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いろいろなマスクと『ウポポイ』オープン
2020.07.15 by Anne Anne

連載:絵本とボクと、ときどきパパ いろいろなマスクと『ウポポイ』オープン

この連載は……
モデルのアンヌ(Anne)さんによる絵本紹介エッセイ。小学5年生の男の子ママでもあるアンヌさんは、出産をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまでは息子さんだけでなく地域の読み聞かせ活動にも参加するほどの絵本好き。息子さんとの日々も綴ります。


「マスク」

半年以上前までは、花粉症やインフルエンザの時期に意識する、私にとっては絆創膏やガーゼと同じような医薬部外品のようなものでした。でも、もうこの頃は、毎日取り替えるハンカチや下着のような必須アイテムです。我が家では外出時忘れないように、玄関にホルダーを取り付けて、各自その日に付けるマスクをぶら下げています。

マスクの存在が生活の中で幅をとるようになると、今度はやたらと他人のものが気になるようになりました。白い不織布やウレタン製のもの以外にも、布製のものも目に留まります。手ぬぐいをうまく縫い合わせた温かみのあるものを見かけると、羨ましくなって、私の創作意欲が掻き立てられます。そして、しまいこんでいた手ぬぐいを引っ張り出し、どれにしようか選んでみました。でもその後の作業は義母任せ。「おかあさん、これ、マスクにできますか?」と持っていく図々しい嫁なんです。

他にも海外のニュースで見かける、人々の鮮やかな彩りのマスクにも目を奪われました。アフリカンプリントを切り取ったものや、ショッキングピンクとエメラルドグリーンの生地の縫い合わせたものなど、実に個性豊かです。感染拡大の不安を抱えながらも、自然におしゃれなマスクを拵えているなんて。私も色とりどりの布で顔を覆いたくなりました。

手ぬぐいで作ってもらったものと、買い集めたもの。海外の人に習って色鮮やかなものが欲しくて。

そんな中、日本の大臣たちの布マスクも話題になっていましたね。顔半分を包むような大きなもの。かっちりとしたワイシャツのようなもの。昔ながらの木綿のものなど、それぞれ。中でも、私があっと思ったのは、白い大きめの布の脇に、控えめな灰色で幾何学模様のような印が入ったものでした。

なんだろうと思ったら、昔から伝わるアイヌ模様だそうです。魔除けの意味が込められているとのこと。「登別アシリの会」という刺繍サークルが作られたもののようでした。アイヌの文化には「パヨカカムイ」という疫病を広める神の言い伝えがあるのだそうです。コロナ禍に即このような刺繍をマスクに施されたのも、こうしたお話が語り継がれていたからではなかろうかと、と思いました。

これを機に日本の北に興味を持ち出していたら、ちょうど今月12日に『民族共生象徴空間/ウポポイ』がオープンしました。

アイヌ文化の復興と発展の拠点とした文化施設で、北海道白老町の広大な敷地には、公園やフードコート、工房やショップが整備されていて、もちろん博物館もあります。HPを見る限り、子どもと一緒に訪れたら、きっと楽しいだろうなと思うようなところのようです。

広い自然と共存してきたアイヌの暮らしとは、一度も自ら戦いを仕掛けたことのない人々の精神とは、一体どんなものなのだろう。あの大胆な幾何学模様の刺繍も間近で見てみたい。感染拡大の心配が縮小したら、すぐにでも行きたいところです。

https://ainu-upopoy.jp

というわけで、今回はアイヌのお話。

『ひまなこなべ』(萱野茂:文、どいかいや:絵/あすなろ書房)

アイヌに伝わる昔話を絵本にしたものです。

ある日、アイヌのところへ行こうと決めた熊の神は、わざと矢に打たれます。肉や毛皮をもたらしてくれたお礼に、人々は宴を開きます。魂となった熊の神は、その宴が楽しくてたまりません。とりわけ、若者の上手な踊りに惹かれてゆきます。もう一度見たい。そう思い続けるうちに…。自然の神々を大切にし感謝の心を忘れない、生きるための知恵が詰まった心温まる物語です。また、暮らしぶりがよくわかる繊細な絵が、何と言っても可愛いですし、このタイトルの意味がわかる予想外な展開も見どころです。

『パヨカカムイ/ユカラで村をすくったアイヌのはなし』(かやのしげる:文、いしくらきんじ:絵/小峰書店)

文字を持たないアイヌの人々には、長い長いお話を語って聞かせる「ユカラ」という習慣があるそうです。あるところに、狩は上手くないけれど、「ユカラ」がとても上手な村人がいました。その男の前に疫病を撒き散らす神「パヨカカムイ」が現れます。そこでこの疫神がしたこととは…。真面目で清らかな心を持っていればやがて救われるという教えは、時代や文化を超えて私たちにも響きます。『ひまなこなべ』にも通じる味わい深いお話です。

『ちびっこカムの冒険』(神沢利子:文、山田三郎:イラスト/理論社)

こちらは、時代も場所も特定されていませんが、アイヌ、イヌイット、カムチャツカなどが混ざったような世界観が広がる壮大なファンタジーです。少年カムはお母さんの病気を治すため、特別な薬草を探しに山へと向かいます。そこには誰もが恐れる危険が潜んでいますが、カムは物ともせず勇敢に立ち向かって行きます。後半はお父さんを探す物語。『くまのこウーフ』でも知られる神沢利子さんの流れるようなやさしい文章。すんなりと物語に入り込めると思います(低学年~中学年)。

(Anne)

Anne

Anneモデル・絵本ソムリエ

1971年東京生まれ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒。 国内外のショーやファッション誌を多数経験。映画、エッセイ、旅、ワインなどのコラム等の執筆も手がける。 出産を期に子供の発育と絵本の読み聞かせに関心を持ち、地域での読み聞かせボランティアとしても活動中。 6歳までに息子に読んで聞かせた本は793冊1202話。 現在所持する絵本も約1000冊という無類の絵本好き。

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