働くママのウェブマガジン

Column 絵本とボクと、ときどきパパ

子どもが世界を知りたがったら。【Anneママの『絵本とボクと、ときどきパパ』】

2020.02.15

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学4年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


やっぱり10歳になると違うと思うんです。
自分を取り巻く世界が開けてくるような、そういった大きな変化があるように思えてなりません。
国際的な事柄に関心を強く持つようになったのも、10歳を迎える頃からでした。小さい頃から度々海外に連れていくことがありましたが、息子はどちらかと言うと後ろ向き。家族訪問が多かったので、行き先がハワイやグアムのように子どもが思う存分はしゃげる場所でなかった、ということも関係してるかもしれません。

でも、この頃はやたらと、外国へ行きたいと呟いています。暇さえあれば地球儀をくるくる回し、地図帳をペラペラめくり、そして、どんなところだろうと想像を膨らますのが楽しいようです。人口がどのくらいなのか、どんな言語を話すのか、大統領は誰なのか。知りたいことが次々と出てきて、やたら私に質問してきますが、家事片手の私の返事は、「さあ」「そうねぇ」「どうなのかしらね」と頼りないものです。地図帳の方がずっと良い相手。そしてわかったことがあると、「ママ知ってた?」と教えてくれるので、私も、役に立つ立たないはさておき、豆知識が増えて、それはそれで面白いものです。

いずれにしても子どもの成長過程には、必ずどこかで何かに夢中になるタイミングがあると思います。私はいつも、夢中になったときがチャンスと思ってきました。興味を持った時こそ、吸収力が半端ない。
電車好きだった小さい頃は、駅名に興味を持ったタイミングにひらがなを教えて、自分で読めるようにするとか。電車のダイヤが気になり始めたら、アナログ腕時計を持たせて自分で時間を読めるようにするとか。そもそも私は大したことを教えられないので、基本的なことだけは伝えるけれど、あとは自分で学んでもらおうという魂胆です。

そういうわけで、世界に関する事柄も、このタイミングがチャンス。もっと息子の知りたいに答えてくれるものはないものかと、探してみました。
すると、子供用の月刊時事雑誌というものがあると知りました。早速、2誌を取り寄せて比べてみました。

アンヌPH1
読み比べてみた子ども用月刊時事誌、2冊。

毎日新聞出版の『Newsがわかる』朝日新聞出版の『ジュニアエラ』の11月号です。
どちらも総ルビで、とても読みやすいというのが第一印象です。さらに、スポーツ、科学、歴史、ロボット、など、それぞれ分野別のトピックスも豊富ですし、爆笑学習漫画も然りで子どもが楽しめそうです。
はっきりとした違いは、『Newsがわかる』の方は横書きで左開き、『ジュニアエラ』は縦書きで右開きということぐらいでしょうか。あとは、前者の方がページ数が多めで、より多くの話題を取り上げている一方で、後者は、いくつかにニュースを絞り、詳しく掘り下げている傾向があるように感じました。そして全体的なトーンですが、大差はないものの、後者の方がよりカジュアルかなといった感想です。
私としては、一つに絞らず色々な媒体を読み比べてみたいところですが、そうもいきません。欲張らずに息子が要求した方を、まずは定期購読することにしました。決め手は、たまたまこの11月号に息子が好きなタレントさんが載っていたこと。そしてもう一つ。世界の子ども紹介ページがあったことのようです。やっぱり世界のことが知りたくてたまらないんですね。

さて。地図帳や地球儀を眺めている息子の姿をみていると、私がとても好きな絵本作家の一冊を思い出しました。
ユリ・シュルヴィッツ作の『おとうさんのちず』(あすなろ書房)です。

アンヌPH2

自らの経験に基づいたお話です。ポーランドから旧ソ連に逃れて、食べるものにも困っていた時のことです。お父さんが何かお腹を満たすものを探しに市場へ出かけます。待ちくたびれた頃にお父さんが戻ってきますが、手にしていたのはパンではなく、一枚の地図でした。ひもじい思いをしながらも、「ぼく」は壁に貼られた大きな地図を眺め、時を過ごします。パンではなく一枚の地図を持って帰ったおとうさんの思いが素晴らしい。(小学生向けですが、5歳ぐらいからでも)

『かきねのむこうはアフリカ』(バルト・ムイヤールト:文、アンナ・ヘグルンド:絵/ほるぷ出版)

アンヌPH3

物置のある庭付き集団住宅に住むぼくは、お隣のフランス語を話すおじさんの奥さんが気になっています。アフリカから来たらしいその奥さんは、みんなと同じように菜園を作ったりはしていません。そうかと思ったら、突然、物置を壊し、忙しそうに何かを始めました。お隣を気にしていくうちに「ぼく」と奥さんの交流が始まる、なかなかユニークなお話です。(小学生向け)

最後に高学年から大人に読み物を一冊。『故郷の味は海をこえて』(著・写真:安田菜津紀/ポプラ社)

アンヌ差し替え写真

「難民」として日本で生活をしなければならない人々の、生活や苦悩を追ったノンフィクション。どういう経緯で故郷で暮らせなくなってしまったのか。どうやって日本にたどり着いたのか。彼らには私たちと同じように家族と共に食卓を囲み、心のこもったお料理を口にしていました。そんなかけがえのない時間があったことを知るうちに、「難民」とは遠い国の話ではなく、人ごとでもなく、すぐ近くに住む人たちの話かもしれないことが、リアリティーを持って伝わってきます。彼らが紹介する故郷のお料理の美味しそうなこと!深刻な内容ですが、同時に優しさや軽やかさ、楽しさも詰まった作品です。
なにも子どもが世界に興味を持つタイミングを待つ必要はないですね。いつだって、こうした読み物に触れて心が豊かになって欲しいと思います。
(Anne)

prof2

Anne (アンヌ)

モデル・絵本ソムリエ。1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。