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Column 絵本とボクと、ときどきパパ

フェンス越しの立ち話と家庭菜園

2020.06.26

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学5年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


妹の住むオランダは、家族と周りの環境をとても大切にする文化だと言います。近所の人たちの交流も多く、道端での立ち話はもちろん、家に招き合うのも習慣なのだそう。なので、お互いどんな生活をしているのかよく知っていて、会うとすぐに立ち話。話題が尽きず、楽しいようです。

立ち話というと、玄関先や道端をイメージしますが、フェンス越しでもするというのが実にオランダ的だと妹は言います。

農業国ならではなのか、少なくとも地方の町暮らしでは、ご近所さんとは、どこの家にもある庭を隔てたお隣どうし。双方で相談しあって決めた「お気に入り」のフェンスで仕切られているそうです。タイミングよくお互いが庭に出ていれば、そこですぐさま挨拶。フェンス越しにひょいと顔を出して「やあ、どう?」と会話が始まるのだそうです。

コロナ禍で自粛生活がスタートしてからは、庭にいることが多くなり、さらにフェンス越しの会話も増えたとか。もちろん社会的距離は保ちつつ。

妹が今まで以上に庭にいることが多くなった理由は、家庭菜園です。

イチゴ、キュウリ、トマトなど。結構ワイルドに植えています。

家庭菜園なんて私にしてみれば、とても無理。息子が学校から持って帰ったトマトの苗でさえ、あっという間に腐らせてしまったぐらいですから。でもオランダは、さすが農業国。野菜作りはごく身近なことで、人々にとってハードルの高い作業では全くないようです。この頃は、実に多くに人が自給自足を意識し始めて、自分でなんでも作るという風潮になったとか。

トマト豊作。

妹一家もしかりで、この期間中に親子で庭を耕し、トマトやレタスやキュウリなど、以前よりも種類を増やして野菜作りに精を出すようになりました。外に出向いて買うのではなく、作る。自分たちでできることは自分たちでやる。これがコロナ禍から学んだことだとか。

瓶詰めトマトソース。保存食も臆せず作ってるようです。

つい先日も、妹が庭に出ていると、いつものようにお隣さんがフェンス越しに挨拶してきたそうです。

「元気?」

「元気よ。なんでも自分たちで作ろうと思って、いろんな野菜を育て始めたの」

「そうかい」

「おたくのお庭はいつも綺麗ね。うちはワイルドでしょ? でもそこが気に入っているの」

「ははは!」

そう笑っただけのお隣さんは、どことなく妹の庭の好みに共感できない様子。

でも気にせず妹は続けます。

「うちのパートナーなんか、庭を全部菜園にするって、お花まで抜こうとしたのよ。ひどいでしょ? お庭には綺麗なお花もあるべきだと思わない?」

「おお、そりゃそうだ! お庭は第一に美しくなくっちゃ!」

そこで妹は気づいたと言います。どうやらオランダでは、庭と畑は別物なんだと。家の中と周りの生活環境は、美しくしておくのが「常識」。人の目に触れるから、綺麗にしておくのがみんなのため。そして、野菜作りは、庭とは別の地域の貸し農園で本格的に栽培する。割とそうみたいよ、と。

そんな話を聞いて、ますますオランダ暮らしに憧れる、息子と私です。こういう所なので、オランダには野菜作りの絵本がたくさんあるんだとか。日本語に訳されているものもあります。

『ソフィーのやさいばたけ』(ゲルダ・ミューラー作/BL出版)

夏休み、田舎のおじいちゃんの家にソフィーがやってきます。待っていたのはソフィーのために用意された畑でした。「好きなものを植えていいよ」とおじいちゃんに言われ、大喜び。早速野菜作りに取りかかります。その後もおじいちゃんの家を幾度も訪れ、実、茎、花、根、とそれぞれ食べる部分が違う野菜を1年を通して育ててゆきます。美味しいレシピも散りばめられた、楽しい大型科学絵本。周囲の人たちの助けを借りたり、四季の移ろいを大切にしたり、オランダらしさ満載で、読んだ先から野菜作りがしたくなるでしょう。ちなみにこの作品では、ベランダでの栽培も紹介されています。日本の街暮らしでも真似できそう。4、5歳から。ぜひ、小学生にも!

大きなトマトが成るころには、日本の作品『トマトさん』(田中清代:さく/福音館書店)も。

以前に、保育園の先生が読んでいるのを見かけましたが、丸々と熟した大きなトマトに子供達は釘付け。それがとても印象的だったのでその後何度も借りました。うだるような暑い夏の日。トマトさんは他のミニトマトさんたちのように、小川に飛び込んで体を冷やしたい。でも大きすぎてとても動けません。そこに虫や動物たちがやってきて…。夏の暑さに冷えたトマト。季節感たっぷりのユニークで迫力のある作品です。3歳から。

『やさいのおなか』(きうちかつ:さく・え/福音館書店)

この作品は私もお話し会の導入によく使いますが、子どもたちはすぐに食らいついてくれるので読みがいがあります。野菜の断面をモノクロで見せて、これなんだ? と当てさせます。ページをめくると。「ああ、レンコンか!」、「ピーマンか!」と答えが。サツマイモやキュウリは、なかなか難しいかな。お家の台所でも、ぜひ野菜を切って断面を見てみてください。いろんな表情があって、面白いと思います。(2歳から、大きい子にも)

夏に向けて、今年こそは息子とベランダ菜園してみようかな。 (Anne)

Anne

Anne (あんぬ)モデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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