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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

息子と私は、毎朝蝶の幼虫チェック。山椒の木とはらぺこいもむし、蝶の絵本【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2019.05.27

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


山椒の木とはらぺこいもむし、蝶の絵本

春休みが終わる頃、私の母がいよいよ明日、パリに帰るというときのことです。

夕方、母が大きな山椒の苗をぶら下げて買い物から戻ってきました。実際、シルバー世代の母がぶら下げてきたわけですから、大きいというほど大きいわけではありませんが、小さい苗というには存在感のある苗です。中くらいのサイズ、で伝わるなら、それでもいいですが、問題はサイズのことではありません。山椒の木が好きすぎて、毎回日本に来るたびに、買ってはフランスに持って帰れないからといって、我が家のベランダに置いていくことです。木の芽を摘んでご飯やお豆腐の上に乗せて食べるのは好きなようですが、毎食欠かせないというわけでもないようですし、実だって佃煮にしたものはパリの冷蔵庫に入っているにはいますが、減りが早いわけではないのは確かです。第一、苗を買っても実がなるとは限らないし、そもそもパリに持って帰れないわけですから、なぜ買うのか。とても理解し難いですが、普段パリでは有り付けない納豆や蒟蒻に帰国したら即がっつきたい、という欲に似て、ミントにもラベンダーにも似つかない、あの山椒の独特の香りは日本に来ないと嗅ぐことができず、日本に来たら絶対嗅ぎたい、という思いが、山椒の苗を買わずにはいられない行為になっているのではないでしょうか、という考えに至りました。

私だって山椒は好きです。よくよく考えてみれば山椒の苗がベランダにあって、困ることはありません。でも、無精な私には数日で枯らしてしまうのがオチです。だから問題なのです。でも、それをよそに「ちゃんと水やってね」と言い放って、母は苗の代わりに大きなスーツケースをぶら下げて、パリへと帰って行きました。

そうとなれば、今年こそはまともに水やりをやってのけたい。そう思って、4月からせっせと水をやり、育てていました。そんなある朝のことです。お隣の5歳の坊やにバッタリ会うと、「いもむしさんがきちゃったの」と話しかけてきました。
唐突に何だろう、と思いながら、「そうなの~」と笑顔で答えてみせて、その後に「あら、良かったね」というべきか、「あら、困ったね」というべきか悩んでいるところに、ママがパタパタときて説明してくれました。どうやら山椒好きは、私の母に限ったことではないらしい。このお母さんも、毎年山椒の苗を買ってくるそうです。ところがいつも蝶が卵を産んで、孵化したいもむしに食べられ、「ハゲちょろびん」にさせられてしまうんだとか。山椒が枯れてしまう原因は、水やりの他に、はらぺこのあおむしならぬ、いもむし、にもあったようですね。なので、坊やには「あら、困ったね」と返事すれば正解だったようです。

隣でその話を聞いていたうちの息子は、「ああ、アゲハね」と一言。私に、植物園に行った時に観察した、山椒の葉を食べる黒い幼虫を思い出させてくれました。そうなんですね。アゲハは山椒の木に卵を産み、幼虫はその葉を食べて大きくなる、というわけです。
早速、息子と我が家の山椒の木の葉に目を近づけてみました。すると、やはり、ありました。小さな薄黄色の卵が。
少し経つと、色が黒くなっていました。

その翌日には、小さなゴミのような幼虫が卵から孵っていました。いもむしです。
幼虫は日に日に大きくなり、日に日に、鳥の糞そっくりになり、黒と白の混ざった模様を背中に、必死に山椒の葉にかじりつき、「ハゲちょろびん」にしようとしています。

いもむし
とても小さかったアゲハの幼虫。
いもむし
だいぶ立派になってきました。この後、立派な「あおむし」になるはずです。

そんなわけで、最近の息子と私は、毎朝蝶の幼虫チェックをしています。
「これって、アゲハの幼虫を飼ってるってことになるのかなぁ?」と呟いて、今朝も学校へ向かいました。これも私の母の、山椒熱がなければ体験できなかったことですね。ありがたいこってす。
アゲハに羽化する日まで、ウチの飼い虫でいてくれるかどうかは分かりませんが。

というわけで、こんな時こそ、『はらぺこあおむし』(エリック・カール/偕成社)ですが、昨年の3月のブログですでに紹介していますので、今回は別の作品を選んでみました。

『きいろいのはちょうちょ』(五味太郎・さく/偕成社)。

絵本

これはモンキチョウのような小さな可愛い蝶が登場する、穴あきしかけ絵本です。お庭、公園、街中で見かけた小さな黄色いもの。それは、ちょうちょ、と思って男の子が捕まえようとします。次ページをめくると、あれれ?ちょうちょじゃない、別のきいろい何かでした、という繰り返し。思い込みに対して、ちょっとイタヅラしてみよう、というような作者の遊び心が伝わってくる愉快な絵本です。ラストもさすがです。私は、息子が2歳ぐらいのときから何度も読んで聞かせました。

『旅する蝶』(新宮晋・さく/文化出版局)。

絵本

これはオオカバマタラという渡り蝶の一生を描いた、バイリンガル科学絵本ですが、とても詩的に仕上がっている作品です。絵も美しく、遠目にもとても映えます。メキシコからアメリカ、カナダまで延々と飛び続ける蝶。繊細な姿からは想像できないくらいの強い生命力に、きっと魅了されるでしょう。

我が家でも、数年前のある夏の終わり、息子とアサギマダラという渡り蝶を見つけたことがありました。登山中の思いがけない出会いです。その蝶は、渡り鳥のように旅をし、もうじき沖縄や台湾の方に向かうんだと知った時の、私たち親子の小さなドキドキは忘れもしません。この作品は、確か、その直後に購入したんだと思います。5歳ぐらいから、でしょうか。
旅、いいですね。ニルスより小さくなって、蝶の背中に乗ってみたいものです。
(Anne)

アサギマダラ
登山中に出会った、美しいアサギマダラ。
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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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