連載:絵本とボクと、ときどきパパ このごろのささやかなあれこれと、これからのいろいろを考える絵本
この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学5年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。
休校が、5月6日から31日にまた延長しました。
そうなるだろうと心構えはしていましたが、やはり不安や息苦しさは募ってきますね。
それでもヨーロッパやアジア諸国で、少しずつ経済活動が再開され、緩和が始まったというニュースを聞くと、収束にはまだ日本は遠くても希望を感じます。そして、もうひと頑張りしよう思うわけです。
最近では、行動範囲が狭まったからか、以前は気にも留めなかったささやかな事柄に心が和んだり、楽しみを感じるようになりました。
コンビニまでの近距離が、特別な外出のように思えたり、近所の花壇のチューリップにうっとりしたり。門前のてんとう虫がテケテケ這っている様子まで見入ってしまったり。
学校からの分散登校のお知らせが来たのも嬉しいことでしたし、友人たちからの何気ない連絡も、いつも以上にありがたく感じます。友人たちは、子どもと一緒にお料理したり、ベランダでランチをしてみたり、工作やマラソン、あれやこれや。いつもの生活だったらできなかったことをやってるという話は、良い気分転換になりました。
また、普段の学校生活に窮屈さやストレスを感じていた子たちは、この休校が息抜きになっているという話も中にはあり、マイナスなことばかりではなさそうで良かったです。
ちなみに我が家は、今までだったら絶対にしなかった「親子かくれんぼ」をすることになりました。これが想像以上に面白かった! 高学年相手だと、なかなか手強いものですね。どう隠れるか、どうカモフラージュするかのアイディアがどんどん出てきて、大人も負けてはいられません。スリルも満点でしたよ。
オランダで暮らす妹も、イタリアやフランスほどではないにせよ外出制限はあるそうで、在宅勤務生活にシフトしました。3才の甥っ子の保育園も休園。でも家族でなんだか楽しそうです。今日はシュークリームを作っただの、庭先でバーベキューをしただの、ペンキ塗りをしただの。在宅とはいえ異国の雰囲気が漂う写真が毎日のように送られてくるので、実際には行けないけれど、おかげさまで私は旅気分を味わえてます。
休園中の甥っ子はというと、家で過ごすようになってからというもの「急に成長した」そうなのです。お絵かきや積み木が驚くほど上手くなってアルファベットもひとりでに書けるようになったとか。スカイプで話す日本語も流暢になってます。妹は、社会性は別として、園に行かない方が子どもの能力は伸びるかもと、冗談交じりに言っていました。確かにこういう時期、伸びる子もいると思います。でも、それはその子自身と家庭環境にもよるでしょう。小学生にもなれば、そうそう簡単に一人で学んではくれないものです。
甥っ子は、もうすぐ4歳。オランダでは4歳になったら小学校に入学です。そして日本は「9月入学」? いいかもしれませんが、後で考えたい。親にも子どもにも負担がかかっている今、さらに心配の種が増えるとの声が耳に入ります。それよりも、オンライン授業に向けて、公立の学習環境の充実を最優先して欲しいところです。
今後、感染の「第2波」や「第3波」が来るかもしれません。そうなれば断続的な休校も考えられます。それでも、スムーズに学びが継続できるようであって欲しい。それに、そのほかの感染症による学級閉鎖時にも有効でしょうし、不登校や入院中の子どもたちも、授業に参加しやすくなるでしょう。メリットがたくさんな気がしますが。
いずれにしても未曾有のこと。これからの生活は今までと同じではなさそうです。色々なことを考えて工夫していかないと。そのための新しいアイディアは、もしかしたら、ステイホームで見える、身近なささやかな事柄から得られるかもしれませんね。
というわけで、今回は「考えよう」のテーマで3冊!
『ぼくはあるいた、まっすぐまっすぐ』(マーガレット・ワイズ・ブラウン、坪井郁美:ぶん/ペンギン社)は、小さな男の子が、たった一人でおばあちゃんに会いに行く冒険物語です。
おばあちゃんの家へ「まっすぐ、まっすぐ」と唱えながら、恐る恐る進む道には初めての出会いがいっぱい。これはなんだろう? こういうときはどうしよう?小さいながらも考えたり、工夫したりして、小さな困難を乗り越えて行きます。まさに小さい子向けの「哲学への道」とも言えそうです。林明子さんの絵も素敵です。
『人生って、なに?』(朝日出版)。
これは全部で10冊ある子ども哲学シリーズの一冊で、たくさんの「なぜ?」が詰まった作品です。私たち大人でさえ、日々、なぜだろうと思うことがたくさんあります。でも、多くは、言葉にならないまま、もやもやと心に残っている。子どもならなおさらだと思います。この作品は、そうした疑問をやさしい言葉に置き換えて、自分で考えられるように導いてくれています。一つの「なぜ?」が新たな「なぜ?」を生む。そうすると考えはどんどん広がり深まってゆきます。
目的は正しい答えを出すことではない。だからこそものすごく楽しめる本です。私は、親子で一緒に語り合いながら読もうとこの本を置いておいたら、「何これ!面白い!」と言って、息子はあれよと言う間に読み終えてしまいました。シリーズの中には、他にも『きもちってなに?』『しあわせってなに?』など。(4歳から、小・中学生以上にも)
『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(くさばよしみ:編、中川学:絵/汐文社)。
「貧乏とは、無限に欲があること」というホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領のスピーチは、2012年リオディジャネイロで開かれた環境問題を議論する国際会議で、拍手喝采を浴びました。その内容を簡約した絵本です。社会の発展とは? 幸福とは? ムヒカ前大統領の思いをなぞりながら、今こそ子どもたちと一緒に、どう私たちの生活を見直すべきか考えたい。きっと、希望へのヒントを得られると思います。(小学校中学年から)