働くママのウェブマガジン

Column 絵本とボクと、ときどきパパ

『冒険者たち』の学芸会とねずみの大活躍【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2019.11.25

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学2年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


ずっとずっと前から私が息子に読ませたかった本があります。それは『冒険者たち/ガンバと15ひきの仲間』(斎藤惇夫:著/岩波書店)です。ようやく時期到来です。

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発端は学芸会。
秋は学校行事が多く、子どもたちも親も、何かと忙しくないですか?運動会があればお弁当や陣地取り、学芸会があれば衣装の用意。台本を読みあったり、振り付けを見てあげたりというサポートをされる方もいらっしゃるでしょう。

息子の学校では、今シーズンの一大イベントは学芸会でした。

4年生は劇を披露します。台本が配られ、オーディションのルールが説明されると、子供たちは一気にテンションが上がり、やる気が溢れると共に緊張感も漂いました。オーディションは勝ち取りたい。少なくとも、うちの息子は、真剣に練習に励んでいたのは確かです。

オーディションと聞いて驚きませんか?最近はそうやって配役を決めるそうですね。私が小学生の頃は、台本が配られると、希望者を集めて一回だけ読ませたら先生が判断し、年によっては読ませることもなく、いつの間にか役が決められていたという記憶しかありません。およそ、主役を難なくこなせそうな優等生を選んでるんだと勘ぐって、悔しい思いを抱えたこともありました。希望の役を勝ち取るための準備をするという機会がなかったので、今の当落の決め方は子どもにとって納得のいくもののように思え、羨ましいくらいです。

息子たちは、オーディション当日までの2週間、休み時間の鬼ごっこもよそに、先生に演技指導をしてもらい、練習を重ねてきました。希望者が多ければ、オーディションですから、残念ですが落選する子もいます。でもそれで終わりではなく、第2希望の役で再チャレンジすることもできたり、役に選ばれなかったとしても舞台の装飾や照明係として活躍する場が与えられるんですね。役の動きや振り付けなども自分たちで考案して演出に関わっているようです。もちろん伴奏も、生徒によるもの。これも、ピアノのオーディションがあったようです。先生任せの私の時代とは違い、自分たちで作り上げる劇という意識が持てて、多くの生徒にとってとてもやりがいがあったのではないでしょうか。
息子はというと、真面目に練習した甲斐あって、オーデションを突破。第一希望の悪役をゲットしました。

演目は『冒険者たち』。アニメにもなったドブネズミのガンバたちが活躍する物語で、悪役はイタチの「ノロイ」です。

そうです。原作は、その、ずっとずっと前から私が息子に読ませたかった『冒険者たち/ガンバと15ひきの仲間』(斎藤惇夫:著/岩波書店)です。長い間タイミングを待ってようやくこの日がきました。

藪内正幸さんによる美しいイラストにまず惹かれました。早く読ませたい。でも、内容の方も十分に理解して、複雑な友情関係や淡い恋心に共感させたい。そのためには、息子の精神的な成長を待ちたかったのです。夏休みもありましたが、焦るな、と私は読ませたい気持ちを堪えたわけです。それが、今回、自分たちが披露する劇物語の原作とあれば、各登場人物への思い入れも深くなるでしょう。きっと読みこなせる。

ということで、台本が配られた段階で、即、購入しました。もちろん藪内さんの絵も存分に堪能できる、ハードカバーを。

案の定、息子はどっぷりハマって、学芸会が終わる頃には、シリーズ3巻を完読していました。『冒険者たち』では、途中のノロイが登場するシーンの迫力に、母親の私を呼ぶほどハラハラさせられたようでしたし、読み終わると「青春って感じだね!」と胸を熱くしたようでした。次に読んだ『ガンバとカワウソの冒険』では、最後に裏表紙を閉じた後、しばらく黙って考え込んでいました。自然破壊問題に関心のある息子の思いとリンクしたのでしょうか。しんみりとした様子でした。3巻は、どういう順番で読んでも良いと思いますが、我が家では最後に『クリッグの冒険』を読みました。シマリスのグリックがガンバと出会い、クマネズミとの戦いに加わりますが、途中からリスののんのんと知り合って、北の森を目指します。戦いの相手は、もはや厳しい自然だというのを、2匹の主人公とともに経験したのではないでしょうか。

学芸会の方はというと、無事に終わり、息子はイタチのノロイ役を全うしました。

私だって頑張りました。本来、お裁縫が大の苦手で、ボタンひとつ縫い付けるのも、一苦労どころか目も当てられない仕上がりになるほどです。息子の保育園時代から、劇の衣装だけでなく、手提げや上履き入れ、お弁当入れなども、生地を買ってくるだけで、あとは全て義母にお願いして乗り切っていた私です。でも、今回、息子の頑張りに習って、嫌な針に糸を通してみました。イタチの尻尾を自力で作ったのです。まあまあの出来栄えに喜んでいると、生物好きの息子に「イタチの尻尾ってこんなに太くないけどね」とつぶやかれてしまいましたがね。

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イタチの尻尾。素材はフェイクファーで、初めて義母に頼らず縫った衣装です。

もう一冊、ネズミが力を合わせて悪者を退治するお話をご紹介します。息子の好きな『教会ねずみとのんきなねこ』シリーズの『わるものたいじ』(グレアム・オークリー:作・絵徳間書店)。今度は、敵は、我が者顔で教会ねずみを追い出し、住処を横取りするドブネズミです。ちょっと間抜けな仲間の猫のサムソンと協力して、知恵を絞り、うまいこと敵を嵌めるも、そうそう上手くはいきません。アイディア満載のドタバタ劇に思わず顔がほころびます。5歳から。

ちなみに、下手にネズミの絵を描くと「薮内さんに失礼だよ」と息子に言われます。もはや気軽には描けません。

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Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。