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休校中プラスになったことと、アフリカンアメリカンの物語
2020.06.15 by Anne Anne

連載:絵本とボクと、ときどきパパ 休校中プラスになったことと、アフリカンアメリカンの物語

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学5年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


家の側の紫陽花が咲きました。梅雨を待ちわびるように、真っ青な大輪をもたげています。3月はこの辺りに沈丁花の香りが漂っていたっけ。そんなことを思い出すと、改めて休校の長さを感じます。息子の学校もようやく本格的な分散登校にシフトしました。

お休みが長かったためか、初の登校日は家を出るのが億劫な様子でしたが、いざ学校から戻ってくると元気はつらつ。エネルギーをチャージしてくるのでしょうね。ああ、学校ってありがたい! 元の生活リズムにもすぐに慣れるでしょう。

息子の地域では、今月の分散登校期間も含めると4ヶ月近く休校だったということになります。その間、私は学校からの大量の手紙と課題にまみれて、解読するのも、整理するのも、子どもにやらせるのも、スムーズにいかず常に手探り。慣れない状況に混乱した時もありました。大変だったことを語れば尽きないのですが、子供が健やかに生活できるよう、日々メリットも見つけて自分を奮い立たせてきた気がします。視点を変えてみると、息子にとってプラスになったと思うことも、案外あるものです。

例えば、うちの猫と息子が、今まで以上に仲良くなったこと。触れ合う時間がたっぷりあったので、息子は猫にいろんなことを話して聞かせていました。それで心を開いたのか、猫の方も今まではご飯の時だけ愛想よく寄ってきて、あとは素っ気なかったのが、この頃はだいぶ「人付き合い」が良くなった気がします。今では息子が勉強している時や、ソファーで和んでいる時など、ビッタリ寄り添って丸まるので可愛さ倍増でしょう。息子は猫のお世話も積極的にするようになりました。

それから例えば、家族でボードゲームをたくさんできたこと。一番多かったのは『カタン』という、陣取りゲームのようなものです。

これが大人にとっても面白い。拡張版購入も検討中です。息子は遊びながら、自分は戦略を考えたり交渉を粘ったりするのが好きなのかも知れないと気付いて、それも良かったと思います。

家の前で続けたバトミントンも自然と上達しましたし、洗濯物も文句言わずに畳むようにもなりました。それに大人の新聞にも時々目を通すようにもなったのも成長です。

つい先日も、中腰のまま身じろぎせずに新聞を見ている姿がありました。何の記事に関心を持ったのだろうとそっと近づいてみると、例の事件の記事でした。米国ミネソタ州で、一人の黒人男性が白人警官に押さえつけられて死亡したという。読み終えると、ふと私の方を見て「ねえ、なんで白人は黒人に悪さばかりするの?」と聞いてきました。

私は考え込んでしまいました。一言で答えられるようなものではありません。それに正しく説明できる自信もありません。でもまず、すべての白人がそうではないと前置きして、それからこの問題は、すごく歴史が長く根が深いと伝えました。植民地時代にアフリカから連れてこられた奴隷のこと、南北戦争、リンカーン、キング牧師…。でも、質問の答えとして不十分です。やはり知らないことが多すぎるので、図書館に頼ることにしました。

緊急事態宣言が解除されて、予約と受け取りが可能になったので早速!

そして、ごっそりとアフリカンアメリカンに関する絵本を持ち帰って親子で読みふけりました。息子にも少し問題の背景が見えてきたかな。

素晴らしい作品が沢山ありましたが、今回はその一部をご紹介します。絵本というと、小さい子向けというイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはないので、ぜひ大きい子にも。

『むこうがわのあのこ』(ジャックリーン・ウッドソン:文、E.B.ルイス:絵/光村教育図書)

柵の向こう側からあの子がこっちを見てる。気になるけれど、向こう側へは行くのを禁止されている。そんな女の子の呟きを描いたお話です。柵のこちら側と向こう側の子どもたちがお互いに歩み寄っていく姿がとても眩しく、まるでそこにいるかのように生き生きと描かれています。「こんな ふるい さく、そのうち だれかがきて とりこわすよね」という一言が印象的。さらりとしたタッチなのに強く心を揺さぶる作品です。絶版になってしまったようなので、図書館で借りるしかないのですが、是非とも再版して欲しいものです。

『ヘンリー・ブラウンの誕生日』(エレン・レヴァイン:作、カディール・ネルソン:絵/すずき出版)

奴隷として生きるということは、具体的にどういうことなのかがとてもよく分かる絵本です。本人の願いや思いはないも同然で、主人の思惑のまま売り買いさせられ、生まれた証の「誕生日」もない。この作品は「地下鉄道」と呼ばれる組織の助けを借りて、自由な北部へ逃亡したヘンリー・ブラウンという有名な奴隷の実話に基づいたものです。ヘンリーのひと時の幸せ、耐え難い苦しみなど、迫力のある絵で描かれ、当時が生々しく伝わってきます。でも重たすぎない。どこか希望のある雰囲気が漂い、救われます。コールデコット賞オナー賞受賞。

『自由への道 奴隷解放に命をかけた黒人女性 ハリエット・ダブマンの物語』(池田まき子:作/学研プラス)

自由を夢見て北部に逃亡したハリエット・ダブマン。その後、自らの経験を生かして他の奴隷たちを解放に導くため、「地下鉄道」の一員となります。危険を顧みずに行動した、勇気ある女性の物語。アフリカンアメリカンの過去を知る、入門書としても手に取りやすい。読んでいると、非情なまでの過酷な奴隷生活を知ることになりますが、一方で、この小柄な女性の強いエネルギーにも圧倒されます。ちなみに、ハリエット・ダブマンは、アメリカで紙幣にとりあげたい女性の偉人1位だそうです。小学4年生ぐらいから。(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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