
連載:子どもとネットの上手な付き合い方 SNSの中で知らない人と出会う子どもたち(後編その2)
子どもたちの間に急速に広がるスマートフォン。SNSを通じて、簡単に知らない人ともつながることができてしまう世の中です。子どもを危険から守るためにどうすればいいのでしょうか。子どもとネットの関係に詳しい大笹いづみさんに聞きました。
第3回 SNSの中で知らない人と出会う子どもたち(後編その2)
スマホは道具!育てたいのは子どもたちの判断力。

第1回、第2回とSNSの危険性についてお伝えしてきました。スマホにこんな危険があるなら、スマホは持たせない、ネットは使わせない、と思うお母さんも多いかもしれません。でも、ちょっと考えてみてください。
インターネットは道具です。包丁や自転車と同じ。包丁や自転車が悪いわけではありません。人間がどう扱うかによって凶器にも人を幸せにするための道具にもなります。
親は、この素晴らしい道具を子どもたちが正しく使えるように伝えていくことが務めだと思います。
「そんなこと言っても、私もよくわからないから教えるなんて無理!」と思うかもしれませんね。そんなときは「教える」という考えをやめて「一緒に考える」というスタンスでいきましょう!
ある親子の話です。小学生の娘に初めてスマホを買いました。お子さんはお友達とLINEでやりとりしたくてたまりません。お母さんが考えたのは、最初におじいちゃんやおばあちゃんとLINEで家族グループをつくることでした。子どもが夜遅い時間に面白がってスタンプを押す様子をみて「おじいちゃん、おばあちゃんは、こんな時間に送ったらどう思うかな?」と問いかけたそうです。まさに自転車の補助輪のような役割だと感じました。
また、あるお母さんは、お子さんにスマホを与える時に自分も同じ機種を購入したそうです。そうすることで、お子さんと一緒に使い方を学ぶとおっしゃっていました。 こんなふうに、それぞれの家庭でできる工夫がありそうですね。
禁止しすぎるのも考えもの。
つい最近、大学生をもつお母さんからこんなことを聞きました。「ケータイやスマホは禁止していました。高校生まで持たせておらず、大学生で初めて持たせました。どうやら、周りに追い付いていけずネットを使うことを怖がっているようです」
子どもからしたら、今まで全く乗ったことがない自転車に、補助輪を使わず乗り、いきなり大通りを走るような感覚かもしれません。
子どもに持たせるのにどの年齢が一番いいですか?と聞かれることがよくあります。それは、家庭によって違います。お子さんと話し合いができ、一緒に学ぶ時間をつくることができるタイミングがいいと思います。時には転んだりすることもあるかもしれません。それはそれで学びのチャンスでもあります。補助輪をつけて後ろに手を添えながら、声をかけ、進む先をみながら一緒になって考えればいいのだと思います。
子どもは大人が思う以上に判断力を持っている。

上記のグラフは2019年度の小学校1年生から中学校3年生までの24,869人の子どもたち(2019年度)の調査データです(当社調べ)。
「インターネットで調べものをするときは、検索結果を2つ以上のサイトで確認するようにしている」という、ネットの情報の真偽における判断力に関する行動を聞いています。もちろん、低学年はインターネットを使ったことがない子どももいるので「経験がないからわからない」と回答している率が高くなります。しかし、学年が上がるにつれて、インターネットの利用は増えており、それにともなって「2つ以上のサイトで確認するようにしている」と回答している子どもも増えています。
子どもたちは、私たち大人が考えるより経験から学びとる力があります。でも、経験をさせないとそれは大人からの押し付けになりがちです。一緒に経験をできる場を大人が用意することができて、子どもに寄り添いながら、時には導き時には窘める、そんなふうにして少しずつ補助輪をはずしていけたらと思います。
インターネットのすばらしさを子どもたちに伝えたい。
私が初めてインターネットに出会ったのは、社会人となって何年か経った頃でした。ちょうど子どもが産まれて、それまでの「自身のことだけ考えていた自分」から「子どもが生きていくこれからの社会を考える自分」に変わりつつありました。
時間、空間、国や世代を超えてつながることができるインターネット。「このすばらしさを子どもたちに伝えたい!」そう思いました。子どもたちがこの可能性がある世界をどう生きていくのかのお手伝いができたらと思いました。それから自分の夢となり信念となり、起業するまでに至りました。その思いは今でも変わっていません。
この連載で、少しでも子どもが安心かつ主体的にネット社会を生きられるお手伝いができればと思います。
次回は、子どもにも広がっている「ネット依存」についてお話します。今、休校が続き家にいることが多くなり、ゲームはネットを長く使っているお子さんを心配している方もいると思います。「ネット依存」の現状と大人ができることを一緒に考えていきましょう。