこをなんとかあやして、左足も履かせ、そしてやっと外に出れるんです。

さて今度は小物との戦いです。ネックウォーマーとヘルメットを被せて、ゴーグルをかけさせます。極め付けは手袋。ミトンタイプの手袋なら簡単ですが、5本に別れた手袋は大変です。指がスムーズに入らず、入んない、入んない、と騒がれます。手伝ってあげたいけれど、中を確認しようにも、親の手が入りません。もう、ここまでで午前中の時間の大半を使い切ってしまう勢いです。

やっと手袋をはめることができて、「フウ」と親子でひと息。いよいよ最終段階に突入します。
スキーを履くわけです。これがまた、至難の技。踵をクッとスキー板に押し付けるように、踏み込めば良いわけですが、なかなか子どもには難しい。エイッエイッと力をいくら入れても、スキー板にはまらない。子どもはまたスキーなんてやらないと言い出す。大人は、踵のサポートでまたもや労力を使い、ウェア内の蒸し風呂状態が復活。もうこちらも限界に近づいて、なだめようにも、だんだんと口調がキツくなり、子どもはさらに不機嫌になって…、と悪循環です。

やっとの思いで準備を整え、いざ、滑ろう、というとき、大人は、自分の方の準備が整ってなかったことに気づくんですね。早く滑りたい子どもに急かされ、ちょっと待って、ちょっと待って、と慌てるわけです。帽子を被ったりゴーグルをかけたり、リュックを背負ったりして、ストックを手にしようとした、その時。手袋をさっきスキーブーツを履いたベンチに忘れてきた、なんていう展開が待ってます。

子どもは、早く、早く、と積立てます。
待ってて、待ってて、ってば!と大人。

こんな大騒動を経て、いざゲレンデへ。

滑り始めると、あの苦労は何処へやら。子どもは満面の笑みを浮かべて「ママ、見て~!!」と滑っています。そして、やっと「ああ、連れてきて良かった」と幸せを味わうのもつかの間、子供が転んで、「助けてー」と騒いでいるところに滑り寄ります。バッテンにクロスしたスキー板に足を取られて、痛い痛いと泣いています。助けようと足を引っ張ると、これがダメ。さらに痛がり、「もうやだ、やめる」とまたあのセリフが繰り返されるわけです。小さい子づれのスキー場は、こんな風なドタバタ劇ではないでしょうか。

それでも懲りずに毎年2回はスキーに行っていた我が家ですが、息子ももう小学3年生。せっせと自分で身支度を済ませ、何につけても文句一つ言わなかった息子の成長ぶりには感心しました。

文句を言わなくなった息子と、なだめることがなくなった私。共にした今回のゲレンデは、なんて静かだったでしょう。スキー板がシャリシャリと雪を削る音や、遠くのスピーカーから流れるJ-POPの微かな音が、雪山の静けさを強調していました。ふたりでリフトに大人しくこしかけながら、時折、あっちの山が綺麗だね、うさぎの足跡があったよ、あの小さい子はスノボが上手いね、などとと交わしました。頂上に行けば行くほど、青が濃くなる晴天の空を見上げて、「青っていうより、藍色だね。藍は青より出でて、藍より青いし…」と、覚えたえての諺を息子は呟きます。

Anneママ

その通り。息子はどんどん成長します。どんどん成長して、成長して、やがて親を抜く日が来るでしょう。もう遠くないかもしれません。

さて、静けさを味わうにはぴったりの絵本があります。私がとても気に入っている絵本です。『しんとしずかな、ほん』(光村教育図書)。

Anneママ
図書館ラベルがこんなところに!毎度ですが、息子の折ったカニでカムフラージュ。

淡いカラーで描かれた動物たちと、その仕草の可愛らしさに、まず心が和みますが、それだけではありません。この本の中で、静けさも様々だということを感じさせてくれて、子どもの想像力が大きく膨らむ作品だと思います。例えば、「ジャムサンドをひっくりかえしてしまったときの しーん」、「おむかえをまって さいごのひとりになる しずかさ」、「いもうとが ねているときの しーっ」、など。それは、どんな静けさかなぁ?と親子で一緒に想像してみるのも良いですね。小学校低学年から、とありますが、5~6歳ぐらいからでも良いかもしれません。

雪の絵本で定番といえば『しんせつなともだち』(方イーチュン:さく/村山知義:絵/福音館書店)もひとつです。これは我が家でも繰り返し読んで聞かせました。こじかが登場するシーンで「かわいい、かわいい」と息子が言っていたのが思い出されますが、他人を思いやる心が、シンプルに、優しく、且つ力強く描かれている素晴らしい作品です。寒い雪の降る日に食べ物がなくなったこうさぎは、食べ物を探しに出かけて行きます。真っ白な雪野原にポツンと2つのカブが落ちていたので、友達のロバを思いやって、1つ分けてやることにします。そのカブが、さらに思いやりのあるロバの友達、そのまた友達、と巡り巡ってウサギの元に戻ってくるという心温まる展開になっています。これは実は中国の兵士が経験したことに基づいたお話なのだそうです。このお話の根にある力強さのわけが分かるような気がしますが、そんなことも感じさせない愛らしさがまた魅力です。(3才から)

Anneママ

3冊目は『雪わたり』(福音館書店)言わずと知れた宮沢賢治の物語です。色々な絵本作家さんのバージョンがありますが、我が家で楽しんだのは、堀内誠一さんの絵のものです。雪国では、夜、気温が急激に下がると、表面の雪が固まり、普段歩けないような田んぼの上も山の中もぐんぐん行ける、そんな魔法のような時があり、それを「雪わたり」というそうです。四郎とかんこ子が、11才までしか参加できないというキツネの幻燈会に招待され、出かけていくという物語で、羨ましくなるような幻想的な世界が広がります。「キックキックトントン」という可愛らしい音も心地よく耳に残ります。5~6才から。

Anneママ

3月。でも足を伸ばせば、まだあと少し、静かな雪の世界を楽しめそうですね。
(Anne)

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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はじめまして、アンヌです

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