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子どもの教科書とお年寄りの物語
2020.04.25 by Anne Anne

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 子どもの教科書とお年寄りの物語

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学5年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


休校が始まって1ヶ月半以上が経ちました。

こうも長くなってくると、子どもの生活もマンネリ化してきませんか? だんだん怠け癖が出てきたり、ストレスだって溜まってもくるでしょう。本来学校に行ってお友達と勉強したり遊んだりしたいところを、グッと我慢して過ごしているのですもの。仕方がないことです。

ウチの息子ももれなく。なんだかモヤモヤしてるなぁと思う時があります。そういう時は「今の辛い時期に経験したことや感じたことは、後になってきっと役立つからね」と励ましてみています。生活においては、工夫を凝らした「ステキ自粛ライフ」をしようと力まずに、子どもにも無理をさせず、まずはリラックスできるよう、生活リズムのキープと、笑顔になることをする。そこだけに気を配ろうと思うこの頃です。

そんな中、保護者に向けて学校から連絡がありました。新年度の教科書を配布するので取りに来るようにとのことです。私は早速大きな袋を持って学校へ向かい、マスクの装着と手洗い、それに「ソーシャルディスタンス」を徹底した中で受け取ってきました。結構な量と重みです。

義母が工夫して縫ってくれた洗えるマスク。ガーゼ素材で、鼻から顎までぴったりすっぽり覆えます!

家に戻って教科書の山を出すと、息子が飛んできました。ページを開いて食い入るように中身を確認し、いつもはノロノロと作業に取りかかるのに、どうしたことかものすごく積極的に一冊一冊名前を記入し始めるではありませんか。名前を書くごとに嬉しさがこみ上げてくるでしょう。みるみる顔が輝いてくるのが見て取れます。先生の顔を思い浮かべたり、授業をイメージしてみたり、新しいクラス編成に喜んでみたり、文句を言ってみたり。だいぶ盛り上がっていましたよ。教科書が休校中のささやかなイベントとなるなんて。今まで当たり前のように受け取っていた教科書に、こんなふうに子どもが元気づけられるなんて。教科書のありがたみを改めて感じたところでした。

せっかく教科書が手元に来たというのに、公立の小学校はまだオンライン授業の兆しもありません。授業の遅れはどうなってしまうのでしょう。先生方も間違いなく大変です。休校が長期化するかもしれない不安の中、子どもの教育環境に大きなしわ寄せが来ないように願うばかりです。

子どもだけではなく、こういう事態になると社会的弱者にしわ寄せが来やすい。医療現場ではそんな状況に迫られつつあると聞きます。人工呼吸器が足りず、医療崩壊寸前にある中で、あってはならない「命の選別」に直面しなければならない恐れもあるでしょう。若い人命を救うために高齢者が犠牲にならないといけないなんて、そんなことは想像すらしたくありません。命に軽重はない。社会的な弱者は人々の心に、優しさや、生きる知恵と希望を与えてくれる大切な存在。そんな風に私は思っています。

そういうわけで今回は高齢者からの学びを描いた作品をピックアップしてみました。

『だいじょうぶ、だいじょうぶ』(いとうひろし:作・絵/講談社)は、気の小さい「ぼく」とおおらかな「おじいちゃん」が一緒に歩く、素朴なお散歩のお話です。

道端の小さな花や虫、近所のお友達やすれ違った車などを通して「ぼく」は色々な発見をしてゆきます。怖いと思うことや不安に思うことがあると「おじいちゃん」はいつも支えてくれます。おまじないのように「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言って。子どもに安心と勇気を与え、背中を押してくれるような作品です。私も、何があっても大丈夫と、デンと構えてニコニコしているお母さんになりたいとつくづく思いました。ちなみに、お話会には大型版をお勧めします。

『おじいちゃんのところ』(H.V.グリフィス:文、J・スティーブンソン/童話館出版)もしかり。

おじいちゃんのところに、孫のジャネッタがお母さんに連れられてきます。楽しいところかと思いきや、見渡す限り古ぼけた家、荒れた庭、わけのわからない生き物たち。とても好きにはなれません。ところが、星を眺め、川へ行き、魚を釣ったりしながら、おじいちゃんの不思議な話を聞くうちに、ジャネットの心に変化が出てきます。素敵なおじいちゃんとの交流が羨ましくなる一冊です。(7歳ぐらいから)

中学年以上には、『ペニーの日記、読んじゃダメ』(ロビン・クライン:著、アン・ジェイムズ:イラスト/偕成社)

私も惚れ込んでしまった作品です。年寄りなんて大嫌いと言っていた、口の悪いお転婆娘のペニー。ひょんなことから老人ホームで暮す個性的なベタニーさんと知り合います。最初はこのおばあさんに悪態をついていたペニーですが、ベタニーさんとの交流が深まるにつれて、色々なことに気付き仲良くなってゆきます。そのやりとりは、ややブラックなユーモアに溢れていながら心温まるもので、読んでいて本当に楽しいものです。中のイラストやレイアウトも素敵。

自分だけでなく、他の人も辛くならないように、今できることはステイホーム。薬味のネギがなければなしでよし。お味噌を切らしていたらお澄ましでよし。もうちょこちょこと買い物にも出かけません。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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