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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

夏休みは息子とフランスに住む祖母の元へ。ノルマンディーでのんびり、そしてヴァカンスの絵本【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2019.08.15

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


ノルマンディーでのんびり、そしてヴァカンスの絵本

息子の夏休みが始まりました。
小学4年生にもなると夏休みといえども、お稽古やら何やらで忙しく、どこかに長期滞在というわけにはいかなくなってきました。
それでもどこかに行きたいという私の願望と、今年も息子に祖母に会いにいかせたいという思いとで、無理やりフランス行きをねじ込みました。ほんの1週間の滞在です。
1週間という期間が、私にとって「ほんの」になってしまうのは、フランス生活が長かったせいもあると思います。夏休みはたっぷり1ヶ月、都会を離れて過ごすのが当たり前という感覚が残っているからでしょう。日本の感覚からいくと十分な日数なのに、なんとなく私にとってはショートステイ。贅沢かもしれませんが、これは昔から染み付いてしまった感覚で、どうしようもないところです。
もちろん息子にも、夏が来れば海や山にロングステイして、ゆったり過ごすという我が家の習慣を擦り込んできました。でももう4年生。長期休暇も、もはや限界か。今年からはそうもいかなくなって、サクッとフランスにひとっ飛びだけしてきた、というわけです。

フランスはというと、ニュースでお聞きになってる方、多くいらっしゃると思いますが、晴天に恵まれてというより、恵まれすぎて、猛暑続きでした。パリ市内はもとより他の地方も燃えるような高温で、残った避暑地は、本来悪天候で有名なノルマンディーのみという状態でした。なので、私たちも色々と予定を詰め込まず、おとなしくノルマンディーの家でじっと過ごすことにしたわけです。前回お話しした、ユーロディズニーに行く件も、もちろんお預けです。
以前は、ノルマンディーという地方は、夏が来ても、霧雨ばかりで寂しい感じだったわけです。ごくたまに日が差して、今だ、とばかりに浜辺に行っても、せいぜい砂遊びぐらい。海水は凍るように冷たいといえば大げさですが、意を決して入ってみても、すぐさま足先からジンジンと痺れてくるほどで、とても海水浴を楽しむようなヴァカンスが似合う所ではありませんでした。

ところが近年、温暖化の影響で心地よく海水浴もできるようになり、南仏ほどは混んでいないし、浜辺は遠浅で美しいと評判で、人気のスポットになりつつあるようです。今回も、パリが40度の茹だるような暑さの時、私たち家族は友人たちと連れだって、ノルマンディーの海に行きましたが、息子も、浜辺に着くなり、「これぞヴァカンスって感じだね!」と言っていました。
イメージだけでなく、海水の方も、凍るような水温は何処へやら。まるで極楽です。プカプカとクラゲのように何時間でも浮いていたくなるほどです。

ノルマンディーの海
「これぞヴァカンスって感じだね」と息子が言ったノルマンディーの海。寒々しい感じは全くありません。

子供たちは砂遊びや波乗り。大人たちは砂を撫でながらお喋り。時を忘れるほど楽しんだ後、ふと気付いた頃には、もう18時を回っていました。

波乗りに夢中の息子
波乗りに夢中の息子
引き潮時
ノルマンディーは遠浅なので、引き潮時は海が遠い!潮溜まりでのプール遊びやサッカーもできます。

夕食に帰らなきゃという時間ですが、なにせフランスの夏は日が長い。日本ならまだ15時というぐらいの日の高さなので、子どもに帰る気を起こさせるのも一苦労でした。でも海が楽しければ帰ろうとしないのも当たり前。何度も「もう帰るわよ」と声をかけながら、これでよし、これでよし、と心内思うわけです。
傾きかけた日の光と潮風に押されながら、レモンシャーベットをペロペロ舐めて帰る道もまた、子どもにとっては楽しいものです。塩キャラメルアイスを選んだ私にとってもですが。

夕飯
19時ごろ夕食。明るいので外で。こんな風に素朴な感じです。
ハンモック
まだ明るい夕食後の時間。ハンモックで長々とのんびり過ごす息子。

そしてこの日の長さは、子どもの就寝時間の妨げにもなりました。21時になって、「もう寝なさい」と言っても、子どもの目に入るのは美しい夕焼け雲です。日本から来た息子にとっては、当然、まだいいでしょ、となります。浜辺から帰って、夕食を済まし、それから長い長い食後の、ゆったりとしたくつろぎの時間を過ごしたのち、ようやく薄暗くなる22時ごろになって、やっと寝る気になり、ベットに入るという日々でした。
就寝時間が遅くなるのは親としてはやや心配ですが、同時に、この日の長さが与えてくれるゆったりとしたくつろぎの時間は、息子にとって他の何ににも変えられない大切な時のように思えました。学校、お稽古、宿題、お手伝いと、いくら無理はさせないようにと気を配っていてもあれやれ、これやれの慌ただしい都会暮らしの子どもです。たまには、ぼーっとする時間も、心の成長に必要ではないでしょうか。

息子は、夕食を挟んだ、まだ日の高い夜の時間、どうくつろいでいたかというと、みんなと一緒にトランプのようなカードゲームで遊びもしましたが、一番はリンゴの木の間にぶら下がったハンモックに寝そべり、ゆらゆらとそよ風の音を聞いて、うたた寝をし、鼻歌を歌って、ぶらぶら揺れて、ただひたすらぼーっと日が暮れるのを待っていましたよ。
のんびりと過ごす夏。ヨーロッパや欧米では、だいたいこんな感じではないでしょうか。
そんなゆったりとした夏のひと時を味わう絵本を選んでみました。

『なみ』(スージー・リー:さく/講談社)

なみ

小さな女の子が、波と戯れる様子を描いた、字のない絵本。何度も打ち寄せる波。その様々な表情と対話するような女の子の姿が描かれていますが、見れば見るほど、楽しくなる不思議な素晴らしい絵本です。子どもが楽しむのに、たくさんのものはいらない。自然があれば、それでいい。そう思わせてくれるような絵本です。親子で波打ち際に行ってみたくなること間違いなし!(5歳ぐらいから)

『ふたりだけのとっておきのいちにち』(ヘレン・ダンモア:さく、レベッカ・コップ:絵/文渓堂)。

ふたりだけのとっておきのいちにち

毎年夏になると、リンの住む海辺のまちにロビーが遊びきます。2人がのびのびと過ごす、想像力豊かな1週間。真っ白い砂浜の岩の陰に作る、小さな秘密の島。貝殻で飾られた小屋、昆布で作ったジャングル。カニを捕まえ、アザラシやカモメのお客に挨拶し、石や貝で人魚を描く日々。二人の楽しい時もあと1日というとき、2人はさらなる冒険に出ます。繊細なタッチで描かれた絵も可愛いですし、子どもに夢と憧れを持たせてくれるような作品です。文章量多めですが、5歳ぐらいからでも。

『すばらしいとき』(ロバート・マックロスキー:さく/福音館書店)。

すばらしいとき

古くから読み継がれれいる作品です。早春から始まり、夏の終わりまで、自然とともにゆったりと過ごす一家の豊かな時。これほどの「素晴らしい時」があるだろうかと、思わせてくれる絵も文も美しい作品です。砂浜や岩場で遊ぶ子どもたちの楽しそうなこと。嵐の夜の、恐ろしいけれど家族の温かみを感じること。心に残るシーンがたくさんあります。5・6歳から。

まだまだ夏休みは続きます。ゆったりと過ごせる時間を大切に。
(Anne)

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。


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